皆さんは、ご自分が投資されているソーシャルレンディング投資の年間利回りが何%であるかご存知ですか?
ソーシャルレンディング投資で大事なのは、自分が投資している案件からどのくらいの利回りが得られているのかしっかりと把握して、データを分析することで、より良い案件に注力することです。
しかし、ソーシャルレンディングの利回り実績に関する計算は複雑になっているため、「計算方法がよく分からない…。」という方も少なくありません。
そのため、この記事では
「利回り実績が把握しにくい理由」
「利回り実績の計算方法」
「利回り実績の比較パターン」
「税引き前・税引き後」どちらで計算すべき?」
といった内容について、ご紹介します
ソーシャルレンディングは利回り実績が把握しにくい?
ソーシャルレンディングの利回り実績は、一般的な投資の利回りと比較すると把握しにくい特徴があります。
ソーシャルレンディングに限らず様々な種類の投資において、大まかな利回りを算出するための計算式はこちらになります。
「年間利益額÷年間投資金額×100=利回り」
単純な計算式ではありますが、「年間利益額」「年間投資金額」を把握していれば、「年間利回り」を算出することが出来ます。
「年間利益額」であれば、各事業者から毎年発行される年間取引報告書or支払調書を見ていただければ分かります。
万が一「貸し倒れ」で損失が出てしまった場合は、損失分は「利益額」から差し引く必要がありますが、そこまで難しいことではありません。
しかし問題は、「投資金額」について把握することが難しい。という点にあります。
把握しにくい理由は、ソーシャルレンディングの投資元本(投資金額)は毎月変動しやすいからです。
これから、なぜ「投資元本が変動すると利回り実績が把握しにくい」のかを説明していきます。
まず、前提として新規投資をする際や償還金(返済される投資元本)があった時に、「投資元本(投資金額)」は増えたり減ったりします
そのため、ある時点(特定の月末など)での投資元本(投資金額)を元に計算して、年間の利回りを算出すると、正しい利回りのデータを得ることが出来なくなるのです。
その結果、
・投資元本が多い月で計算すると、実際よりも少ない利回りが算出される
・投資元本が少ない月で計算すると、実際よりも多い利回りが算出される
などの問題が起こります。
また、「毎月変動しやすい投資元本(投資金額)」によって「年間投資金額」も把握しにくくなっているので、このあとお話しする「年間利回り」の算出が難しくなります。
ソーシャルレンディングの利回り実績の計算方法
ここでは、ソーシャルレンディングの利回り実績の計算方法をご紹介します。
「自分の利回り実績を把握したいけど、計算方法が分からない」という方は、ぜひ参考にしてください。
まず初めに、「毎月の投資元本(投資金額)」と「毎月の利益額」を算出します。
ちなみに、この時の「投資元本(投資金額)」には、現在投資中の金額を計上してください。
事業者の口座にある投資をする前の金額は計上しないため、気を付けてください。
算出していただいた「毎月の投資元本(投資金額)」と「毎月の利益額」を以下の式に当てはめて計算することでより正確な「利回り」を算出することが出来ます。
「年間利益額÷投資元本(投資金額)年間平均×100=利回り」
分かりやすくするために、架空のデータで計算してみましょう
投資元本(投資金額) (円) 利益額(円) | ||
1月 | 750,322 | 5,729 |
2月 | 833,295 | 5,422 |
3月 | 857,232 | 6,695 |
4月 | 946,295 | 7,933 |
5月 | 1,124,599 | 11,462 |
6月 | 1,447,207 | 12,684 |
7月 | 3,783,394 | 19,849 |
8月 | 4,211,258 | 27,822 |
9月 | 2,562,778 | 14,455 |
10月 | 3,447,212 | 21,987 |
11月 | 2,647,212 | 12,843 |
12月 | 2,893,615 | 16,004 |
・年間利益額=162,885円
・投資元本(投資金額)年間平均=2,125,368円
ということになるので、先ほど提示したこちらの計算式⇓に当てはめますと、
「年間利益額÷投資元本(投資金額)年間平均×100=利回り」
「162,885(円)÷2,125,368(円)×100(%)=7.66(%)」
ということで年間の利回りは「7.7%」になります。
もちろん年間の利回りにこだわる必要はなく、1か月ごとや四半期ごと、自分が投資している複数の事業者ごとなど、指定する範囲を好きなように変えていただければ、欲しいデータを算出することが出来ます。
