“毎晩無料で Jack Daniels が飲める”口コミで大ヒットしたサブスクリプションサービス「Wisepass」

2019.12.25 [水]

“毎晩無料で Jack Daniels が飲める”口コミで大ヒットしたサブスクリプションサービス「Wisepass」

スマートフォンの普及に伴って、定額課金によってサービスの利用権を獲得できる「サブスクリプションサービス」の人気が高まっている。ベトナムのWisepass社も、ブロックチェーン技術を活用してお酒やコーヒー、映画チケットに高級別荘への宿泊まで利用できるサブスクリプションサービスを提供している。最初はお酒に特化し「毎晩無料で Jack Daniels が飲めるサービス」として知名度を上げた。
同社CEO・共同創設者のLam Tran(ラム トラン)氏は15年にわたってマーケティングに携わり、ヨーロッパのグーグルで働いた経験を持つ。IFA社の阿部氏がベトナムへ渡り、ヒットに至った理由や効率的なPR方法を伺った。

月額3,500円でお酒、コーヒー、映画チケットなどが無料に

Lam Tran:Wisepassは、月額75万ベトナムドン(約3,500円)で食事、お酒、コーヒーから映画のチケットなどが得られるサブスクリプションサービスを提供しています。利用の流れは、提携仮面店のカウンターに設置しているQRコードをスキャンして、商品を選択するだけ。ホーチミン、ハノイ、バンコク、マニラの4都市で展開していて、合計300か所以上で利用できます。

阿部:プランは月額75万ベトナムドン(約3,500円)のひとつだけですか?

Lam Tran:3つのプランがあります。75万ベトナムドン(約3,500円)だとコーヒーや映画のチケット、VIPな食事にコワーキングスペースの利用などの「スタンダードアイテム」が1日1つ利用できます。次に月額1,500万ベトナムドン(約69,000円)のプレミアプランがあり、「スタンダードアイテム」なら1日に2つまで、「プレミアアイテム」なら1日を1つまで利用できます。プレミアアイテムは高級なお酒や料理などです。一番高いプランは月額約43万円で、最高級のウイスキーなどが飲めます。

阿部:なるほど。QRコードを採用した理由は何ですか?

Lam Tran: 設立当初、2014〜2015年はコードシステムを利用していたのですが、番号を獲得してから店員に見せるのは手間がかかり、利便性が低いと感じました。そこでワンステップ、もしくはゼロステップで完結するようにカメラでスキャンするだけのQRコードを採用しました。

阿部:利用プロセスが面倒だと普及しませんからね。なぜこうしたサービスを作ろうと思ったのですか?

Lam Tran:とあるバーでお酒を飲んだ時に「高いな」と思い、もっとお得にお酒を飲めるようにしたいと考えたからです。月額定額制で自由にお酒が飲めたら客側はリーズナブルにお酒が頼めるし、店側も一杯だけで終わる客が減って儲かるからウィンウィンですよね。そこで2014年にWisepassを設立し、お酒のサブスクリプションサービスを始めたんです。最初に提供していたのはボトルウイスキーやジン、ラム、ウォッカ、ワインにシャンパンなど、お酒だけでした。

阿部:そこから食事やコーヒー、映画チケットも提供するようになったと。

Lam Tran:ええ、今はビジネスに貢献するサービスを包括的に取り入れていますね。ユーザーに会って話を聞いてみたら、友達や恋人ではなくビジネスパートナーと飲みに行っていることがわかり、ビジネス関係を構築するのに必要なものを幅広く提供しようと考えました。ビジネスランチやコーヒーミーティングにも対応するために、食事やコーヒーを提供しています。現在はスターバックスとも提携していますよ。ストレスケアができるようにカイロプラクターとも提携しました。

阿部:提携先がかなり豊富ですね。

Lam Tran:実際にユーザーが利用したお酒以外のサービスに関しては、全額をWisepassが払いますから、デメリットはないんです。お酒はWisepassが仲介業者になってクラブやレストランに届けているので、利益を回収できるんですね。アメリカンエクスプレスとも提携し、カードで手に入れたポイントも利用できるようにしました。知名度が高い提携先を増やすと、ロイヤリティが向上し、強く大きなプラットフォームを作れます。

ウイスキーボトルの無料提供で絶大な広告効果を発揮

阿部:PRはどのように行いましたか。

Lam Tran:フェイスブックでプロモーションビデオを流したところ、あまり効果がありませんでした。大量の広告よりも、適切な時間・場所で適切なターゲットに情報を届けることが重要なんですね。そこで、ユーザーにウイスキーボトルを毎日無料であげることにして、それを秘密にしてくれと言いました。秘密にしろと言われると、人はまわりに言いたくなるものです。「ウイスキーが毎日無料」という情報が口コミで拡散され、認知度が上がりました。ウイスキー代だけで大きな広告効果が得られたんです。スタートアップは十分なリソースがありませんから、お金をかけずに注目を集める工夫が必要ですね。聞いたこともない斬新な特典を用意したことが功を奏しました。

阿部:確かに、ウイスキーボトルが毎日無料と聞いたら驚きますね。テレビCMなどに大金を使わなくても、お酒を提供するだけで集客できると。

Lam Tran:そもそもお酒を提供するサービスですから。ウイスキーの無料配布をしてユーザー数がぐんと増えたので、今後は利用できるバーを300店舗まで増やしたいです。

阿部:フェイスブックやツイッターなどのSNSはどのように活用していますか?

Lam Tran:適切なターゲットにリーチして継続的な接点を持つマーケティングツールとして活用しています。発信しているのはインタビュー記事やビジョンです。多くの人に私たちの成長を見せ、単なるアプリではなくエコシステムを提供しているビジネスモデルを理解してもらうことでユーザー獲得につなげられます。最初は懐疑的でも、数か月かけて情報を発信し続ければファンになってくれる。そうやって時間をかけてファンになってくれた人はヘビーユーザーになりやすいです。

阿部:サービスを理解してもらうためのコツはありますか?

Lam Tran:きちんと理論立てて説明することですね。「私はお酒を飲まないからターゲットではないですね」と言っていた人に「でも、コーヒーを飲んだり映画を観たりしますよね。そうしたサービスも提供しているので、お酒を飲まない人でもターゲットになります」と説明したところ、投資家になってくれました。

(後編へ続く)

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ライター/秋カヲリ 翻訳/佐々木希 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

 

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