日本の公的年金制度は、原則として20歳から60歳までの全ての人が年金に加入し、毎月決まった保険料を支払っています。
本記事では、年金の基本的な知識や種類、受給条件などを詳しく解説していきます。
公的年金が必要な理由
まずは公的年制度の基本的な知識のおさらいと、公的年金が必要な理由について確認していきましょう。
公的年金の仕組み
日本の公的年金制度は、20歳〜60歳の現役時代が納めた保険料によって、高齢者世代などを支える社会保障です。
年金と聞くと受給資格を満たした65歳以上の人が受け取ることができる、老齢年金をイメージしがちですが、世帯の中で稼ぎ頭だった人が亡くなった時に家族が受け取る遺族年金や、障害を負った時に受給できる障害年金も含まれます。
公的年金制度は、日本以外でも多くの国に存在します。年金制度は「賦課方式」と「積立方式」の2つに分類できます。
賦課方式は、現役世代が納めたものを、今の高齢者の年金の財源に使い、世代間で支え合う仕組みです。
経済変動の影響を受けにくい点がメリットですが、人口減少により、少ない現役時代が大勢の高齢者を支える時代になると苦しくなるデメリットがあります。
日本ではこの賦課方式を選択していますので、少子高齢化による年金への懸念も上がっています。
一方で、積立方式では、将来年金を受給するために必要な財源を、現役世代が自分たちで積み立ていく仕組みです。
積立方式は、貯めたものを自分たちで使う仕組みなので、若い時にたくさん支払ったのに老後に少額しかもらえない、という事態が起こりません。
一方で、納めてから受給するまでにタイムラグがあるため、経済変動の影響を受けやすい点はデメリットです。
公的年金はなぜ必要なのか
高齢になり働けなくなった、また一家の働き手が亡くなってしまった、何らかの理由で障害をおってしまったなどで、収入が減り、生活が一変してしまうことがあります。
収入を得ることができなくなってしまったとき、周囲に助けてくれる人がいる人や、多額の貯金がある人ばかりではありません。生活が行き詰まってしまう人も出てしまいます。
こうした事態に陥ったときに、国民が安心して生活ができるように生まれたのが公的年金です。
日本では古くから、軍人向けに年金制度に近いものがありましたが、1961年に国民皆保険の体制が生まれました。その後、状況に合わせて改正を行い、2019年時点では、受給資格期間が老齢年金で10年、受給開始は65歳以上という形になっています。
国民年金と厚生年金の違い
公的年金は、ご存知の通り、国民年金と厚生年金の大きく2種類に分類することができます。
ここでは改めて、国民年金と厚生年金、それぞれの特徴と違いについて確認していきます。
国民年金
国民年金は、原則として20歳〜60歳の国民が全員加入する保険です。そのため、「基礎年金」とも呼ばれています。
国民年金保険料を納付する第一号被保険者には、自営業者や20歳以上の学生が該当します。給与天引きの厚生年金と異なり、保険料は口座引き落としや金融機関の窓口で自分で納めなくてはいけません。
また、国民年金の保険料は定額で、平成30年度の場合は月額16,340円です。将来の受給額は加入期間に応じて決まります。
厚生年金
厚生年金は、国民年金に上乗せされて給付される年金です。
よく”日本の公的年金は2階建て”だと言われますが、厚生年金が国民年金に上乗せされている形のために、2階建てと呼ばれているのです(企業年金を入れて3階建てと呼ぶこともあります)。
厚生年金に加入する第2号被保険者には、会社員や公務員が該当します。保険料はボーナスと標準報酬月額(毎年4月〜6月の給与をベースにしたもの)を基準に保険料が算出されます。
厚生年金の保険料の支払いは、事業主と被保険者が50%ずつとなり、国民年金部分と併せて給与天引きで納付します。
国民年金部分と同様に、厚生年金部分も加入期間や支払い総額で支給額が決定します。
国民年金と厚生年金の異なるポイント
国民年金と厚生年金の違いとして、以下の点が挙げられます。
・厚生年金は給与天引きが可能
・国民年金は保険料が定額だが、厚生年金は給与に応じた額
・国民年金は前納や一括払いが可能
・同じ期間納めたとすると、厚生年金のほうが受給額が多い
・厚生年金には44 年以上の長期加入者に特例がある
大きな違いの一つとして、保険料の違いが挙げられます。国民年金は定額であることに対し、厚生年金は給与額に応じた金額になります。
