日本円(法定通貨)を信じ込まされるまで

2019.12.05 [木]

お金とは何か#11
日本円(法定通貨)を信じ込まされるまで

日本円(法定通貨)を信じ込まされるまで

日本人なら日本円を何の疑いもなく信用しています。令和元年の現時点でも日本人のほぼ全員が暗号資産(仮想通貨)の中では一番実績のあるビットコインより日本円を信用しています。ところが、通貨不安のある国で金融危機が起きると、自国の法定通貨を売ってビットコインを買っているらしい事例も出てきてます。(例 「2013年3月から4月にかけてビットコインに起こった700%の高騰は、金融大国キプロスの危機によって引き起こされた」BTCNEWS.JPより)

日本円が直近の70年間通貨としてどれだけ安定して使われてきたとしても、これが今後も未来永劫続くことはありません。なぜなら、貨幣の歴史をみれば、全ての貨幣に必ず寿命があることがわかるからです。

日本で生活していると日本円を無邪気に信じるのは、日本で売買を行う場合は全部日本円でやっていること、それを日本に住み続けている限り一生を通じて、行ってきたからです。

それが当たり前すぎてそれに疑問も持たなくなっているからに過ぎません。

法定通貨は国家によって強制通用力という決済にその通貨を強制的に使う力を保障されています。(強制通用力を認められた貨幣による決済は、額面で表示された価値の限度で最終的な決済と認められ、受け取る相手側はこれを拒否できないことが国家により保証されている。酒井良清著 『金融システム 第3版』 有斐閣アルマ、2006年、87-88頁より引用)

そのシステムの中で経済生活を送っているからそれを当たり前と受けとめているということなのです。

またこのシステムに自然に組み込まれてくる経験をしているものなのです。私の場合は例えば以下のような経験があります。

私の子供時代にお金とは特別な物なのだなと思った経験です。

私が小学校1年生のとき(1970年)交番のお巡りさんとの経験です。当時、小学校の同級生の間で不思議な話が語られていました。

「落ちている1円玉を拾って、交番に持って行くと、お巡りさんが、『落とし物を持ってきてくれて正直で偉いぞ』と褒めてくれた!そして、ご褒美に10円玉をくれた!」

この話には、興奮を持って同級生の間に広がっていきました。子供が夢中になれたのは、正直なことをしてお巡りさんに褒めてもらえることと、生まれて初めて自分の行動でお金を稼ぐことがセットになっていたからです。

このアルミニウムでできた一円玉に絶対的で神聖な価値があるということを6歳だった僕たちに信じ込ませる出来事でした。

金属から作られた硬貨、紙から作られた紙幣、それらは特別な価値をもつことを、子供の頃から自然に意識にすり込まれていくのです。

お金を物よりも大切だと思うきっかけ

子供の頃は正月にお年玉をもらうのが楽しみだった経験のある人は多いと思います。

どんな物のプレゼントより、お金のプレゼントであるお年玉の方が嬉しいのはなぜだったのでしょう?

それは、お金でもらった方が、自分が好きなことに使えること。それとその時点から物よりも将来に好きな物を買える権利としてのお金を保有すること自体が嬉しいと感じ始めているからだと思うのです。

そして、この気持ちは大人になるとさらに肥大して、欲しい物はないまま、お金をただ集めるのが嬉しいという欲望のきっかけになっているのではないでしょうか?

暗号資産(仮想通貨)と法定通貨の比較

暗号資産(仮想通貨)には法定通貨にある強制通用力が国家により保証されていません。売買に使える場所はまだまだ限られています。

急性通用力どころか、逆に売買を制限されている。暗号資産(仮想通貨)取引所でしか売買できない。しかも認定された限られた種類の暗号資産(仮想通貨)しか日本国内では売買できない。

なぜそこまで制限されているのかというと、暗号資産(仮想通貨)を悪用した詐欺の恐れがあるので、消費者を保護するためという説明を読むことがあります。

確かに、そうでしょうが、それだけでしょうか?私はこの分野の様々な方にお会いして分かったのは、詐欺的なことをする人と、世の中をより良いものにしようという理想に燃えている人と、両極端の人が同時にいる分野だということなのです。私が会った人達に限れば、世の中をより良くしたい。日本をもっと元気にしたいと思っている人が圧倒的に多かったのです!

ここで推測できることの一つとして、暗号資産(仮想通貨)の売買が制限されているのは、法定通貨の存在価値を脅かす潜在能力をもっているから、敢えて制限されているという側面もあるのではないか?ということです。

今は圧倒的に法定通貨のほうが強制通用力により使える場所が多い、ところが、よく考えてみると

“国は、暗号資産(仮想通貨)に対してだけ、法定通貨の強制通用力を敢えて制限している”とも言えるのです。

例えば、麻薬や覚せい剤についての取り締まりと比較すると暗号資産(仮想通貨)の売買について本人責任とせずにここまで取り締まる合理性はないように思えます。

法定通貨は、中央銀行がコントロールしているので、一般的には信用され安心感が高いイメージがあります。ところが、そうともいいきれない事実があります。通貨危機という事件が恒例行事のように起こること。また、日本やアメリカのように通貨が長いこと安定している国ですらリーマンショック後に金融緩和により通貨流通量(マネタリーベース)を5倍以上にしていること(日銀HPのデータより)

強制通用力により、日常生活においていつも使っていることから、法定通貨には無邪気な安心感が積みあがっていますが、運用を中央銀行の賢い人がやっているから今後も絶対安心だとは限りません。

一昔前には、人工知能が人間に勝てるとは思えなかった人がたくさんいました。それが今では将棋や囲碁は、人間のトップですら全く敵わなくなっています。

暗号資産(仮想通貨)をあらかじめ決められた運用ルールやAIとブロックチェーンを連動させて最適化されたシステムで運用されたら、法定通貨より将来性のある活用しやすい通貨に発展する可能性は否定できないと思うのです。

まとめ

日本円(法定通貨)は現在信用され日本国内の決済全てに使われている。だから信用されているが、リーマンショック後流通量(マネタリーベース)は5倍以上となり、希少価値は大幅に希釈している。

暗号資産(仮想通貨)は詐欺行為への注意は今後も必要だが、冷静にその可能性と成長をみて対応するだけの価値がある。

次回はFacebookが計画している通貨Libraについて書きます。

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