新聞やテレビ、雑誌、様々なメディアで「IoT」や「クラウド」というワードを見ない日はないでしょう。これほどまで当たり前のワードになった「IoT」「クラウド」ですが、2つのワードの関係性を説明できますか?
この記事では、IoTとクラウドの関係性や活用方法についてご紹介していきます。
IoTとクラウドの意味
(1)IoTとは
IoTとは「Internet Of Things」の略であり、「全てのモノがインターネットと繋がっている世界」を意味しています。「全てのモノ」とは文字通りありとあらゆるモノを対象としています。
例えば現在GoogleやAmazonからスマートスピーカーが発売されていますが、あれば「スピーカー」がインターネットと繋がった例です。
他にも、家の鍵をスマホで解錠できる「スマートロック」など10年前は考えられなかったサービスが登場しています。
これらのIoT製品のように「モノがインターネットと繋がる」ことによって、今まではできなかった操作やセンサによるデータの取得で多様なサービスの提供が可能となりました。
(2)クラウドとは
クラウドとは、英語で雲を意味する「crowd」から来ています。クラウドは、文字通り雲のように自在に大きさを変えて利用できるサービスなのです。
従来は何らかのアプリを利用する場合、特定のパソコンにアプリをダウンロードし、ダウンロード先のパソコンでしかアプリの実行を行えませんでした。
これでは、必要な時以外にもデータを保存しなければならずパソコンの容量の無駄となっていました。
しかし、クラウドを利用すればアプリがダウンロードされているサーバーへアクセスすれば誰でもアプリを利用することが可能となりました。
IoTとクラウドの関係性
(1)IoT以前からあったモバイルクラウド
IoTが普及する前から「モバイルクラウド」という概念がありました。
モバイルクラウドとは、スマートフォンなどのモバイルとクラウドを組み合わせた技術のことです。
働き方改革で「リモートワーク」に注目が集まっていますが、自宅から会社のネットワークへアクセスする際には「モバイル技術」と「クラウド技術」の両方が使用されています。
モバイルクラウドは、通信が可能なモバイル端末に対してクラウド技術を応用するものです。モバイルクラウドの拡張版がIoTとなります。
IoTでは、モバイルのように通信が可能なものだけでなく「ありとあらゆるモノ」を通信の対象と考えます。
あらゆるモノから収集したデータをクラウドへ保存し、サービスへ活かす方法を考えるのがIoTビジネスです。
(2)クラウドによりIoTのスケーラビティ問題が解消
クラウドは、データセンターに集約されたリソースを分離し個別に利用することができます。
また、リソースの増減が容易であり時間単位で変更が可能です。
クラウドが普及する前は、個別にサーバーを用意する必要があり、処理負荷のピークに合わせて機器の撰定とシステム設計を行っていました。
更に使用していない時も、運用費や維持費がかかりスモールスタートのビジネスの障壁となってしまいます。
しかし、クラウドを活用することによって必要な時間だけ、必要なリソースを利用できるようになり大幅にコストカットが実現することで新規サービスを立ち上げやすくなりました。
IoTとクラウド活用のメリット
(1)IoTのメリット
IoTのメリットとしては大きく2点あげることができます。
1.常にモノの監視ができる
2.場所を選ばずモノを操作できる
従来、日常生活で使うモノは、直接操作するしかありませんでした。しかし、IoT製品が出たことによって、私たちはモノを操作する場所を自由に選べるようになったのです。
また、あらゆるモノを監視できるようになることで「データの取得」が可能となりました。
IoTデバイスを使用すれば、今までは取得できなかった様々なデータを取得することができます。更に、取得したデータを分析することで新しいサービスの開拓が可能となったのです。
(2)IoTの活用事例
例えば、アメリカのフィラデルフィア州では街のゴミ箱をIoTセンサのついたゴミ箱へ変更しました。
センサで得られるゴミの溜まり具合を監視し、ゴミ収集の回数を最適な頻度へ変更しました。それによって、ゴミ収集にかかっていた費用が7割も削減できたというのです。
従来では、ゴミ箱がどれだけ溜まっているかは人が見に行かなければ分かりませんでした。ゴミ収集を効率的に行うために、全てのゴミ箱の前に人を配置するわけにはいきません。
フィラデルフィアの例のように、今まで費用見合いで観測できないでいたモノに対してもIoT製品を用いることで運用の効率化が測れるかもしれません。
(3)クラウドのメリット
