フィンテックの普及から、新聞、ニュース、SNSなどでクラウドファンディングやソーシャルレンディングといった言葉を見かけることが多くなってきました。
ソーシャルレンディングを始めるのはいいけど、「株式投資のように税金とか確定申告とか小難しいことが関係してくるのかな?」とか、「確定申告って必要なのかな?」とか、「確定申告のやり方が分からない」という方もいらっしゃると思います。
そこで、この記事では、ソーシャルレンディングで関係する税金や確定申告の要否、確定申告の手続きについて解説します。
ソーシャルレンディングの税金
所得の区分
ソーシャルレンディングで得た配当収入は、税法上の所得の種類のうち、雑所得に当てはまります。
所得税とは、原則として個人の所得に対して課される税金です。
そして、個人の所得とは、収入と必要経費の差額です。ソーシャルレンディングでは基本的に必要経費は生じないと思いますが、一定の通信費を必要経費として計上することはできるでしょう。
そして、所得税法は所得を10種類の所得に区分しています。その所得の種類は、
①利子所得(預貯金の利子)
②配当所得(株式の配当金、投資信託の分配金)
③不動産所得(不動産の貸付から生じる所得)
④事業所得(事業で生じる所得)
⑤給与所得(雇用から生じる給料・賞与)
⑥譲渡所得(資産の譲渡から生じる所得)
⑦一時所得(法人からの贈与、保険の満期返戻金等)
⑧雑所得(どの所得区分にも該当しない所得)
⑨山林所得(立木の売却による所得)
⑩退職所得(退職によって受ける所得)に分けられています。
ソーシャルレンディングの配当収入は、一見、②の配当所得に該当するように思えますが、所得税法上は「雑所得」に該当すると解釈されています。
したがって、ソーシャルレンディングの配当による収入は雑所得に該当すると覚えておきましょう。
源泉所得税
また、ソーシャルレンディングでは、配当金の利益部分について源泉所得税を控除した金額が入金されます。
所得税は、1月1日から12月31日までの所得について、翌年3月15日までに、納税者が申告し、申告期限までに、納付するのが原則です。
しかし、この例外として源泉所得税は、企業等が給与等を支払う段階で一定の所得税を源泉徴収した上で、原則として翌月10日までに、納税義務者に代わって国に納付します。
この企業等のことを源泉徴収義務者といいますが、源泉徴収義務を怠った場合は、納税者であるソーシャルレンディングの投資家ではなく、源泉徴収義務者であるソーシャルレンディングの事業者に対して滞納処分が行われます。
そのため、ソーシャルレンディング事業者は、源泉徴収をした金額を配当として入金します。
したがって、ソーシャルレンディングの配当金の利益部分については、源泉徴収がなされるのです。
ソーシャルレンディングで確定申告が必要なケース
そもそも、確定申告はどのようなときに必要となるかについては、国税庁ホームページの「確定申告が必要な方」というページに記載されています。そこには、
①給与所得がある方
②公的年金等に係る雑所得のみの方
③退職所得がある方
④①から③以外の方とあります。ソーシャルレンディングを行う場合、給与の収入がありながらソーシャルレンディングを行うことが一般的だと思いますので、基本的には①の給与所得がある方の要件を見ていくことになります。
給与所得がある方のうち、どのような方に確定申告が必要かどうかは、2段階に分けて考えます。
まず、第1のステップは、所得税額から、配当控除額と年末調整の際に控除を受けた額を差し引いて所得税額に残額があるかどうかを求めます。
このとき、ソーシャルレンディングで配当を受けている方は、所得税額に残額があると思います。そこで、第2のステップに移りますが、多くの方が「給与を1か所から受けていて、かつ、その給与の全部が源泉徴収の対象となる場合において、各種の所得金額(給与所得、退職所得を除く)の合計額が20万円を超える」に該当するかどうかを検討することになります。
この国税庁の表現は小難しくて分かりづらいですが、端的に言うと、「ソーシャルレンディングで受けた配当収入額が20万円を超える」方は確定申告が必要になるということです。
