老後の生活を考えると、「国民年金だけでは不安」と考えて個人年金への加入を検討している方もおられることでしょう。
確かに、国民年金を満額納付しても月々に受け取れる額は約65,000円で、夫婦合わせても月々13万円です。しかも、これはあくまで満額を収めた場合で、保険料を払っていない未納の期間があると、さらに受取れる額は少なくなります。
老後の生活のためにも、収入のあるうちに個人年金に入って、老後の生活をいくらかでも安定したものにできるといいですね。そんな個人年金に対する疑問に答えるために、以下のポイントに注目してお伝えしていきたいと思います。
個人年金の種類とそれぞれの特徴について
個人年金とはそもそも何なのでしょうか。
個人年金
保険料を積み立てておき一定の年齢になったら年金を受け取れる貯蓄型の保険のことです。
全額を受け取るためには、契約時に決めた年齢まで支払う必要があります。
個人年金の種類
各保険会社がいろいろな個人年金の商品を発売しています。その種類や特徴もさまざまです。個人年金の種類は大きく分けて以下の2つです。
- 定額年金
- 変額年金
最も多く利用されているのが、受給額が一定の定額年金です。
定額年金にも以下の二種類があります。
- 終身年金
- 確定年金
定額年金2種類の特徴を見ていきましょう。
終身年金
種類 | 定額年金 |
年金を受け取れる期間 | 生きている間(無期限) |
メリット | 生きている間は年金を受け取れる |
デメリット | 支払い保険料が高額になりやすい |
その他の特徴 | 加入者がなくなった後も、保証期間内であれば遺族が年金を受け取れる |
確定年金
種類 | 定額年金 |
年金を受け取れる期間 | 契約時に確定した一定期間年金 |
メリット | 被保険者の生死にかかわらず年金が受け取れる |
デメリット | 被保険者が長生きした場合は年金の受給が途中で終わってしまう |
その他の特徴 | 被保険者が死亡しても、期間内であれば遺族が年金を受け取れる |
次に変額年金について見ていきましょう。
変額年金
支払い保険料を保険会社が運用していきますが、運用結果によって受給できる年金額が変動します。
運用リスクがあるというデメリットがありますが、将来のインフレのリスクを備えた商品です。
その他の個人年金
上記以外の個人年金としては、以下のような個人年金があります。
外貨建て年金
外貨を利用した個人年金です。米ドルや豪ドル、ユーロなどの契約通貨を利用します。
為替が変動するとその分受給額も変化しますが、利率が高く利率が2~3%になることもあります。ただし、海外の為替情報などをこまめにチェックする必要がありますから、個人で管理する負担があります。老後に海外でのロングステイを計画している方におすすめの個人年金です。
個人年金のメリットとデメリット
個人年金を利用するさらには、あらかじめメリットとデメリットをしっかり理解しておく必要があります。
メリット1:預金に比べ確実に貯蓄できる
個人年金は預貯金でお金を積み立てるのに比べれば最終的に受け取れる金額は高くなります。
また、途中解約時の返戻率が低いこと、簡単におろしたり、解約できないこともあり、確実に老後のために蓄えができます。
メリット2:節税できる
個人年金は、生命保険料控除として一年間に支払った額に応じ所得税が軽減されます。
そのため、個人年金の支払額が一定条件を満たせば、控除を受けることができます。
実際に、個人年金に加入すると年間で6,800円~10,800円違ってきます。30年間の合計節税率は約20万円~30万円ですから、個人年金に入ることで節税ができるといえるのです。
デメリット1:途中解約の場合返戻率が低くなる
個人年金は途中解約すると損をするように設計されています。
例えばある個人年金を例にとって考えてみましょう、
加入年数 | 返戻率 |
1年 | 42.3% |
5年 | 83.6% |
10年 | 91.1% |
25年 | 99.5% |
26年 | 100.1% |
このように、短くとも26年加入し続けなければ、もともと支払った金額よりも、受取れる金額が少なくなってしまう可能性があります。
加入時には途中解約を想定せず、しっかり払い続けられることを想定して契約する必要があります。
