2020.04.01 [水]

仮想通貨を使った占いサービス「dApps神社」は ブロックチェーン普及のキラーアプリとなるのか?

2019年11月5日、株式会社SANKYO(渋谷)と株式会社 CryptoLab(横浜)の2社が共同で企画・開発をした「dApps神社」(ダップスジンジャ)がローンチされた。パチンコのイメージが強いSANKYOだが、新規事業としてアニメやゲーム、漫画などにも積極的で、dApps(分散型アプリケーション)市場についても調査を行なっていた。そんな折、2018年9月からCryptoLabとdApps市場の調査を共同で取り組んだことをきっかけに今回の企画がスタートした。

今回、SANKYOでコンテンツビジネスを推進するために新設された事業企画部の先崎正志氏とCryptoLabでビジネスアーキテクト・プロデューサーを務める藤本浩司氏に話を聞いた。

取材先であるCryptoLabの本拠地は、元町・中華街の端に位置しており、占いや神社という言葉がぴったりな場所に拠点を構えていた。

「dApps神社」はどういうサービスなのか?

 

「dApps神社」は、占いの費用(0.02ETH)を1回支払うとスマートコントラクトにより、購入日から30日間、毎日無料で運勢を見ることができるサービスだ。また、占い1回につきdAppsで利用できるキャラクターやアイテムなどの資産(アセット)を手に入れることができる。これらの資産はERC721規格(Ethereumのスマートコントラクトの規格の一つ)に準拠したNFT(Non-Fungible Token)であり、ブロックチェーン上の記録に基づいて所有権を証明することが可能だ。手に入れた資産は、オープン・マーケットで売買することもできる。

「dApps市場では、dAppsの資産をユーザー同士で売買することが前提として成り立っています。つまり、dApps間でリアルマネートレードができるわけですよね。従来のアプリだと、禁止されていることです。この点が非常に面白いかなと思います。例えば、自分が育てたキャラクターを高値で売れる可能性があるということは、ユーザーにとって魅力的ではないでしょうか」(先崎)

「dApps神社」は、7000万以上あるEthereumのアドレスを持つ全ユーザーをターゲットにしつつも、日本文化に関心のある欧米のユーザーに対して訴求力があるように、企画・開発を進めたという。そのため、彼らに魅力的に写るようなデザインにもっとも力を入れたようだ。

「dApps神社」のビジネスモデル

ここで、「dApps神社」のビジネスモデルについて考えてみよう。

[dApps神社のビジネスモデル]

1つは、「dApps神社」にアセットを提供するdAppsゲームベンダーからのプロモーション費用である。ユーザーは「dApps神社」の占いを購入した時に、dAppsゲームベンダーのアセットを受け取ることになり、dAppsゲームに参加する動機が生まれる。海外ベンダーとの連携は、これから積極的に進めていくようだ。

2つ目は、占いをするユーザーからの課金である。占い1回の費用は、0.02ETH(現在のレートで約550円)である。これが「dApps神社」の収入源になる。ユーザーは1回占いを購入すると30日間無料で占いをすることができるが、購入時とアセット取得時のみ手数料が発生するので注意が必要である。

「『dApp神社』に関して、今後3つの方向性を検討しています。まず、占いの機能を強化していくこと。例えば、仕事や恋愛などのカテゴリに特化した占いを提供していくなどです。次に、日本の文化発信を深掘りしていくことを検討しています。具体的には、書道AIを活用して御朱印アセットを提供することも面白いと思っています。最後に、イーサリアム以外の仮想通貨で決済できるようにすることを目指しています。実際に他社との連携し、検討も始めている段階です」(藤本)

ブロックチェーンをもっと身近に

「dApps神社」は、短期的にはサービスの認知度向上や機能の強化に力を入れていくようだが、中長期的にどのような展望を抱いているのだろうか。

「数年先のことを述べると、2つの軸があります。1つ目の軸としては、Japanカルチャー発信の場として成長していきたいということ。2つ目の軸としては、マーケットの取引の場としての可能性です。どちらに力を入れていくかは、ユーザーの反応を見ながら柔軟に戦略を変えていくつもりです」(先崎)

SANKYOとCryptoLabはコミュニケーションを密にとりながら次の手を考えていて、スムーズな意思決定で、スピーディーに方向性をシフトしていくことが可能だという。この点は、意思決定に時間のかかる大手コンテンツ制作会社と比べての強みとなるだろう。

さらに、「dApps神社」の展望として、地域との連携も視野に入れているようだ。

「地域独自のアセットを配布すると、所有者がブロックチェーンに刻まれ本人であることを証明できるので、アセットに紐付いたユニークなサービスを受けることもできます。もし、対象の地域に行かなくなったら、オープン・マーケットで興味のあるユーザーに販売することもできます。サービスを受けられる権利の証明として、ブロックチェーンを活用できると考えています」(藤本)

取材の終わりに、両社を代表して藤本氏から力強いメッセージをいただいた。

「『dApps神社』つくった動機は、『ブロックチェーンをもっと身近にする』ことです。まずは、躊躇せずに試してみてください。ちょっとでも、仮想通貨やブロックチェーンに興味があるのであれば、コストはそれほど高くありません。現在、『dApps神社』は無料キャンペーンを行なっており、占いを無料(※)で受けることができます。一度、メタマスク(ウォレットのひとつ)を入れてしまえば、心理的ハードルは下がります。一緒にdApps市場を広げていきましょう」(藤本)

※無料キャンペーン中でもETHのガス代(手数料)はかかる

「dApps神社」はゲームと違って、シンプルなサービスなためdApps未経験者でも気軽に試すことができる。dAppsがどういうものかを知るには、うってつけのサービスだ。無料期間中に、ぜひ一度試してみてはいかがだろうか。

(写真左)

株式会社SANKYO
事業企画部 課長
先崎正志氏

(写真右)

株式会社 CryptoLab
取締役
藤本浩司氏

取材・文/師田賢人 撮影/篠田麦也

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