したがって、ソーシャルレンディングで20万円を超える配当収入(利益)がある方は確定申告が必要となります。なお、ソーシャルレンディングによる収入に関わらず、給与による収入が2000万円を超える方も確定申告が必要になります。
ソーシャルレンディングで確定申告が不要なケース
ソーシャルレンディングで確定申告が不要になるのは、上記3で述べた条件に該当しない場合です。
つまり、ソーシャルレンディングでの利益が20万円以下の方は確定申告をする必要がないということになります。但し、上記でも述べましたが、給与による収入が2000万円を超える方は、ソーシャルレンディングでの利益が20万円以下でも確定申告は必要になるので、注意してください。
また、ソーシャルレンディングでの利益が20万円以下の方は原則として確定申告が不要ですが、所得が330万円以下の方の場合には、確定申告を行うことによって税金の還付を受けることができるため、確定申告を行う方が有利(儲かる)となることがあります。
配当金の源泉徴収率は約20%なので、還付金を確実に受けることにより、ソーシャルレンディングでの利益率もかなり良くなるのではないでしょうか。
筆者としては、所得額330万円以下の場合で、配当による収入が20万円以下なら確定申告は行った方がいいと思っています。
ソーシャルレンディングの確定申告手順
ここまで、ソーシャルレンディングによる確定申告の要否について説明してきましたが、確定申告ってめんどうじゃないの?と思う方が多いと思います。ここで、確定申告の手順を説明したいと思います。
まず、確定申告には、白色申告と青色申告がありますが、青色申告は事業所得、不動産所得、山林所得のいずれかの所得がある個人事業主でなければできません。
そのため、筆者が想定するこの記事を読んでいる方は、基本的には青色申告ができない方だと思いますので、白色申告に絞り説明します。
白色申告とは、単式簿記で行う確定申告の方法です。
記帳がシンプルであり、簿記に不慣れな方でも簡単にできます。確定申告を行うには、まず、ソーシャルレンディングで得た収入の履歴(通帳等)、ソーシャルレンディング事業者が発行する支払調書、給与の源泉徴収票、その他所得控除に必要なもの(社会保険料の控除証明書、生命保険料、地震保険料控除証明書、医療費の明細書等)を揃えます。
上記資料が揃ったら、確定申告書を入手して作成する作業に入ります。確定申告書の入手は必ずしも税務署に行って紙媒体の申告書を入手する必要はなく。Webサービスを通じて作成した申告書を印刷するだけで足ります。
確定申告のためのサービスとして様々な種類のクラウド会計サービスが多くあり、それらを利用すると非常に簡単に確定申告に必要な書類が作成できます。
また、国税庁のホームページの「所得税(確定申告書等作成コーナー)」というページを利用し、申告書を作成することもできます。
ソーシャルレンディングの配当による収入のみで確定申告を行う場合には、費用の発生するクラウド会計サービスで確定申告を行うメリットは小さいと思いますので、国税庁のサービスを利用されるのがいいのではないかと思います。
申告書作成は、日々の取引による収入及び必要経費の支出を入力していきます。
ここで、上記で集めた資料が必要となります。それぞれの資料の日付、金額、費目等を確認しながら丁寧に入力しましょう。申告書には、住所氏名、収入金額等、所得控除額等、税金の算出、住民税に関する事項等の記載が必要です。
全てを手作業で行おうとするとミスが生じかねないので、Webサービスを利用することをオススメします。
これらの必要事項を前記のクラウド会計サービスや国税庁の確定申告書等作成コーナーのサービスの指示に従って入力すれば、確定申告に必要な書類が作成されるので、そのデータを印刷し、必要か所に押印した上で、所管の税務署に提出(窓口提出、郵送、e-Taxの方法があります)してください。
このように案外簡単に確定申告は可能です。
まとめ
以上のように、ソーシャルレンディングで関係してくる税金や確定申告の要否、その手続きを紹介しました。
確定申告の要否の判断は結構簡単にでき、また、確定申告自体もそんなに難しいものではないと感じていただけたでしょうか?
普段会社で財務に関わらない方だとハードルは高く感じるとは思いますが、やってみれば案外簡単にできるものなので、確定申告に億劫にならず、ソーシャルレンディングで配当金をいっぱい稼いでください。