日本の産業を支えるICTとIoTの違いや関係性、活用事例

2019.04.23 [火]

日本の産業を支えるICTとIoTの違いや関係性、活用事例

私たちの暮らしをより便利にする技術として注目を集めているのが、ITです。そんなITとよく似た言葉に、「ICT」と「IoT」があります。両方ともITにまつわる重要なワードですが、意味を正しく把握できていない方も多いのではないでしょうか。

当記事では、ICTとIoTの違いや関係性について解説していきます。また、ICTとIoTの具体的な活用事例もご紹介します。

 

ICTの意味とITとの違い

ICTの意味は「情報通信技術」

「Information and Communication Technology」の頭文字をとって略した言葉が、ICTです。ICTとは、「情報通信技術」または「情報伝達技術」を意味します。

これまで日本政府は、ICTを意識した政策を実施してきました。

2004年に総務省が掲げた「u-Japan政策」は、ICTの概念を重視した政策です。ICTに重点を置く政府の姿勢が影響を及ぼし、2005年には「IT政策大綱」が名を改め、「ICT政策大綱」と呼ばれるようになりました。

ICTは、私たちの日常生活を便利にしてくれます。例えば会社で会議を行う場合は、基本的に出席者が1つの部屋に集い、直接顔を合わせる必要があります。

しかしICTを活用し、テレビ電話を利用すれば、遠く離れた場所にいる人同士で会議を行えます。このように世の中をより便利にする仕組みが、ICTです。

ICTとITの違い

ICTとITは、非常によく似た言葉です。ITは「Information Technology」を略した言葉で、「情報技術」意味します。

ICTとITはほとんど同じ意味ですが、少し違いがあります。ICTは「情報通信技術」と訳されるように、「通信」や「伝達」を重視した概念です。ITよりもコミュニケーションに重点を置いているのが、ICTです。

日本ではITという言葉が浸透していてICTはまだまだ周知されていませんが、世界ではICTという言葉の方がよく使われています。

日本政府がICTを広めようとしているのは、他の国と足並みを揃える意味合いもあります。将来的には、日本でもICTが標準的な用語になるかもしれません。

またICTとITは、管轄省庁が異なります。ITを管轄しているのは経済産業省です。一方、総務省はICTを扱っており、ICTを世の中に広めるために様々な施策を講じています。

ICTとITにはいくつか違いがあります。しかし言葉の意味や使い方はほぼ同じなので、「ITの代わりに使われる言葉がICT」と解釈して問題ないでしょう。

 

ICTの活用事例

活用事例①:医療

医療の分野では、患者の治療や業務の効率化にICTが活用されています。

新潟県佐渡市に整備された「さどひまわりネット」は、ICT活用事例の1つです。さどひまわりネットとは、佐渡市における医療連携ネットワークのことです。

さどひまわりネットが構築されたことによって、佐渡市では電子カルテを用いることなく、近隣施設との間で医療情報を共有できるようになりました。ICTは、佐渡市に質の高い医療をもたらしています。

他にも福井県や石川県では、救急医療の進展にICTが活用されています。ICTを利用した連携システムを構築することで、患者の搬送中に病院側が手術の準備を行えるようになり、治療の迅速化が実現しました。

医療分野におけるICTの活用事例が増えていけば、これまでよりも質の高い医療が提供されるでしょう。

活用事例②:教育

教育の場では、より良い学習環境を構築するためにICTが活用されています。

福島県新地町では、クラウドを活用した教育体制が構築されました。

教育の場でクラウドを利用することで、生徒の学習状況をネット上で管理し、教師が適切な指導を行えるようになっています。

またタブレット端末を子どもたちに持たせ、自宅でもタブレットを使って勉強できる仕組みを作ったことによって、生徒の自宅学習も強化されました。

福島県新地町で行われた取り組みは、保護者から強い支持を得ています。それだけでなく学力検査の結果が向上したり、入学希望者数が増加したりするなど、目に見える形で良い成果を出しています。

ICTは学生の教育にも好影響をもたらします。ICTによる教育体制が当たり前になる時代は、近いかもしれません。

活用事例③:防災

医療、教育の他に、ICTが有効活用されているのが防災の分野です。地震や津波による被害を抑えるために、ICTが利用されています。

高知県高知市と宮城県石巻市は、ICTにより津波の被害を予測するシステムを構築しました。

このシステムにより、地震が発生したらリアルタイムで津波の浸水域を予測できるようになりました。住民への情報伝達も迅速に行えるため、津波が発生したとしても被害はかなり抑えられるでしょう。

