第5通信移動システムである「5G」。
この5Gの登場により日本の通信インフラが大きく変化し、特にIoTやVRの利便性が格段に高まることが予想されています。
この5Gは単に一つの技術進化ではなく、さまざまな技術の進化が重なり合って成り立っていくもので、近い将来の5G標準化、商用化に向けて現在も開発が進められています。
ここでは次世代の通信移動システムである5Gの従来システムとの違いや5Gがもたらすであろう未来について細かく解説をしていきます。
5Gと従来の通信インフラの大きな違い
まず最近よく耳にする「5G」とはいったい何なのでしょうか?
5Gの「G」はジェネレーション(世代)の頭文字を表す「G」で、日本語では「第5世代移動体通信方式」と言います。
現在に至るまで移動体通信方式は時代と共に世代が移り変わってきており、現在はauのau4GLTEやソフトバンクのSoftBank4GLTE、ドコモのXi等に代表される「4G」の時代です。
移動体通信方式の過去を遡ってみると、音声通話をモバイルで利用できるようになった1980年代までの「1G」であるアナログ方式の携帯電話に始まり、1990年代の音声に加えテキスト通信が可能になったデジタル方式の「2G」、2000年代の高速データ通信が可能になった「3G」が普及し、ここで「高速データ通信」が可能になったことにより、携帯電話でのWEBサイトの閲覧や電子メールのやり取りが標準化されました。
そして現在、2010年代のスマホの普及に合わせ、さらに高速化したデータ通信が可能になった「4G」の拡がりにより動画通信が一般的になるなど、通信技術は今日まで大きく進化をしてきました。そして2020年代には4Gの次世代である「5G」が広がっていくと考えられています。
これまでの3G、4Gと同様に国際的な標準化組織である3GPP(Third Generation Partnership Project)が作業を進めており、2020年ごろには5Gが始まるのではないかと言われています。
では5Gと従来の通信インフラとでは何が違うのでしょうか?
実は5Gの登場はこれまでの通信インフラの概念を大きく覆す可能性を秘めています。
具体的な5Gの特徴としては高速・大容量通信や低遅延通信、多数端末の同時接続通信の3点が挙げられます。
1.高速・大容量通信について
高速・大容量通信に関しては、5Gの通信速度が従来のLTEと比較すると約100倍、4Gと比較すると10~1000倍速くなるのではないかと期待されています。仮に4Gより通信速度が10倍速くなっただけでも、いままで6分掛かっていた8Kの動画のダウンロードが約30秒で完了すると予想されています。
2.低遅延通信について
ネットワークの遅延についても5Gではデバイスと通信するサーバー間の遅延を実質ゼロにし、相手との会話にずれが生じてしまうような事態が起きなくなります。
3.多数端末の同時接続について
多数端末の同時接続では、1k㎡あたり100万台以上のデバイスと同時に接続できるほどの能力を持つため、ネット回線がいくら混雑しようと速度低下などという事が起こらないように改善されます。
5Gが通信の大容量・高速化を実現できる仕組みとは
5Gのネットワークでは、高速・大容量通信、低遅延通信、多数端末の同時接続といった各要件を1つのネットワークで仮想的に分離して提供できる「ネットワークスライシング」いう方法があり、イメージとしては5Gネットワークを薄くスライスして、スライスしたそれぞれが各要件を独立して提供するようなものです。
また周波数帯の帯域幅の拡大も検討されていたり、無線通信基地局をいたるところに設置し、ユーザーのデバイスに個別に電波を飛ばすといった技術も検討されています。
このような技術により今までよりもストレス無くインターネットを楽しめるような環境が近い将来、実現されそうです。
低遅延化、省電力化も実現する5Gの要素技術
5Gの技術では低遅延化や省電力化も期待されています。
低遅延化に関しては、ユーザーにより近い位置でコンピューティング処理を行う「エッジコンピューティング」が活用され、これにより各分野で実用化が進んでいる遠隔操作や自動操縦などのより高い精密性の実現が期待されています。
特に自動車産業の自動運転や医療業界での遠隔手術など、たった0.1秒の遅延でも致命的なミスに繋がってしまう分野では、技術の発展に期待の声があがっています。
