通貨が公共財となっているか?

2019.12.19 [木]

お金とは何か#18
通貨が公共財となっているか?

通貨が公共財となっているか?

前の記事に続きLibraのホワイトぺーパーにLibraが生み出す機会として6件列挙されているものの続きを解説します。4件まで前記事で解説しましたので、5件目から続きを考えていきます。

  • グローバル通貨と金融インフラは公共財としてデザインされ統治されるべきである、と私たちは考えます。 

文章としてはシンプルです。その意味するところを想像してみます。
既存のグローバル通貨と金融インフラが公共財としてデザインされていないことを逆に指摘しているのではないでしょうか。それによって、その統治も良好な状態にはない。

私たちがそれを根本から、デザインそのものから改善するということなのでしょう。これも直接的に書くことでの既存権力からの反発を弱めたかったから、このような書き方になっているのかもしれません。

グローバル通貨は国際的な決済が世界で広くできる通貨のことです。ですから、現時点で一番のグローバル通貨は基軸通貨である米ドルになります。米ドルはアメリカの通貨なのでアメリカの利益を優先して発行されている通貨です。

アメリカの景気に応じて金利や金融緩和が決定されます。米ドルを使っている他国の事情はあまり考慮されません。今は真の意味で、公共財としてデザインされたグローバル通貨はないので、擬似的に米ドルがグローバル通貨として使われているに過ぎません。

アメリカの強さは米ドルと軍事力の強さによって支えられているところが大きいのです。アメリカの政治家も当然Libraについて強い関心、あるいは反発心を持っていることが議会証言からもわかります。

ただ、2019年9月24日での情報だと、Libraは準備資産として米ドルを50%組み入れると言われているので、その通り実行されれば、米ドルの地位はまだある程度保存されるのでしょう。

中国人民元は現時点で組み入れられないとなっています。

また現在の金融インフラは、金融機関から提供されていますが、ブロックチェーンを活用できるIT企業から提供されたら手数料だけとっても劇的に下げることができるでしょう。公共財としてはそのほうが望ましいことになります。それを目指すのは素晴らしいことです。既存の権力からの反発は強いでしょうが、もう宣言してしまっています。

実は公共財という言葉は経済用語でその定義はかなり難しいのですが、ここでは、具体例として無料放送・空気・国防・知識を思い浮かべてイメージして下さい。

金融インフラを利用して今まで金融機関は大きな利益を得てきました。そのこと自体が人類全体の利益のためには望ましいことではなかったのかもしれません。金融インフラを公共財としてデザインするとは、それを終わらせるとも読み取れるのではないでしょうか?

金融インフラと金融サービスの境界をどこと考えるかにもよりますが。

  • 私たちには全体として、金融包摂を推進し、倫理的な行為者を支援し、エコシステムを絶え間なく擁護する 責任がある、と私たちは考えます。

この一文も興味深いことを言っているので、部分ごとに考えていきます。

全体として、金融包摂を推進するとは?

世界銀行グループの研究機関CGAP(Consultative Group to Assist the Poor)では、金融サービスへのアクセスの提供によって貧困層の生活を改善することに取り組んでいます。そこでは金融包摂を「すべての人々が、経済活動のチャンスを捉えるため、また経済的に不安定な状況を軽減するために必要とされる金融サービスにアクセスでき、またそれを利用できる状況」と定義しています。

Libraが世界にまだ17億人いる銀行口座も持てない人を力づけるとしている目的と、金融包摂は一致しています。

何故この一分の中で“全体として”と一言入れているのでしょう?それは一例として考えれば、ここで金融包摂を説明している世界銀行自体が個人が口座を作れる銀行ではなく、主に発展途上国の金融機関への融資を主な仕事としている金融機関であること。皮肉にも世界銀行は“全体として”具体的に個人を金融包摂に取り込んであげる活動をしているのかわかりにくいのです。だから現在も銀行口座を持たない多くの人がいるのでしょう。それを“全体として”という一言に込めて具体的に改善する活動を行っていくと表現しているのかもしれません。

倫理的な行為者を支援するとは?

アンチマネーロンダリングという、金融システムを使って悪事を行おうとしている人を排除するための言葉があります。アンチマネーロンダリングはテロリストの資金源を絶つ等の目的で確かに大切です。ただそのために規制を高めるだけでは、先ほどの金融包摂には逆効果になりかねません。

世界には、倫理的な行為者を支援する金融システムがまだまだ足りないので、それを支援するというポジティブな側面をもっと進めようという考えを述べているのはアンチマネーロンダリングに対してのカウンターパンチになっていると思います。

考えてみるとアンチマネーロンダリングを主張しているのは主に既存の権力層なのです。そちら側の意見だけでは偏ります。倫理的に前向きな行為をする人を支援するその視点が今の権力層に足りないことをズバリ言い当てているように見えます。

エコシステムを絶え間なく擁護する 責任があるとは?

これはLibraが作り出すエコシステムを指しているのでしょう。だとすると、一つ前の記事で解説したように、分散型ガバナンスの未来を指向していることになりますから、中央集権でなく、Libraによりできたエコシステム全体を管理でなく擁護する立場で進めていく責任があるという表現を使っているのかと思います。

Libraが生み出す機会のまとめ

3記事を使ってLibraが生み出す機会としてホワイトぺーパーに書かれている6個の文を解説してきました。文としてはシンプルなものですが、その意味するところは、

今のお金と金融システムは、すっかり時代遅れとなっていると言い切っているに等しいと思います。

そしてそれはブロックチェーン技術が広まりだし、IT技術も進歩し続けている現代ではおそらく真実なのでしょう。

今多くの人は無料で動画を見て楽しんでいます。それに対して、動画より遙かに情報量が少ないはずのITシステムを使った送金等の金融手続きには一回ごとに手数料を取られています。動画に比較してお金のデータは今まで信頼のおける第三者機関が必要でしたが、今やそれもブロックチェーンを活用することで必ずしも必要なくなってきました。

Libraが生み出せると主張する機会は、現代において必要で、技術的に実現可能なことなのでしょう。それが当面ぶち当たるだろう問題は、既存の権力層からの抵抗と、Libraを推進する団体が真にその理想を忘れずに仕事を着々と進めていけるかにかかっているのではないだろうかと私は思っています。

次回から、Libraからしばらく離れて、これからのお金の形について述べていきます。

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