クラウドのメリットは以下の2点が挙げられます。
①経済性
従来システムを構築するにはオンプレミスが一般的でした。しかし、オンプレミスで構築する場合は、ピーク時の使用量に合わせてハードウェアを用意しなければなりません。
しかし、クラウドで構築する場合は必要な機能を必要な時間に調達することが可能であるためハードウェアのコストを下げて準備することが出来ます。
②可用性
オンプレミスで構築する場合は、サーバーの障害対策のために様々な対策が求められます。しかし、クラウドの多くはセキュリティ対策の万全なデータセンターにあるサーバーの一部を借ります。そのため、一部のハードウェアに障害が起きてもサービスを落とさず継続することが可能です。
(4)クラウドの活用事例
クラウドサービスは主にWebサイトやアプリケーション開発の環境に利用されてきました。
しかし、最近では活用の範囲が広がっており、政府や自治体が行う「公共事業」、メールやファイル共有などの「オフィス産業」、人工知能やビッグデータなどの「新事業分野」等多方面での広がりが見られます。
IoTとクラウドの未来や今後の活用法
(1)IoTの将来性と市場規模について
IDC Japanが2017年に発表した資料によると、国内のIoT市場規模は2021年の段階で11兆237億円に達すると予測されています。
2016年の見込みが5兆270億円であることから、5年で約2倍の市場になると期待されています。
これほど大きな市場になることが見込まれる背景として、IoT技術がIT業界だけに留まらず様々な業界へ普及することが挙げられます。
働き方改革や労働力不足も相まって、どの業界でも業務の効率化を求められているため自社の課題をIoT技術で解決しようという流れがあるように見えます。
(2)最新の通信技術5Gの導入
「5G」とは第世代移動通信システムのことを指します。現在、携帯電話は4Gという通信システムを利用しています。
「5G」になると、現在の通信速度の数十倍もの速さでデータのやりとりが可能となります。
この高速通信の価値は、人とのコミュニケーションだけでなくモノのやりとりで真価を発揮します。
例えば、「遠隔手術」などは従来の通信速度では遅れが生じてしまい現実的な利用は見送られていましたが「5G」の通信速度が実現すればリアルタイムの動作を遅れなく再現することが出来ます。また、情報量は少なくとも大量の端末へデータを送る必要がある「コネクテッドカー」の実現も可能です。
上記のように、新しい通信技術の実現によってIoT製品は更に拡大していくことが期待できます。
(3)新たな利用形態マルチクラウド
マルチクラウドとは、目的に応じて複数のクラウドを使い分ける利用形態のことです。
一般的にオンプレミスからクラウドへ移行する際には3つのパターンに分けられます。
①基幹系・既存システム:ホステッドプライベートクラウドを利用
②新規システム:IaaSやPaaSを利用
③情報系システム:SaaSを利用
上記のように各目的にあったクラウドを選択できるようになると、便利になるばかりでなく運用面では負担が大きくなってしまいます。
また、複数の異なるクラウドシステムを連携させる場合、高度なネットワークの知識が必要となります。
今後は複数のクラウドの利点や弱点を理解し、必要なサービスの選択、管理ができる人材の確保が重要となるでしょう。
(4)より強固なセキュリティ対策が求められる
新しい技術は便利なだけでなく、危険性も伴います。特に情報を扱う技術では、「セキュリティ対策」は避けて通れません。
今後のセキュリティ対策は「手軽さ」と「強度」の両方を兼ね備えたシステムが求められます。「手軽さ」を重視し一度のパスワードのみで利用できるようにすれば、悪意を持った第三者に利用者のアカウントや情報が悪用される可能性もあります。
逆に「強度」を重視して何重にもパスワードを要求すれば、利用者はいなくなりサービス自体が廃れてしまうからです。
利用者にとって利用を続けられる「手軽さ」と第三者が悪用できない「強度」のバランスを取ることが求められます。
まとめ
IoTとクラウドの関係性や活用方法についてご紹介しました。2つのワードに対する知識は深まったでしょうか。
クラウドの技術の発展と共にIoTの普及が可能となりました。更に、それぞれの技術は更なる発展を続けています。
「5G」や「マルチクラウド」のように新しい技術が出れば、今までは無かった製品が出てくるでしょう。
セキュリティに関しては、常に対策が求められますが、今後ますますIoTとクラウドの技術を使った製品が増えてくることでしょう。
新しい世界を作る、IoTとクラウドの技術を使った新たなサービスに要注目です。