移動するだけで報酬を得られるDOVUプラットフォーム。BMWや日産とも提携する企業力

2019.12.10 [火]

移動するだけで報酬を得られるDOVUプラットフォーム。BMWや日産とも提携する企業力

ロンドンのDOVU社は、多様化し複雑化する交通手段の中から最適な交通手段を提案するサービスを開発し、プラットフォームを利用して移動したユーザーがトークンによって利益を得られるビジネスモデルを構築した。BMW、ルノー、日産、三菱などの自動車会社とも提携し、交通業界で注目を集めている。
同社の創業者であり弁護士のKrasina Mileva(クラシナ ミレヴァ)氏は、外部の投資家や外部パートナーに極力頼らずサービスを立ち上げた。また、ブロックチェーンはあくまでも技術であり、それ自体がビジネスにはならないと強調する。IFA社の桂城漢大氏が詳しく伺った。

外部のサポーターやメンバーは不要

桂城:2年前に行ったICOはいかがでしたか?

Krasina:規制が作られだした時期で、とても大変でした。私は法律の専門家としての立場からKYC(口座開設時の身元確認)をすべきだと言っても、他のチームメンバーがなかなか賛同しなかったりと、チーム内でさまざまな議論を交わしましたね。KYCの終わりの頃には、信じられない金額をふっかけてくるコンサルタントや、支援しようと資金を持ってくる人もいました。

桂城:投資目的の人があらわれたのですね。お金は受け取りましたか?

Krasina:いえ、ありがたいと思いつつ断りました。周りから干渉されずに自分たちでプロジェクトを運営したかったからです。ICOではジブラルタルをベースとしたトークンセールを行う最大級のプラットフォーム「トークンマーケット」と一緒に仕事ができたことがプラスに働きました。信頼できるパートナーとつながりたいと考えていたので。

桂城:その後は順調でしたか?

Krasina:いえ、アクシデントもありました。特に印象に残っているのが、バルセロナでICOを行おうとしたときに起きたカタルーニャの暴動です。外ではバリケードが張り巡らされ、まるで映画のようでした。そんな最中にICOを行ったのですが、無事たくさんの人が参加してくれたのです。何が起こるかわからない状態でしたが、決行してよかったと思いました。ただ、気苦労で白髪が増えてしまって……二度とこんなことはしたくないですね。

桂城:それは壮絶な体験ですね。今後、ブロックチェーン上で発行されるトークン化された証券であるSTOを導入する予定はありますか?

Krasina:はい。政府の厳しい審査を通さなければならないSTOはICOより信頼度が高く、投資家の視点で考えれば間違いなくICOより優れています。また、ICOだと投資してもビジネスに対して何の権限も持てませんが、STOなら議決権を持つシェアホルダーになれる点も魅力でしょう。

桂城:イギリス国内と海外、どちらでやろうとしているのですか?

Krasina:将来的には国内外両方で行う予定です。DOVUはグローバル展開しており、世界26カ国にユーザーがいます。ですから、サポーターやシェアホルダーが他国でのビジネス展開をサポートしてくれるでしょう。

桂城:社員も世界中にいるのでしょうか。

Krasina:私はロンドンが拠点ですが、残りのメンバーはここから1時間半ほどの距離にあるブリストルが拠点で、インドには技術者がいます。DOVUは情熱をもってアイデアを形にしてくれるメンバーを求めているので、アウトソーシングは行なっていません。

桂城:アウトソーシングはとても難しいですよね。全員にいちいち詳しく説明しなければいけないし、外部メンバーは言われたことしかやりません。イノベーションは生まれないでしょう。

Krasina:外部メンバーには主導権がありませんからね。DOVUはどんな小さなことでもチーム内で議論して、それぞれが自分の意見を言える環境を作っています。ときには反対意見も必要ですから。また、今後2年間はさまざまな国からの新しいメンバーを迎える予定です。トークンセールは各国からの問い合わせに24時間対応しなくてはならず、イギリスメンバーだけでの対応は難しいので。

桂城:現在のメンバーはイギリス人だけですか?

Krasina:いえ、現在のチームも多国籍です。私はブルガリア人ですし、ギリシャ人とウェールズ出身のメンバーが1人ずつ、イギリス人とインド人が2人ずついて、ダイバーシティを体現しています。

ブロックチェーンは目的ではなく手段である

桂城:日本はコインチェック社の流出事件が起こってから、仮想通貨やブロックチェーンに対して不信感を持っている人が多いです。そもそも仮想通貨とブロックチェーンは違う存在なのに、似た業界で働いている人でさえブロックチェーンにもネガティブな偏見を持っていると感じます。メディアを通してこの状況を変えていきたいです。

Krasina:日本だけではなく、世界的にそうした傾向がありますね。ブロックチェーンをよく知らない人たちは、ブロックチェーンと聞くと「あぁ、ビットコインね」と言います。ロンドンでもブロックチェーンの基礎知識を伝える必要があります。

桂城:ブロックチェーン業界はまだまだ発展途上ですね。課題が山積みです。

Krasina:ええ、女性の割合が非常に低いのも残念です。2年前にマイアミで5,000人が集まるブロックチェーンのカンファレンスがあったのですが、女性はわずか5%ほどしかいませんでした。きちんとブロックチェーンの概念や構造を説明できる人も少なく、金と銀の所有権となるトークンを扱っている人ばかりでした。

桂城:アセットトークンを扱っていたのですね。要は投機目的、単なるお金儲けのために利用していると。

Krasina:ええ。当時アセットトークンのプロジェクトを推進していた人と再会して「最近どんなことをしているの?」と聞いたら「金と銀のプロジェクトを再ブランディングして、トークンセールを行なっている」と言っていました。まったく同じコンセプトでお金を稼ごうとしているのです。彼はそれを誇りにすら思っていました。これでは業界は良くなりませんよ。

桂城:ブロックチェーンのコンセプトや哲学を理解している人は少ないですよね。日本でもそういう人はいますし、ブロックチェーン業界ではよくあることですよね。

Krasina:これではブロックチェーンイベントを開いても金儲け目的の人ばかり集まるので、今は交通サービス関連のイベントにしか出ていません。ブロックチェーンはあくまでも技術であってビジネスの解決策にはならないんです。これから業界に入ってくる方には、ブロックチェーン技術を社会の発展のためにどう使うかに着目してほしいですね。

AIre VOICEではブロックチェーンの最新ニュースはもちろん、さまざまなバックグラウンドを持った方へのインタビュー・コラムを掲載しています。ぜひご覧ください。

ライター/秋カヲリ 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

 

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