また大阪府でも、地震発生時の情報伝達を強化する事業が展開されています。

大阪府が行う事業の中心となっているのが、「G空間防災システム」です。G空間防災システムは地理空間情報とICTが連携した防災システムで、地震災害への対応力強化に寄与します。

ICTを活用した防災システムが進歩していけば、災害による被害もより少なくなるでしょう。

 

IoTの意味とその事例

IoTの意味は「モノのインターネット」

「Internet of Things」を略した言葉が、IoTです。IoTは「モノのインターネット」を意味します。つまり、私たちの周囲のあらゆる物体がインターネットとつながる仕組みを、IoTと呼びます。

例えば自動車のカーナビもIoTの1つです。自動車はインターネットとつながることで位置情報を取得し、目的地への案内を行えるようになります。IoTは私たちの身近なところに存在しているのです。

カーナビだけでなく、世の中で話題になっている自動車の自動運転技術も、IoTと関係しています。自動運転技術が搭載されている車には、ハンドルが付いていません。この自動運転もカーナビと同様に、自動車がインターネットとつながることで実現しています。

自動車に限らず、IoTの技術は今後ますます発展することが予想されています。

活用事例①:スマートデバイス

IoTの身近な活用事例の1つが、スマートデバイスです。インターネットと接続できる便利なデバイスが、既に実用化されています。

「eRemote」というデバイスは、自宅にある家電をスマートフォンで操作できるようにしてくれます。

eRemoteがあれば、スマートフォンを使って照明やテレビの電源を入れられるのです。

たとえ外出していても、自宅にある家電はスマートフォン1つで自在に操作できます。電気を付けっ放しのまま外出してしまっても、問題ありません。それだけでなく、帰宅前に暖房を起動して部屋を暖めておくことも可能です。

他には、スマートフォンでドアのロックを操作する「Qrio」というデバイスが販売されています。

Qrioを利用すれば、家の鍵を持ち歩く必要はありません。スマートフォンだけでドアを開いたり閉じたりできるようになります。セキュリティが厳重なので、防犯の面から見ても優秀なデバイスです。

活用事例②:医療

IoTは医療の発展に大きく貢献しています。

IoTを活用した遠隔医療サービスを提供しているのが、「PlushCare」です。

「PlushCare」のサービスを利用すれば、患者はスマートフォンを通して医師の診察を受けられるため、わざわざ病院を訪れる必要がありません。

このような遠隔医療サービスが広まれば、病院に行く時間を削減できるようになり、より便利な医療体制が実現するでしょう。

とはいえ遠隔医療サービスはまだまだ発展途上で、ごく一部の病院でしか実施されていません。日本で遠隔医療の仕組みが広まるのは時間がかかりそうです。

手術室のIoT化や医薬品を輸送するシステムの開発など、医療分野におけるIoTの技術は日々進歩しています。今後はIoTにより、さらに画期的な医療システムの構築が実現するでしょう。

活用事例③:工場

様々なものを生み出す工場でも、IoTが活用されています。

富士通は、工場の仕事を効率化するための画期的なIoTシステムを開発しています。

富士通が開発したシステムの特徴は、センサーにより工場のデータを収集できる点です。各地に点在する工場のデータを、インターネットを通して収集することで、有益な情報を得ることができます。

インターネットを通して集めた工場のデータは、業務の問題点や改善点を発見するために利用されます。

システムによる解析の結果、工場の業務に問題点が見つかれば、その問題を解決するための方策を考えることができます。また収集したデータを分析することで、工場の生産性を向上させることも可能です。

工場のIoT化が進めば生産性がさらに向上し、製造業の発展につながるでしょう。

 

ICTとIoTの違い

IoTはICTの一部

ICTの意味は「情報通信技術」です。一方IoTは、「モノのインターネット」を意味します。ICTとIoTは、両方ともITの分野に属する言葉です。しかしIT分野において、両者の位置付けは異なります。

前述したように、ICTはITとほぼ同じ意味を持っています。そのため、ICTはITと同列に扱われます。一方で、IoTはITの一部です。ITという「情報技術」の中の1つが、IoTなのです。IoTはITの下に位置する言葉です。

以上より、ITと同義のICTは、IoTの上に位置する言葉だということが分かります。IoTはICTの一部です。自動車のカーナビ機能や自動運転機能をIoTとして取り上げましたが、これらは全て、広義ではICTと解釈されます。ICTの内の1つ、「モノのインターネット」を意味する言葉が、IoTです。

 

まとめ

ICTとIoTは似ている言葉ですが、用途は異なります。どちらも重要な用語なので、両者の違いを正しく把握しておきましょう。

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