また省電力化に関しては、高速通信が実現したとしてもエネルギー効率の良いインターフェースを準備するなどし、消費電力は電力効率を2000倍に高めることで、今後10年でネットワークの全消費電力を今の2分の1にすることを発表しました。
これはユーザーが求める高速通信の機能を求めれば求めるほど消費電力は上がるのではないかと思われますが、ミリ波のような高周波数帯域での通信は、興味深いことに一定の消費電力を超えると、同じ消費電力でより高い回線速度や処理能力、いわゆるスループットが得られるという性質があります。
高速通信と共に単一デバイスで特に重要視されるバッテリー消費に関しても、ユーザーにとってはありがたい環境が5Gで実現されることは、非常にメリットの大きいことであると言えます。
5Gで実現する未来
ここまで説明してきたように、2020年代には4Gの次世代である「5G」の時代がやってくることが考えられます。従来の4Gの機能や性能をさらに高度化、高速化するのはもちろんのこと、今後はIoTやVRへの対応が求められてくる時代へと突入していきます。
ここでは技術説明だけではなく、具体的な未来の予想をあげてみたいと思います。
【自動車】
自動車分野では現在すでに開発が進んでいる「自動運転システム」が挙げられます。
車自体が自律的に周囲の道路状況を判断し、信号や歩行者などからも情報を取得することになれば、より安全性は高いものとなり、交通事故ゼロの時代はそう遠くない未来かもしれません。
また他の車や先行車からの情報を取得することで、道路の混雑状況を把握することができ、ルートを最適化することができれば時間短縮や省エネにも繋がります。
【ドローン】
5Gによりドローンをコントロールできる範囲が拡がれば、宅配業務や橋梁、道路の保守点検など幅広い分野での活躍が期待されます。
また造成・建築の分野においてもドローンによって俯瞰や測定を行うことは可能で、現在すでにドローンによって測定された設計図面に従って、高精度に造成を行うシステムが実用化され始めています。
【医療分野】
医療分野においては、離島などにいる患者に対しての遠隔手術が期待されています。すでに実用例も出ていますが、5Gの技術が実用化レベルまで進化し、低遅延化の技術が標準化すれば、より高度な手術も行うことが期待されるでしょう。
IoTなどのセンサー的デバイスは常に持ち歩くスマートフォンのようなデバイスと異なり、街や家庭、オフィス等、様々な場所に設置されるほか、セキュリティーのために自動車や自転車にも設置されてくることが考えられます。
その時に一つの基地局に通信を求めるデバイスの数が現在の数十倍~数百倍に増えたとしても、同時にアクセスできる能力が求められてきます。また、高速データ通信の方向とは別に、設置しているデバイスの電波範囲や利用時間に関しても進化が求められてくるはずです。
今後、高速・大容量通信の実現や多数端末の同時接続通信が進化していくことが、今後の通信インフラが変革された未来を創造していくことと並走していくのではないでしょうか。
5Gの登場は、IoTやVRだけではなくロボットやスマートシティなどの普及により、人々の普段の生活をより便利で快適なものにしてくれる可能性を大いに秘めており、更に医療業界においては革新的な遠隔手術の開発や、輸送の面でいえば事故の起こらない安全な輸送の実現など、スマホだけではなく多方面で5Gが便利で快適、安全な生活を実現させるコアテクノロジーになってくるはずです。
同時に世の中にあふれているあらゆる「モノ」が無線で繋がっていく「エッジコンピューティング」の普及が進んでいくことで、今の世では想像できないようなサービスや商品が登場し、私たちの生活を大きく変えていく可能性も期待されます。
まとめ
5Gの高い能力は1つの技術革新によるものではなく、様々な最新技術の集合体です。
2020年の東京オリンピックで日本が賑わう頃、高速・大容量通信、低遅延・省電力化通信、多数端末の同時接続通信がそれぞれ標準化され、5Gが世の中で実用化・商用化されるようになった時、私たちが子どものころに想像していたような、SF小説みたいな世界がやってくるかもしれません。
私たちの周りにはスマホだけではなく、様々なものが通信の世界と繋がっており、今後さらに繋がっていく可能性を秘めているモノに囲まれて生活をしています。
通信の世界がワンステージ進化することは、同時に私たちの生活も大きく変化していくことを意味しているので、目の前まで迫ってきている5Gの実用化を楽しみに待ちたいですね。