ソーシャルレンディング失敗事例から考える教訓

2019.04.19 [金]

ソーシャルレンディング失敗事例から考える教訓

日本においてもフィンテックが普及し、新聞やニュース、SNSなどでクラウドファンディングやソーシャルレンディングという言葉を目にする機会が増えてきました。

ソーシャルレンディングという言葉は聞いたことあるけど、クラウドファンディングとの違いうや、どんなリスクがあるか分からないという人もまだまだ多いのではないでしょうか。

この記事では、ソーシャルレンディングの基本的特徴とそのリスク及びリスク対策などを解説します。

 

ソーシャルレンディングの特徴

ソーシャルレンディングとは、貸付型クラウドファンディングのことであり、お金を貸したい人(投資家)とお金を借りたい人(事業者又は個人)をマッチングするサービスです。

つまり、金銭消費貸借契約(融資契約)のマッチングサービスのようなものとなります。但し、通常の金銭消費貸借契約と異なり、お金を貸したい人(投資家)とお金を借りたい人との間には、ローンファンドと呼ばれるお金の貸付を行う基金が存在します。

そのため、投資家は直接、お金を借りたい人に融資をするのではなく、ローンファンドが行うお金を借りたい人への融資に対して投資を行うことになります。

そして、投資家はローンファンドから一定の期間(1か月と設定しているファンドが多い)ごとに配当を受けます。この配当の原資は、ファンドが貸し付けた事業者又は個人からの返済資金となります。

そのため、返済が滞ると配当が受けられなくなります。この点に、ソーシャルレンディングの特徴があるといえるでしょう。

 

ソーシャルレンディングの失敗例

(1)単一のファンドや事業者に集中投資する例

ソーシャルレンディングを行う際に、1社に口座を開設して、投資する方法により始める方法が一般的ですが、その投資先を1つのファンドに限定することは、仮にそのファンドの条件が非常にいいものであったとしても危険なものとなります。

なぜなら、絶対に失敗しない投資はないため、どんなに良い条件であったとしても投資した元本の不回収リスクは内在するからです。

例えば、非常に条件の良いファンドに余剰資金の全額を投資し、その後、融資先が取引上の事故等に遭い、返済ができないとなった場合には、あなたの投資した元本は返ってくることはなく、余剰資金の全額を失い、その他の優良な投資の機会を逃すことになるからです。

また、ソーシャルレンディングのファンドは複数の同種ファンドが存在するため、別々のファンドに投資しているつもりでも、結局同種の融資先へ融資を行うファンドへの投資になっている場合もあり、リスクを分散できていない場合があります。

(2)投資した資金を現金化できない例

ソーシャルレンディングは、一定の期間ごとに配当があり、配当を受ける毎に自分の開設した口座の残高が増えていきます。

もっとも、この口座残高は、貸付期間の満期にならなければ出金できません。

そのため、株式や投資信託のように、自分が現金化したいときに自由に現金化できるものでないため、全ての余剰資金をソーシャルレンディングに投資していると、急に現金が必要となる不測の事態に、引出せない!ということが起こります。

(3)高い利回りに飛びつき借主の信用性を調査しない例

ソーシャルレンディングは、株式やFXへの投資のように、日々のマーケットの動向に左右されない点でリスクの低い投資であるといえます。

しかし、いくらリスクが低いといっても、全くないわけではなく、借主の返済遅延、破産等によって返済が行われない結果として、ファンドから投資家への配当が行われないということが起こります。また、ソーシャルレンディングでは、投資家はファンドへの投資を通してお金を借りたい人に投資を行うわけですが、投資家は直接お金を借りたい人と面談しその借主が信用できるかどうかを見極めるのではなく、基本的にファンドからの情報で融資先の情報を得ることになります。

そのため、ファンドの情報だけで融資先の信用性を判断するとファンドの情報に誤りがあった場合(故意に誤情報を流すわけはないので、情報の提供元が間違った情報を提供していたり、また、情報分析が上手でなかったりする場合を言います)に、借主のデフォルトリスクがどの程度あるのかを適切に判断できない結果、借主の不弁済リスクが顕在化するということが起こり得ます。

(4)担保を安易に信用する例

ソーシャルレンディングの中には、不動産に抵当権を設定したり、融資先の第三者に対する貸付債権に質権を設定したり、保証人による保証をつけるなどの担保を確保している場合があります。

この場合には、一般的に、無担保の融資に比べ債権不回収リスクが小さくなります。しかし、担保があるからといって、必ず融資金額を回収できるわけではありません。

なぜなら、抵当権を設定した不動産が不動産不況により、その価値が下がり被担保債権額の全額が回収できないおそれ、大地震により担保不動産が滅失してしまうおそれ、融資先の第三者に対する貸付債権のデフォルト又は破産のおそれ、保証人の財政悪化のおそれなど様々なリスクが潜在しているからです。

