サッカー×TV×ブロックチェーン…フォロワー1万人超の「KardiaChain」が作るエコシステム

2019.12.23 [月]

サッカー×TV×ブロックチェーン…フォロワー1万人超の「KardiaChain」が作るエコシステム

幅広い分野への応用が期待されているブロックチェーン。経済の仕組みを根底から変える可能性すら秘めているブロックチェーン技術を使い、様々な業態を結びつけるビジネスエコシステムの構築を目指しているのが、ベトナムのKardiaChain社だ。
同社のCEOであるHarry Tri Pham(ハリー トリ ファム)氏は、応用物理学を専攻し、ロンドンでマネジメントを学んでプログラミングの会社を立ち上げたという、まさに「数字のプロフェッショナル」。今回、そんなHarry Tri Pham とIFA社の大坂氏が対談。Harry Tri Pham氏にKardiaChainの目指すエコシステムやブロックチェーンを普及させるための秘策、今後の野望について伺った。

パブリック型とプライベート型、2つのタイプを使い分けられるブロックチェーン

大坂:まず、KardiaChainの事業内容について教えてください。

Harry Tri Pham:パブリックなブロックチェーンのプラットフォームを築き、様々な工業やサービスをつなげて強力なエコシステムを構築できるよう技術開発や支援を行っています。ベトナムがスタート地点ですが、ブロックチェーンを多くの人に届けられるよう様々な活動をしておりまして、将来的には東南アジア、そして世界中で展開していければと考えていますね。

大坂:具体的には、どのようなブロックチェーン技術をお持ちなのでしょうか?

Harry Tri Pham:前提として、ブロックチェーンにはパブリック型(管理者が存在せず、誰でもネットワークに参加可能で、取引の承認は参加者によって行われる)やプライベート型(主に企業が管理者となり、許可されたユーザーのみネットワークに参加できる)などがあります。パブリック型のブロックチェーンを使うと、高コストな上、センシティブなデータをそのネットワークに置くことに関して不安感があります。一方、プライベート型のブロックチェーンでは、透明性がどこまで強調されるか分からない。

大坂: KardiaChainのブロックチェーンは異なるということですね。

Harry Tri Pham:はい。弊社のブロックチェーンでは、両タイプのブロックチェーンを切り替えて使うことができます。センシティブなデータはプライベート型の方に置き、透明性が求められるデータについてはパブリック型の方に置くという使い分けが可能です。現在のベトナムでは4.0というブロックチェーンを始める新しい技術が注目され、色々な組織や企業が非常に熱心にその技術を活用したがっています。同時にKardiaChainと組みたがる企業が増えていて、実際にいくつかの企業や機関と連携して研究などを進めています。

様々なプロバイダーにサービスを展開してもらえるインフラ作りを

大坂:ブロックチェーン技術を用いたエコシステムは、様々な業種や業態で活用できそうですね。

Harry Tri Pham: はい。ひとつのインフラを作り上げ、多種多様なサービスプロバイダーにアクセスしてサービスを展開してもらおうという発想です。最終的なエンドユーザーは、自身では気づかないうちにブロックチェーンを利用しているようなイメージになりますね。

大坂:なるほど。ブロックチェーンの活用ということになると、必ずトークンの話題が出てくるかと思うのですが、Harry Tri Phamさんご自身はトークンについてどう考えておられますか?

Harry Tri Pham:トークンは「使用券」のようなものだととらえています。店で使う、クーポンのようなものですね。実は今のベトナムでは、トークンや仮想通貨についての法律について、具体的なものはまだ整備されていません。1〜2年前にベトナム南部の裁判所で、裁判官が「ビットコインは仮想資産だ」ということを認めたくらいですね。弊社には政府出身の顧問が多く在籍しているため、彼らとともに政府に対して色々な意見を提案しておりまして、トークンに関しても「このような権利が譲渡できる」などといったアプローチで提案していきたいです。

ブロックチェーンの普及には、SNSだけでなくオフラインでのコミュニティも重要

大坂:KardiaChainを普及させるにあたり、マーケティングはどのように進めておられますか?

Harry Tri Pham:会社にマーケティングのチームがあり、主にベトナムと韓国のマーケットをターゲットとしています。ベトナムでは、仮想通貨を購入しているトレーダーのコミュニティに接したり、カンファレンスやイベントを開いてブロックチェーンについて説明したりしています。

大坂:韓国ではどのような状況ですか?

Harry Tri Pham:韓国では、これまでエージェンシーを通して働きかけてきたのですが、最近は、ソウルに専門のチームを3人、常駐させています。マーケティングの成果か、韓国のとあるファンドが私たちの活動に対して支援してくれるようになりましたね。

大坂:エコシステムを目指すのであれば、ある程度の規模のコミュニティが必要かと思います。SNSなどを通じて、KardiaChainのコミュニティを作ったりしておられますか?

Harry Tri Pham:現在、SNSのフォロワーは1万人以上いるのですが、コミュニティとして考えているのはSNSのフォロワーやメンバーだけではありません。こういったブロックチェーン技術に興味を持っている企業オーナーの方のネットワークがあり、そうしたサポーターも非常に大事にしています。他にも、Kardia Saigon FCというサッカークラブがありまして、トークンを渡すかわりにKardiaChainの広報活動をしてもらっています。

大坂:オンラインだけでなく、オフラインでのコミュニティにも力を入れておられるのですね。

Harry Tri Pham:さらに、ベトナムの科学技術省の官僚と面談をすることもあります。彼らも、こうしたブロックチェーン技術に関わる活動を強化しながら、今後の政府の取り組みに向けて準備をしているのです。

大坂:最後に、今後の長期的なビジョンを教えていただけますか?

Harry Tri Pham:私の大きな目標のひとつは、ブロックチェーンの技術をベトナムの全ての人に浸透させ、使ってもらうことです。

たとえば、今考えているのは、サッカーとTVメディアのブロックチェーンによる結合ですね。サッカーに関するデータを自動化し、膨大なユーザーのデータを活用してTVで試合の結果予測ゲームを楽しめるようにしたり、サッカー選手へトークンで寄付できるようにしたり…。まだこれはあくまで構想の段階ですが、全く違う分野をブロックチェーンでつなげ、新しいチャレンジをしていきたいです。

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ライター/小泉ちはる 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

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