利回り実績の比較パターン
利回り実績の比較パターンは大きく分けて「別の事業者との比較」「時間軸での比較」「自分以外の投資家との比較」「他の投資との比較」の4つがあります。
ここでは、4つの比較パターンを、目的も添えてご紹介します。
➀別の事業者との比較
利回り実績を把握することが出来れば、利回りの高い事業者と利回りの低い事業者を比較して「良い事業者」を選別することが出来るので、事業者を選ぶ参考にすることが出来ます。
➁時間軸での比較
同じ事業者において、「昨年は利回りが低い」「今年は利回りが高い」などの変化が見られることがあります。時間軸でのデータの推移を知ることが出来るので、今後も自分が投資している案件を継続していくか否かの指標になります。
また、自分が抱えているトータルの案件で、昨年と今年の利回りを比較したときに、利回り実績が上下していれば、現在の方針調整の参考にもすることが出来ます。
➂自分以外の投資家との比較
自分以外のソーシャルレンディング投資家との比較をすることで、他と比べて自分の利回り実績はどのレベルなのかを確認することが出来ます。
➃他の投資との比較
ソーシャルレンディング以外の投資(株、不動産)との比較をすることで、個別でどのくらいのパフォーマンスがあるのか確認することが出来ます。
ポートフォリオを考える上で重要になってくる情報です。
税引前計算、税引き後計算どちらで計算するべき?
ソーシャルレンディング投資で得た利益は雑所得扱いになるため、総合課税の枠で所得税が引かれます。
ソーシャルレンディング投資で得た利回りを、「税引き前計算すべきか?」「税引き後計算すべきか?」といった声はよく聞かれますが、これは「利回り実績の目的」によって変える必要があります。
ここからは、「税引き前計算すべきパターン」と「税引き後計算すべきパターン」についてなぜそうすべきなのかについて解説していきます。
・税引き前計算すべきパターン
もし、「自分以外の投資家との比較」や、「複数の事業者間での比較」、「時間軸での比較」が目的であるならば、「税引き前計算」をすることをおすすめします。
というのも、今回引かれる所得税の税率は、ソーシャルレンディング投資とは全く関係の無い「給与所得の金額」によって決まるものであり、結果的に投資とは関係の無い部分で「利回り実績」が変わってしまいます。
つまり、自分の給与所得が増え、所得税の税率が上がってしまうと、「利回り実績」に影響して下がってしまう。といったことが起こるのです。
もし、上記に上げたような目的で「利回り実績」算出したいのであれば、ソーシャルレンディング投資の実績とは関係の無い要素に影響されないようにしなければなりません。
よって「税引き前計算」をおすすめします。
・税引き後計算すべきパターン
もし、ソーシャルレンディング以外の投資(株、不動産)との比較が目的であるならば、「税引き後計算」をすることをおすすめします。
というのも、株や不動産といった別の種類の投資案件によって、かかる「税率」が違うからです。
株式投資の場合では「分離課税」が出来るのでソーシャルレンディングとはかかる税金の種類がちがいますし、不動産を所有している時は「固定資産税」「都市計画税」など、これまたソーシャルレンディングとはかかる税金がことなります。
つまり、投資案件によって引かれる税金が違うため、「税引き後計算」にした方が、最終的に「いくらの金額が手元に残るのか」という観点で比較することが出来るので、より現実的で正確な分析を行うことが出来ます。
また、ソーシャルレンディング事業者の多くは、分配金額の20%にあたる源泉徴収税を徴収しています。
ここで注意すべきなのは、税引き後の利益額や利回り実績等を計算する際は、ここで徴収される源泉徴収税額ではなく、確定申告の際に確定する実際の税額を引いて計算を行うべきです。
というのも、ここでいう源泉徴収税率の20%は正確な税率ではなく、仮の税率だからです。
実際に税率が決定されるのは確定申告の時なので、注意が必要になります。
また、実際の税率は「給与所得の金額」によって変わるため、源泉徴収されたされたあとの金額を元に計算を行ってしまうと、正確な利回りは算出出来ません。
まとめ
ソーシャルレンディング投資を行う人で、「自分の利回り実績を計算して、正確に把握している」というのは強みになります。
また、手間はかかりますが、利回り実績の比較や分析を行うことで、より安定したソーシャルレンディング投資を行う事も今後は重要になってきます。
ぜひ、ソーシャルレンディング実績利回りの計算方法を理解して、今後の投資に活かしましょう。