貨幣と通貨の違い
通貨は流通貨幣の略称です。だから、貨幣の一種類であることに違いはないのですが、特別重要な意味があります。
このシリーズで貨幣の3大機能として、価値の尺度、価値の保存、決済機能を実例もいれて細かく説明してきました。これらは実際には通貨によって行われることが多いですね。
実際に流通していること、売買に使われていることは、貨幣に特別、現実的な価値をもたらします。だから貨幣と通貨には別の言葉が充てられているのだと思われます。
英語だとお金も貨幣も両方がmoneyと訳されますが、通貨はcurrencyと訳されます。
currencyを英々辞典(LONGMAN)で意味を調べてそれを日本語訳すると以下になります。
1.国が使用するシステムまたはお金の種類2.多くの人々に受け入れられている、または使用されている状態
実際に使われているお金は通貨のことで、それは2019年現在、未だ国が決めた法定通貨だということです。
実際に使われているから、それが信用される。信用する人が多いからより多くの決済に使用される。
昔の金貨や銀貨の時代は、仮に決済に使えなくても、金や銀としての価値はその重量分あることから信用されて使われている部分があったのでしょう。
紙幣も金との交換が約束された兌換紙幣では、交換できる金の価値の信頼により使われていたのでしょう。
今の法定通貨は国が管理しているから、金とは交換できないけどきっと信用できる。と思われて実際に使われています。不換紙幣が使われていますが、おそらくそのきっと信用できるだろうという根拠は通貨として日々使われているから、明日も使えるという心理的な慣性の法則のような共通の思い込みなのかもしれません。
ドルが兌換紙幣から不換紙幣に突然変換したとき出来事はニクソンショックと言われましたが、不換紙幣による経済はその後も続いています。
—-Wikipedia“ニクソン・ショック”よりの抜粋です。—-
ニクソン・ショック(ドル・ショック)とは、1971年8月15日(日本標準時1971年(昭和46年)8月16日)にアメリカ合衆国連邦政府が、それまでの固定比率(1オンス=35ドル)による米ドル紙幣と金の兌換を一時停止したことによる、世界経済の枠組みの大幅な変化を指す。当時のリチャード・ニクソン大統領がこの政策転換を発表したことにより、ニクソンの名を冠する。
ショックと呼ぶのは、それまで金と交換できる唯一の通貨がドルであり、それ故にドルが基軸通貨としてIMF(国際通貨基金)を支えてきたのがブレトン・ウッズ体制であったが、ドルの金交換に応じられないほど米国の金保有量が減ったことにより、戦後の金とドルを中心とした通貨体制を維持することが困難になったこと、そしてこの兌換一時停止は諸外国にも事前に知らされておらず、突然の発表で極めて大きな驚きとともに、その後世界経済に大きな影響を与えたことによる。————————————–
お金の正体?
このシリーズを通じて、お金について、様々な側面や機能をみてきました。
リーマンショック以来、日本円を例にすると、それまでの5倍ほど発行量を増やしてきています。(日本銀行のマネタリーペースの資料より)その日本円ですら他の通貨に対して比較的には安全な通貨と見なされていることは、金融危機時に円高に振れることから想像できます。
発行された量の通貨の価値を保証できる規模の担保となる資産はあるのでしょうか?現在の法定通貨を発行している中央銀行にとって最大の担保は“通貨を発行できる権利”にすぎないのではないでしょうか?
既に2019年の現時点において、お金は担保資産の不確かなにものになっているようにみえます。貨幣の3大機能は実質的には国が保証してその国内において使用が強制されているデータのやりとりに過ぎなくなっている。
通貨として使われていること自体に最大の価値があるが中身はデータのやりとりに過ぎない。
そして世の中のほぼ全ての人が共通してそのデータの価値を絶対的に信頼しているモノ、それがお金の正体ではないでしょうか?