デメリット2:早死にしてしまうと損をする
特に生きている間にずっと受け取れる「終身年金」の場合、年金受け取りを開始した後、早い時期に死亡してしまうと、結果として受け取った金額が支払った金額よりも少なくなってしまいます。
確定年金では、生死にかかわらず受取額が決まっていますから、家族の早死にのリスクを考えて、確定年金を選ぶ方もいるようです。
デメリット3:インフレや生命保険会社破綻に伴うリスク
もう一つのデメリットとして、定額型の個人年金は、長期貯蓄型なのでリターンが少ないというデメリットがあります。
特に、今のように低金利の状況では不利で、個人年金はインフレに弱いとえます。また、これはいくらか極端な状況ではありますが、万一生命保険会社が破綻した場合には損をするというリスクもあります。実際に生命保険会社が破綻したこともあるため注意が必要です。
例えば、2008年に大和生命保険が破綻した際には、個人年金に加入していた顧客の年金額は大幅に削減され、30歳で契約した個人年金の年金額は15~80%削減となりました。
メリット、デメリットの両方を比較し、メリットのほうに魅力を感じるようであれば真剣に個人年金の導入を検討できます。
個人年金の選び方
上記のポイントを踏まえ、ここからは実際にどのように個人年金を選べるかを考えてみましょう。
以下のポイントに分けて一番自分のライフプランにあった個人年金を選ぶようにしましょう。
ポイント1:保険料の支払い方による違いによる選び方
個人年金の支払い方は「月払い」、「半年払い」、「年払い」と、まとまったお金を一括で払い込む「一時払い」があります。
さらに分割払いの場合には、「年金建」、「保険料建」があります。「年金建」とは、何歳から何歳まで、またいつまで、いくら年金を受け取れるかで保険料を決めるタイプのものです。
「保険料建」とは、払う保険料、何歳から、いつまでを決めて年金額が決まるのが保険料建です。
ポイント2:リスクのあるなしによる違いによる選び方
「外貨建」や「変額建」の場合、為替の変動により受け取れる年金が変わってきます。
たしかに、相場によってはハイリターンを期待できる場合もありますが、状況によってはハイリスクになる危険性があり注意が必要です。
また、こちらのタイプの年金の場合、保険料の支払いは一時払いがほとんどです。
ただ、ほかにまとまった貯蓄があり、もしリスクがあっても相殺できるだけの蓄えがあるなら、検討できると思います。
ポイント3:年金の受け取り方による違いによる選び方
個人年金の受け取り方として、代表的なのは「終身年金」、もう一つは「確定年金」です。
さきほども述べましたが終身年金は、死亡するまで受け取れるものです。
確定年金とは、年金の受け取りが開始してから一定期間内に死亡しても年金が受け取れるものとなり受け取り年数としては10年が一般的です。また、受取り期間内に死亡しても、受け取り自体は保証されている「保証期間付終身年金」という年金もあります。
個人年金は必要なのか
結局個人年金は必要なのでしょうか?もし現在30歳前後で、今後20年から30年という視野で長期にわたって保険料を支払う予定であれば、加入を検討できるでしょう。
また、途中解約が容易でないため、銀行貯金などではなかなか貯金ができない方にとっては、中断しにくい個人年金はおすすめできます。
ただし、投資信託などに比べるとリターンも少ないため、リスクを承知で幅広い金融商品を選びたいと考えている方にはおすすめできません。
個人年金に入る場合は、まずは家計を圧迫しない程度で長く支払いを続けられる、月々1万円ずつぐらいの「保険料建」のものを選びましょう。年金の受け取りは60歳から65歳、あるいは定年後も働き続けられる予定があれば、もっと遅い65歳~70歳に設定してもいいでしょう。
個人年金だけで老後の資金を作ることは難しいので、国民年金や貯蓄や積立、ほかの金融商品となどと組み合わせて運用していきましょう。超高齢化の時代で、健康で長生きし、いつまでも生き生きと暮らしたいですよね。
老後の趣味を楽しんだり、旅行にでかけたりと、いくらか余裕のある暮らしをするためにも、個人年金などを活用し老後の資金を備えておくと良いでしょう。