したがって、担保があるからといって安易に信用し、大きな額を投資することは不回収のリスクが顕在化するということが起こり得ます。

(5)出金手数料が高額になる例

ソーシャルレンディングは、事業者によってその出金手数料が異なります。

出金手数料無料のものから、月一回の出金は無料、指定銀行だと216円から高額なものになると指定銀行と異なる銀行で756円の出金手数料がかかります。

例えば、1万円の出金を行うのに、手数料が756円だと1割近い手数料がかかることになり、ソーシャルレンディングによる運用利益がほとんどなくなってしまうようなことも起こり得ます。

 

ソーシャルレンディングで失敗しないためのポイント

これまでソーシャルレンディングの失敗例を挙げましたが、この失敗例のリスクを回避することがソーシャルレンディングで失敗しないためのポイントということになります。

以下で、各リスクの対策をご紹介したいと思います。

(1)単一のファンドや事業者に集中投資するリスクへの対策

これは、もちろん単一のファンドや事業者及び個人に集中して投資しないことです。

自身の余剰資金からソーシャルレンディングに投資する割合を決めた上で、さらに、その金額を一定の割合等で複数のファンドや事業者及び個人に投資することが大切となります。

このときに、ファンドの内容や、ファンドがどの事業者又は個人に投資しているかという点に注意して確認することが肝要です。ファンドが一見異なるからといって必ずしも融資先が異なるとは限りません。

投資家への配当はあくまで、融資先からの返済金が原資となります。そのため、最終的な融資先の確認は必ず行いましょう。

また、ソーシャルレンディングには、ロールオーバーというものがあります。これは、募集期間中に投資家の資金が借手の借入希望額を超えるような場合には、同種のファンドに投資され、貸付実行期間等の条件が異なるファンドへの出資に充てられる可能性があるものです。

そのため、ロールオーバーにならないようファンドの募集期間に注意することも大切です。

(2)現金化できないリスクへの対策

これについては、まず、預金等の現金化を行うことが容易な資金を残した上で投資することが挙げられます。

当然のことですが、あらゆる事故のリスクを未然に防ぐことはできません。そのときに現金がないために適切な治療を受けたり、大切な人を守ることができないというのでは、本末転倒です。ソーシャルレンディングへの投資は現金化可能な資産を残した上で行いましょう。

また、長期の貸付のファンドに多くの余剰資金を投資しないことも挙げられます。

さらに、上記(1)で述べた複数のファンドに投資することも有効な対策となります。それぞれの投資の満期が異なれば、その数だけ、満期が異なることになるため、投資時期と貸付期間のそれぞれのズレをうまく活用して現金化できる資金をある程度は確保できるように行うことがベターといえるでしょう。

(3)高い利回りに飛びつき借主の信用性を調査しないリスクへの対策

ファンドの条件の提示方法によっては、予定利回りが10%を超えるような案件もあるでしょう。但し、ここで気をつけていただきたいのが、ソーシャルレンディングは、株式やFXに比べてリスクの小さい投資であるということです。

投資の世界におけるリスクという用語は危険が小さいという意味ではなく、結果の不確実性(変動性)が小さいということです。

つまり、通常はハイリスクハイリターン、ローリスクローリターンなのです。これはソーシャルレンディングも同様なので、予定利率が他のファンドよりも大きいハイリターンな案件には、それなりにリスクが伴っていることを認識しましょう。

そして、ファンドの情報から、さらに自分で融資先の情報(事業者であれば、どれくらいの資金余力があるか、個人であれば、どのような属性の人たちで、融資に対する考え方や融資期間の返済を必ずまっとうするような人たちかどうか等)を調べることが肝要です。

(4)担保を安易に信用するリスクへの対策

担保の価値は上述したように下落する可能性があります。

もっとも、各担保を詳細に調べることは困難であるので(例えば、事業者のどの不動産に抵当権を設定しているかを調べることは非常に困難です)、ファンドの提示している担保についての条件が詳細なものをなるべく選ぶことが担保価値下落のリスクを回避する有効な手段といえるでしょう。

(5)出金手数料が高額になるリスクへの対策

出金手数料が高額になるリスクについては、各ソーシャルレンディング事業者が指定している銀行に口座を開設することや、固定の事業者を使用することが有効な対策となるでしょう。

 

まとめ

以上、ソーシャルレンディングの特徴と、失敗例、リスク対策をご紹介しましたが、ソーシャルレンディングはしっかりと特徴を理解し、どのようなリスクが考えられるかを考えた上で、採りうる対策を講じていれば、比較的ローリスクな投資商品であるといえるでしょう。

みなさんも、この記事に挙げたリスク以外にも様々なリスクを想像しながら的確な投資を行い、確実なリターンを得られるようソーシャルレンディングに投資してみてください。

この記事をシェア