ブロックチェーンの表現するモノ
ブロックチェーンは元々はビットコインという特定の人々に支配されないお金のシステムを作るために考え出された技術でした。
結果的にブロックチェーン自体の可能性の大きさに注目が集まってきました。
ブロックチェーンって何ですか?と質問されたとき、難しいことを言ってもわかってもらえないので、私は不正確を承知の上で今はこんな風に答えています。
「データ変更の履歴が残って、長く運用しているほど、データ自体の信用と価値が向上していくデータベース」
これって、いままで銀行等の金融機関がお金の管理でやってきたことと同じなのでしょうね。
ただ、金融機関の場合は、特定の管理者がそのデータの管理を行っている。また金融機関も利益を追求する過程で、無茶なお金の増やし方をして、例えばリーマンショックや日本のバブル崩壊のような事故を起こしてきました。
特定の責任ある人々が経営や管理をしているから長期的に安全というわけではないことが何度も繰り返されてきました。
ブロックチェーンの場合は、ビットコイン向けに開発された。パブリック型ブロックチェーンだと参加希望者はそのブロックチェーンの管理にマイニングという報酬を目的に参加できるという設計になっています。
ブロックチェーンは今までの政府や中央銀行により管理された法定通貨とは全然違うお金のあり方、価値の交換のやり方があることを示してくれました。
上で述べた通貨の価値でわかるように、人々がその価値を信じて、実際の売買に使われ、それが好循環を生み出し価値を高めていきます。
“偽造不可能な実際にやりとりに使われるデータ”はそれが使われる経済圏が広がるほど、貨幣の3大機能を増強していき、それ自体の価値を高めていきます。
このデータのことを代用貨幣として“トークン”と呼ばれています。
データとその使われた履歴、現在どれだけ使われているか自体に価値があるのであれば、そのデータの取り扱いにおいて、ブロックチェーンは今まで人類が考えた中で最適なITシステムになっているのでしょう。
そして、ブロックチェーン自体があまりに価値の交換、価値の保存に向いているシステムなので未来においては、ブロックチェーンで管理されたデータ自体が次の世代のお金のような物になり、それが広く使われると、その価値も安定してきて、価値の尺度にもなり、めでたく貨幣の3大機能がそろうのだと思います。
お金の正体が多くの人に共通して価値を認められるデータであるとすると、そのデータの取り扱いにおいてブロックチェーンほど向いているITシステムはないのでしょう。
そしてブロックチェーンが扱うデータ自体が未来においてさらにお金的な性格を持つようになるのではないかと私は予想しています。
法定通貨とトークンのこれから
銀行は長いこと経営の安定した企業でした。今では、合併を繰り返し数が減りました。
合併というのは一つの企業が消滅することです。どんなに安定していたハズの金融機関でも利益がなくなると存在できなくなります。
国と中央銀行はどうなのでしょうか?大きな財政赤字を拡大させながらではいくら法律に守られていても、どこかで続かなくなると考えるのが自然ではないでしょうか?
法定通貨は、国と中央銀行により発行されています。
それに対して、経営状態がとてもよく安定して利益を伸ばしている国際的に活躍して多くの国でビジネスを行っている巨大IT企業がブロックチェーンを使ってトークンを発行し、そのトークンをいつでも望めば法定通貨と交換してくれるとしたらどうなるでしょう?法的規制によりそのトークンをいきなり廃止されるようなリスクがない限り、持たない理由が私には思い浮かびません。
現在はFacebookのLibraがこれに近いプロジェクトになっています。
未来においてお金と上手に付き合うには、逆説的ですが、お金を貯めること、お金自体を増やすことにとらわれないこと。
それよりネットで簡単に送金してもらえるようになるお金を自分にも投げてもらえるようにすること。人の役に立つ、喜んでもらえること、自分の価値を作ることをより真剣に考えて行動することが仮にお金持ちにはなれなくても、幸福に生きるには大切なことになると私は思っています。
『お金とはなにか』をこれで終わりにして、次回から『フィンテックを味方にするために』を書いていきます!