2019.12.27 [金]

金融領域を皮切りにブロックチェーンのビジネスインフラのグローバル展開を目指す

「社会課題ファースト」の信念を強く持ち、地に足を付けた経営で金融業界とブロックチェーン業界の発展に貢献しているのが株式会社 Aerial Partners(https://www.aerial-p.com/)(以下、Aerial Partners)だ。

代表取締役の沼澤健人氏は、大学院在学中に公認会計士試験に合格したエリート経営者。しかし、彼の第一印象は、ホスピタリティあふれる好青年。社会全体が抱える課題に対して、一歩一歩事細かに解決していこうという信念にあふれている。彼が考えるブロックチェーンビジネスの将来像はどのようなものだろうか。

「もともとTwitter上で仮想通貨取引に関する税制の質問等を受けていましたが、事業化したほうがより多くの課題解決ができると思い、Aerial Partnersを創業しました。」(沼澤氏)

Aerial Partnersでは、2019年11月現在だと「Gtax(ジータックス)」という確定申告サポートソフトや、「Guardian(ガーディアン)」という専門家による確定申告サービスを提供している。

ブロックチェーン技術の社会実装例が増える2020年に海外進出を志しビジネスを設計

Aerial Partnersが掲げる会社のミッションは「世界中の誰もがイノベーションを起こすことのできる社会を創る」こと。ブロックチェーンビジネスに限らず、事業を行なう上で必要な「IT技術」と「会計・税務」の2つの強みを併せ持つ。

2017年の暗号資産取引ブームが起こった時に始めた暗号資産の確定申告をサポートするソリューションは、同社の事業ポートフォリオとしては序の口にすぎない。秘められた能力は無限大といっても過言ではない。

なぜならばAerial Partnersは社会が抱える課題を迅速に解決しようと「テクノロジー×専門性」をキーワードにチームを作っているからだ。

IT技術をベースに、会計・税務、ファイナンス等に精通したプロフェッショナル人材がそろっていると、技術者目線だけではなく、利用者目線でのソリューションの企画・設計が行なえる。ベースにある技術により、企画・設計したソリューションのシステム実装が早く正確にできる。その結果、社会課題解決が迅速に行なえるというわけだ。

「ブロックチェーン関連のスタートアップは淘汰が始まっている一方、国内外の実需として、エンタープライズ領域を中心にブロックチェーン技術を活用する大企業が増え始めています。2020年はまさにその社会実装事例が世に出始める年。海外進出も視野に入れて、エンタープライズ領域でのブロックチェーン活用に必要なインフラを提供していきます」(沼澤氏)

Aerial Partnersが今後進出を考えているのは、単なる確定申告のサポート領域だけではない。ブロックチェーンのビジネスインフラ提供の領域だ。仮想通貨交換業者(いわゆる仮想通貨取引所)やブロックチェーンゲーム事業者等を中心に、トランザクション管理や管理会計システム、財務会計システムといったビジネスインフラの提供を行なっている。

ブロックチェーンのインフラ提供は広く「BaaS」(Blockchain as a Serviceの略称)と言われている。

マイクロソフトが提供するAzureやAmazonが提供するAWSといったクラウド上でのシステム基盤構築サービスのように、ブロックチェーンのインフラを利用できるサービスと考えると分かりやすい。

Aerial Partnersの場合には、ITサービスと会計関係の両方の支援を提供できるので、上述のトランザクションの管理から管理会計プロセスの構築、財務会計プロセスの構築といったビジネスインフラをワンストップで提供することを通じて、利用する企業は万全の態勢でサービス開発に集中できるというわけだ。

ブロックチェーンのインフラ提供で必要な3つの要素とは?

ITと会計の両方に強みがあるのはよくわかったが、「BaaS」に必要な要素とは何なのだろうか?

「ノードの運用をはじめ、ブロックチェーン上のトランザクションの管理に関する必要な機能を提供します。また、大手企業でのブロックチェーン技術の利用を想定すると、既存の管理会計プロセス、財務会計プロセスにどう統合していくかという観点も欠かせません」(沼澤氏)

企業の会計処理は、管理会計→財務会計→税務会計の順に進んでいく。

■参考

・管理会計:企業の内部で経営の状況を報告するための会計

・財務会計:投資家や金融機関などの外部に経営の状況を報告するための会計

・税務会計:法人税などを納税するために企業の利益や資産を報告するための会計

ブロックチェーンに記録するデータは基本的に、「取引」に関連するものだ。取引はお金が動くビジネス活動なので会計帳簿への記帳が必要になる。せっかくブロックチェーンを活用したソリューションを提供できたとしても、会計処理が滞ってしまっては事業全体が止まってしまいかねない。

したがってブロックチェーンに記録された取引データをいかに効率よく会計データに変換していくか。また過不足なく迅速に記録するかが肝となっているのだ。

沼澤氏の言う要素があれば、企業はITソリューションの実装から、税務申告までをワンストップで実現できることになる。そのためのITと会計の両方の強みというわけだ。

詳しく説明しよう。ノード管理は、ブロックチェーンネットワークを構成するシステムを管理するもので、トランザクション管理は、会計とブロックチェーンとをつなぐもの。そして会計・税務は、会計処理の一連の流れを支援する会計の領域。会計処理だと取引先が過不足なく記録されているか。IT目線だと不審な接続先がないか。ネットワークが適切に運用されているか。そういった観点での管理が必要な要素である。

金融領域を皮切りに業界横断でブロックチェーン技術の浸透に貢献する

ITと会計・税務の両方の強みがあるならば、ビジネスを行なうために必要な基盤が「All-In-One」ソリューションとして提供できる。

仮想通貨取引に代表されるように、金融領域で先行しているブロックチェーン。そこからどのように他業界に派生させていくのか。また他業界で作られたブロックチェーンがどのように金融領域に接続してくるのか。

そんな金融と他業界とをつなぐ架け橋としての役割。そして課題解決を爆速かつ事細かに行えるホスピタリティこそ、ブロックチェーン技術が社会に浸透するために必要なことだろう。

沼澤健人氏

株式会社Aerial Partners 代表取締役。仮想通貨取引計算サポートと税理士紹介を行う『Guardian』、仮想通貨取引計算ツールである『G-tax』を提供。Twitterの仮想通貨アカウント「二匹目のヒヨコ(@2nd_chick)」中の人としてブロックチェーン業界の会計・税務領域を中心に啓蒙活動を行っている。一般社団法人日本仮想通貨ビジネス協会(JCBA) 税制検討部会長、一般社団法人 日本仮想通貨税務協会(JCTA)理事
取材・文/久我吉史 撮影/篠田麦也

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