21世紀のテクノロジーで金融業界が変わる。大企業にも勝てるビジネスチャンスが眠る場所

2019.12.06 [金]

21世紀のテクノロジーで金融業界が変わる。大企業にも勝てるビジネスチャンスが眠る場所

金融サービスは40年間進化しなかった―。SETL社の創設者であるPeter Randall氏はこう述べた。IT技術が発展し、古い仕組みを維持していた金融業界にもフィンテック企業が多く誕生し、変化の時を迎えている。
SETL社はイギリスのブロックチェーン業界におけるリーダー的存在だ。独自のブロックチェーンを開発し、リアルタイムの金融決済を可能にするサービスを提供している。
今回、IFA社の桂城漢大氏が同社の代表であるPeter Randall(ピーター ランドール)氏と対談。サービスの開発秘話と、スタートアップ企業や中小企業がビジネスを成功させる方法について語った。

ブロックチェーンが21世紀のテクノロジーを生み出す

Peter:SETLを創設する前は、ロンドンの証券会社で責任者として働いていました。20年ほど日本や香港、シンガポールなどのアジアでプロトコルの責任者として働いた経験もあります。

桂城:だから日本語が話せるのですね。ブロックチェーンを活用しようと思ったきっかけについて、簡単にご説明いただけますか?

Peter:会社を立ち上げたのは、ブロックチェーンで金融サービスを変えらえるのではと可能性を感じたからです。金融サービスは約40年間ほとんど発展しておらず、変化がありませんでした。銀行を筆頭とした金融サービスの多くは、経営陣や取引システム、アルゴリズム取引によって運営されていて、時代遅れの取引が続いている状態だったんです。そこで私たちは21世紀のテクノロジーを生み出したいと考えました。

21世紀のテクノロジーで金融業界が変わる。大企業にも勝てるビジネスチャンスが眠る場所

桂城:なるほど。金融サービスにブロックチェーンを導入することで、21世紀のテクノロジーを実現しようと考えたわけですね。

Peter:ええ。金融関連の取引情報や送受信者のやり取りのセキュリティを強化するサービスを開発しました。ブロックチェーンにより、リアルタイムの決済が可能になります。これまではサービスごとに大規模なシステム開発が必要でしたが、保険から貿易金融までさまざまな分野でSETLを利用でき、面倒なシステム開発は不要になります。

桂城:金融業界以外でも活用できると。たとえばどんな活用事例がありますか?

Peter:請求により随時解約ができるミューチュアルファンドの所有権管理や発行、記録などは管理会社ごとに別で行われていましたが、一元管理できるようになります。ほかにも各企業の未公開株の登録簿を管理し、所有権の変更などの記録を完全に残すことも可能です。資産管理においては、元帳をブロックチェーンに登録し、リアルタイムの更新を行える点がとても便利です。改ざんできないのもセキュリティを強化するポイントですね。

桂城:使用しているブロックチェーンは自社開発したものでしょうか。

Peter:そうです。色々なチェーンを試したのですが、私たちが開発したい金融サービスに適したチェーンはありませんでした。金融サービスを改革するには、取引の処理スピード向上が要です。そこで1秒間に3万の取引を可能にするチェーンを開発しました。

桂城:このチェーンはオープンソースですか?

Peter:違います。金融サービスではサーバーセキュリティ対策が必須なので、オープンソースにはしません。許可制にすることで、オペレーションがとても早くなりましたし、プライバシーや速度維持でもプラスに働いています。私たちは金融業界出身なので、多くの金融知識と少しのテクノロジーの知識があり、戦略的に開発を進められました。

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桂城:自社のブロックチェーンを開発するのにいくらかかりましたか?

Peter:そこまでお金はかかってないですよ。18カ月で20万ポンドくらいでしょうか。30年ものキャリアを持つメンバーが5名ほどいたので、スムーズでした。

桂城:チームにはどんな人々が在籍しているのですか。

Peter:現在は約50人のチームですが、創設メンバーはみんな金融サービスに関わった経歴があり、資産運用やトレード、金融市場などに精通しています。

スタートアップや中小企業がビジネスチャンスをつかむには

桂城:仮想通貨に関する規制についてはどうお考えですか?

Peter:仮想通貨には規制がつきものですが、技術に対して規制しているのではなく、それを人が使用することに対して規制していることが大半です。銀行は記録を残さなければいけませんから、規制によって記録をトラッキングする必要があります。記録が残ればいいので、手書きでもデータベースでも何でもよく、手段まで指定する必要はありません。ロンドンはこうした目的意識が明確で手段を限定しておらず、自由度が高いのでビジネスに適しています。

桂城:ロンドンはブロックチェーンビジネスの先進地ですね。日本についてはどう思いますか。

Peter:日本ではイーサリアムが優勢ですよね。私は日本で働いていたことがあるので、日本人の考え方についてある程度理解しています。日本は大手企業の動きに中小企業も従う傾向がありますよね。もし野村や三菱が新しいビジネスを受け入れたら、他の会社も受け入れる。また、ビジネス創設期に失敗すると、それ以降は受け入れられにくくなります。

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桂城:仮想通貨が受け入れられにくくなったのは、やはりコインチェックの流出事件の影響だと思います。イメージが一気に悪くなりましたから。

Peter:その一方でデジタル決済は発展していると感じます。日本だけでなく、韓国でも普及していますね。

桂城:仮想通貨、ブロックチェーン分野も発展させていきたいです。少数精鋭でもビジネスを成功させるためには、貴社のように豊富な経験を持つ人たちをトップに集めたチーム作りが必要だと感じます。

Peter:問題が起こった時は指導者が必要ですからね。

桂城:良い指導者がいれば多くの従業員は必要ありません。スタートアップ企業や中小企業でもじゅうぶんに勝負できそうですね。

Peter:その通りです。金融のいろはを学ぶではなく、テクノロジーをどのように適用させるか学ぶといいでしょう。テクノロジーを社会にうまく実装できれば、大きなビジネスチャンスをつかめます。

AIre VOICEではブロックチェーンの最新ニュースはもちろん、さまざまなバックグラウンドを持った方へのインタビュー・コラムを掲載しています。ぜひご覧ください。

ライター/秋カヲリ 翻訳/佐々木希 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

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