また、国民年金は給与天引きで納める事はできませんが、まとめて前納する事ができます。
6ヶ月、1年、2年分をまとめて前払いすることができ、まとめて一括で払うと、保険料の割引を受けることができます。
一方で、厚生年金の加入者は、国民年金に合わせて2階部分の厚生年金も納めている事になるため、老後の受給金額が、同期間に国民年金だけを納めた場合よりも多くなります。
さらに厚生年金にだけ44年の長期加入特例があります。これに該当する人は、簡単に言えば年間78万円〜117万円追加で年金がもらえる事になります。
公的年金の種類や受給条件
公的年金制度で受給ができる年金には、老齢年金、障害年金、遺族年金の3種類があります。
老齢年金
20歳から60歳までの間で、10年以上保険料を納めた人が、65歳になると老齢年金を受給できるようになります。
以前は25年以上保険料を納めていないと受給ができませんでしたが、2017年に改正され10年以上となりました。
しかし、気をつけなければならないのが、10年だけ保険料を納めていた場合、1年に受け取ることができる老齢年金の額は、約20万円弱と少額となってしまう点です。
この金額では生活することが厳しいですよね。
もし、過去に保険料を納めていない期間がある場合には、未払い分を遡って納めることもできますので、年金事務所に問い合わせをしてみましょう。
障害年金
障害年金は、働くことに影響が出るような病気やケガを負ってしまった場合に受給できる年金です。障害年金は、現役世代でも受け取ることができます。
障害年金を受給する際の条件は、1.障害認定基準を上回る障害状態であること、2.保険料を一定期間未納にしていないこと、そして3.障害認定日が到来していることの3点です。
障害認定基準を上回る障害状態であれば、就労していても障害年金を受け取ることが可能です。
また、老齢年金のように保険料を納めた期間はあまり問われません。
3つ目の障害認定日とは、初診から1年6か月経過をした日です。これらの要件を満たせば、障害年金を受給できるようになります。
障害年金にも、「障害基礎年金」 と「障害厚生年金」があります。初診日に第1号や第3号被保険者だった場合には、障害基礎年金、第2号被保険者だった場合には、障害基礎年金と障害厚生年金の両方の受給が可能です。
遺族年金
遺族年金は、年金の被保険者が亡くなった場合に、生計を共にしていた家族が受け取ることができる年金です。
遺族年金は亡くなった被保険者が25年以上年金に加入していた場合に、受給することができます。
遺族年金は、被保険者が国民年金に加入していた場合は遺族基礎年金、厚生年金の場合には、遺族厚生年金が支給されます。
遺族基礎年金の場合、子を持つ配偶者および子(18歳まで)に遺族年金が支給されます。子供がいない配偶者は受給することができません。
遺族厚生年金は、亡くなった人と生計を共にしていた配偶者、子(18歳まで)、孫、55歳以上の父母や祖父母に対して支給されます。
配偶者は、30歳未満の妻の場合は5年間の条件つき、夫の場合は55歳以上である事が受給の条件です。
確認したい場合は「ねんきん定期便」をチェック
これまでの自分の年金保険料の払い込み実績や、将来受給できる年金の見込額を知りたいときには、ねんきん定期便をチェックすると良いでしょう。
ねんきん定期便とは
ねんきん定期便とは、年金制度に加入している全ての人に届く通知書です。日本年金機構が管轄しており、毎年一度、誕生月に届きます。
50歳未満の人に届くねんきん定期便は、これまでの年金の支払い実績に応じた将来の受給見込額が記載されています。
一方で、年金の支払いが残り10年となった50歳以上の人に届くねんきん定期便には、満期の60歳まで保険料を支払った場合に受け取ることができる、想定年金額が記載されています。
ねんきん定期便の見方のポイント
ねんきん定期便が届いたら、年金の見込額や自分の年金加入期間を確認しましょう。
自分がいくら保険料を払っていて、将来にどれくらい受け取ることができるかを、1年に1度ねんきん定期便で確認する習慣をつけておけば、長い目で見て老後の資金計画を立てることができますね。
さらに、年金加入期間に誤りがないかもきちんとチェックしておきたいところです。
まとめ
現役世代から、年金の仕組みに関心を持ち、長い目で老後の資金計画を立てることをお勧めします。