農業の課題はIoTで解決。農業のデジタル革命到来

2019.04.12 [金]

農業の課題はIoTで解決。農業のデジタル革命到来

いまや様々な分野で導入が進んでいるIoT。農業の分野でもIoTの活用が急がれており、変革のタイミングが来ていると言えます。

今回は、農業がこれまで抱えていた課題が、IoTによってどのように解決できるのかを解説します。また農業×IoTのメリットや具体的な事例についてご紹介します。

 

農業の課題

まずは、農業分野が抱えている課題について確認します。

農業従事者の人口減少

農業は人手不足という大きな課題を抱えています。農作業では、屋外で早朝から作業をすることや、猛暑や寒さの中で長時間収穫を行わなくてはいけないこともあります。「危険、汚い、きつい」の「3K」と呼ばれ、続けていくためには、体力や地道な作業の継続を必要とします。

現代は職業の選択肢がたくさんあります。代々農業を行ってきた家でも、親の世代が農業の大変さから子供には継いで欲しくないと思っていることも多いようです。

農業を行う人は6割以上が65歳以上の高齢者がしめており、今後ますます人手不足が悪化することは避けられないでしょう。

ビジネスとして成功しているとは言い難い

日本の農業生産額は1984年をピーク地点として、減少し続けています。その理由は、先述のように農業従事者の減少などが挙げられます。

さらに、農家の平均年収は200~300万円というデータも出ており、生活が苦しいために、農業をやめて別の仕事で生計を立てる人が増えているという現状もあります。

日本の農作物の品質は世界でもトップクラスと言われていますが、このような農業の現状を見ると、ビジネスとして成功しているとは言い難いでしょう。

ビジネスモデルの確立が難しい

農作物の栽培は、気候に大きく左右されます。気候は人間によって管理をすることやコントロールを行うことが難しいものです。近年は異常気象なども多く、農家の人の頭を悩ませます。また、農作物よっては年に1度しか収穫できないものもあります。

このように、農業は自然の力に影響される側面が強く、人工的な管理やコントロールが難しい部分があるとされてきました。そのため、これまではビジネスモデルを確立することが難しい分野だと認識されてきました。

さらに、農家自体も農業をビジネスだと認識している人は少ない、という現状もあります。良いもの作りを行うだけではなく、農作物を販売して売り上げを拡大していく、という視点がない農家も多く存在しています。

農業発展のために必要なデータの蓄積・共有化ができていない

新しい品種を開発することや、最適な栽培方法を生み出すためには、多くの農業データから検証を行うことが大切です。しかし、これまでの農業では、それらのデータを蓄積するシステムは存在せず、一つ一つの農家が自分たちの長年の経験や勘から、頭の中にノウハウを所有しているだけです。それらをデータ化して分析を行うことや、業界で共有化されることはあまり行われてきませんでした。

こうした状況も、農業の発展や効率化を妨げる課題だと認識されています。

 

農業×IoTで解決できること

様々な課題を抱える農業ですが、IoTを導入することで解決できることは何があるでしょうか。IoTの基本的な定義についても確認しながら解説します。

そもそもIoTとは何のこと?

IoTとは「Internet of Things」の略で、日本語にすると「モノのインターネット」となります。以前は、インターネットは、コンピューター同士をつなぐだけのネットワークでした。しかし、近年はこのインターネットはモノとも接続する時代になっています。インターネットがモノと接続して通信を行うことをIoTと言います。

農業×IoTで解決できることは何があるか

農業も、インターネットに接続された環境で行うことが大切だという認識が生まれています。

農業×IoTで解決が期待出来ることは、一言で言えば、”農業がビジネス化”出来ることです。

これまでの農業の課題には、ビジネスモデルの確立の難しさや、農業がビジネスとして成功していない点、農業人口の減少などがありました。

IoTによって農業がビジネス化出来ると、これらの課題が解決すると期待されています。

 

農業でIoTを取り入れるメリット

先述の通りIoTを農業に取り入れることで、農業をビジネス化出来ることが期待できます。ここではさらに、期待できる具体的なメリットについてご紹介します。

農業のデータを収集し、新商品開発や作業自体を効率化

農業の課題の一つとして、農作物のデータやそれぞれの農家が持つノウハウが、蓄積や共有されていないという点がありました。

IoTを取り入れることで、これまでそれぞれの農家が感覚で行っていたものを、データ化し、科学的に根拠を立てることにより、作業自体を効率化したり、他の農家の栽培でも役立てることを可能にします。

多くのデータを収集したい場合には、地域全体の農家のデータを収集し、クラウドで共有することで、効率的にデータ収集・検証を行うことも可能です。

新しい事業者の参入が期待出来る

これまでの農業は、農家の経験に基づいて行われていたため、販売可能な農作物を生産するまでには一定の時間がかかり、新しく参入するにはハードルが高い分野とされてきました。

しかし農業にテクノロジーを導入することで、ノウハウや経験が少ない新規参入者でも、科学的根拠に基づいて高品質生産を行うことができるようになります。

また、IoTの活用により、これまで農家にアナログで蓄積されてきたノウハウをデータ化し、新規参入者に横展開することも可能にします。

農業従事者の人口が減っても農業の継続を可能に

人手不足は農業分野の深刻な課題でしたが、IoT化により、農業の作業工程を効率化することができれば、少ない人数での農業の継続を可能にすると期待されています。

さらにデータの記録や、収穫をテクノロジーによってまかなうことにより、人ひとりあたりの農作業も軽くなり、働きやすさの向上も大いに可能にします。

 

農業×IoTの事例

IoTを活用した農業の事例が数多く登場しています。海外の事例と日本の事例をいくつかご紹介します。

アメリカではドローンで農地を管理

アメリカは世界一の農業大国と言われていますが、広大な土地で大規模な農業を行うことが特徴です。アメリカのIoT農業では、広大な農地でドローンが使われています。

ドローンを利用することよって上空から適切なタイミングで適切な量の農薬を散布することや、農作物の成長具合や土の状態などのデータを収集することが可能になります。ドローンのセンサー技術は年々向上しており、近赤外線で反射する光の波長から、作物の成長具合や土の水分状態、害虫や作物の病気まで検知できるようになっています。

アメリカFarmLogs社が展開するFarmLogs Flow

FarmLogs社はアメリカで農業×IoTのサービスを展開する企業で、ドローンや衛星画像によって収集したデータを蓄積し、収穫量の予想や、農業のアドバイスを行うビジネスを展開し、人気を博しています。アメリカ全土の農家の1/3がFarmLogs社のサービスを導入しているというデータも出ています。

FarmLogs社はFarmLogs Flowというサービスを打ち出しました。このサービスは、農業機械に接続することで、農作物に関するあらゆるデータを取得、管理してくれるものです。さらに、データの記録や管理を行うだけではなく、病気の作物と健康な作物の違いを学習して、検知することが可能です。

今後は、作物が病気になった原因までを迅速かつ正確に特定し、病気の作物への対処の効率化に貢献するようになるとしています。

ワイン農園もIoTによって効率化

日本の総合ITベンダー富士通は、山梨県のワイナリーと提携を結び、ワイン造りのIoT化の取組みを進めています。

富士通が開発したIoT装置を農園に設置することにより、農園内の気温や温度、雨の量のデータを10分おきに収集し、農園内の状況を瞬時に把握できるようになりました。これにより、農園内がぶどうにとって適切な環境でなくなった場合に、迅速な対応が行えるようになります。さらに、ぶどうの収穫時期も正確に判断でき、収穫できるぶどうの品質が向上しているというデータも出ているようです。

IoTを導入することで、ぶどう農園の環境チェックがスマホやPCで行えるようになり、働く人のワークライフバランスも向上するというメリットもあります。

IoTによってイチゴ栽培

NTT東日本は、IoTを活かしたイチゴ栽培の実証実験を行っています。イチゴが生産されるビニールハウスでは、専用装置が設置され、温度や湿度、照度、二酸化炭素の濃度などが自動でモニタリングできるようになっています。さらにカメラでイチゴの生育状態を撮影してデータを蓄積し、環境状況と生育状態を検証します。

これらのIoTデバイスとIoTカメラをまとめて、NTT東日本では、環境モニタリング装置として農家向けに提供を行っています。

 

まとめ

労働人口が減っている農業分野では、テクノロジーの導入による作業の効率化、最適化が必要とされています。

IoTの導入にはコストがかかるなどのデメリットもあり、まだ一般の農家全てが導入できる状態ではありません。しかし、農業分野の課題を解決できる糸口になることは間違いないでしょう。

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