ブロックチェーンでSNSが変わる。ユーザーのコンテンツと交流で報酬が生まれるSNS「Lit」

2019.11.26 [火]

ブロックチェーンでSNSが変わる。ユーザーのコンテンツと交流で報酬が生まれるSNS「Lit」

ブロックチェーンによってSNSにも変化が生まれている。「ソーシャルマイニング」により、プラットフォームだけではなく、コンテンツを制作したユーザーに価値が還元される分散型ソーシャルメディアプラットフォームが誕生したのだ。
台湾のMithril社が提供する分散型ソーシャルメディアプラットフォーム「Lit」もそのひとつだ。Lit上でコンテンツ制作や交流を行ったユーザーにトークンが付与される。同社のプロダクトマネージャーWilson Huang(ウィルソン ファン)氏とIFA社の阿部氏が対談し、ソーシャルマイニングによってSNSにどんな変化が生まれるのか、Litの仕組みを踏まえて伺った。

良質なコンテンツ制作と交流を促すSNSの誕生

Wilson Huang:私は大学時代にブロックチェーン関連の研究をし、論文もコンセンサスの内容について書きました。卒業後はヤフーでエンジニアとして働き、大学の先輩から誘われてブロックチェーンに携わる仕事をしようとMithrilの創業メンバーとなり、プロダクトマネージャーとしてホワイトペーパーの構成や取引所探しなど一連の流れに関わっています。ブロックチェーン関連の経験を持つ人材を探して少しずつメンバーに加え、メンバーは約20人になり、エンジニアは11名と約半数です。

阿部:それでは、事業内容について詳しく教えてください。

Wilson Huang:ソーシャルマイニングに対応する初のSNSアプリ「Lit」を開発し、エコシステムを構築しています。ソーシャルマイニングは、対応プラットフォームで創作したり、コンテンツを公開したり、他者と交流したりすると報酬を獲得できるものです。SNSプラットフォーム「Lit」で写真や動画を公開しシェアすると、ユーザーは「いいね」などによってエンゲージスコアを獲得でき、報酬としてMithrilが発行するトークン「MITH」を得られます。

ブロックチェーンでSNSが変わる。ユーザーのコンテンツと交流で報酬が生まれるSNS「Lit」

阿部:Litはどんな仕組みのSNSプラットフォームなのでしょうか。

Wilson Huang:アップロードした写真や動画を一定時間内だけ公開する仕組みです。Facebookのように日常の何気ない写真や動画をアップロードでき、ユーザーが公開したコンテンツの質やほかのユーザーとの交流頻度に応じてトークンが付与されます。ユーザー間の交流は「いいね」を押すなどして行われます。

阿部:トークンを報酬として得られる仕組みにして、ユーザーの活発な利用を促進する仕組みですね。ただ、報酬のトークンがほしいがために大量に「いいね」を乱発するなど、報酬目的のユーザーが現れてコミュニケーションの質が下がるリスクはありませんか?「いいね」の上限数は決まっているのでしょうか。

Wilson Huang:いえ、良質なコンテンツの創出を妨げないように1日当たりの「いいね」の上限数は設けていません。その代わり、システム側でユーザーの行動を分析して、閲覧から「いいね」を押すまでの時間があまりに短かったり、タイムラインを見るスピードが速すぎたりする場合はポイントを低くし、ユーザーのランクを下げるなどしています。

阿部:なるほど、閲覧のスピードと「いいね」を押すスピードを観察し、交流の質に応じてトークンを付与しているのですね。

Wilson Huang:投稿者側が類似コンテンツを大量にアップロードすることも防げます。同じようなコンテンツだと閲覧スピードが速くなって反応も悪くなりますから、交流で得られるポイントは低くなります。

ブロックチェーンでSNSが変わる。ユーザーのコンテンツと交流で報酬が生まれるSNS「Lit」

阿部:付与されるトークン「MITH」はどのような通貨ですか。

Wilson Huang:一種のアプリケーション通貨です。現在MITHで決済できるプラットフォームは、占いを通じて人と出会うマッチングアプリ「Minni」や、ライブ動画ネット通販サービス「貝果吧」などです。また、取引所を通じてイーサリアムやビットコイン、ERC20トークンに対応する仮想通貨や別の資産に換えることもできます。

阿部:トークンの資金源は何でしょう?

Wilson Huang:ICOで調達した資金がシステム上にプールされており、そこからトークンを発行します。「いいね」するライクコインは、ユーザーが月額で支払っている金額も使われます。

ブロックチェーンの本質的な価値をユーザーに届ける

阿部:Mithrilは多くの取引所に上場していますね。

Wilson Huang:ええ、大きな取引所から小さな取引所まで、約30の取引所に上場しています。日本の取引所だと「Liquid」に上場しています。

阿部:日本で展開する予定はありますか?

Wilson Huang:視野には入れていますが、日本は法整備が整っていて取引所にはライセンスが必要なので、現在は台湾、韓国、北米に集中したいと考えています。

阿部:台湾、韓国、北米に注力する理由は何でしょうか。

Wilson Huang:仮想通貨のニーズが高い国だからです。韓国は政府が仮想通貨を禁止する条例を出しそうになったとき、多くの人が反対して街中でデモをしました。それほど仮想通貨の人気があるのです。プロダクトがロールアウトしてからは、ロシアなど北米のユーザーも多くつきました。

阿部:日本はまだ仮想通貨を信用していない人が多い状況です。これからブロックチェーンや仮想通貨を広めていくには、まず信頼されることが大事だと考えており、そのために正しい価値を伝えていきたい。私たちは記事をNFT(非代替性トークン)化にしたいと考えています。トークンそれぞれに固有の価値をつけて代替不能にすることで、所有権や取引履歴の記録が可能になり、著作権保護にも寄与します。こうした社会にとって有意義な使い方を提案していきたいですね。

ブロックチェーンでSNSが変わる。ユーザーのコンテンツと交流で報酬が生まれるSNS「Lit」

Wilson Huang:それはおもしろそうですね。私たちもSNSプラットフォーム「Lit」やトークン「MITH」を活用して、クリエイターに価値を還元し、良質なコンテンツが生まれやすい環境を作っていきたいです。

阿部:最後に、これからブロックチェーン業界に入りたいと考えている人や興味を持っている人へメッセージをいただけますか?

Wilson Huang:今から始めるなら、まずはビットコインを購入するのがおすすめです。この業界で一番成功しているソリューションがビットコインですから、ローリスクでリターンを期待しやすい手法でしょう。バンキングビットコインというものがあり、ネットフリックスが視聴できるなど身近なサービスを活用できる点も試しやすいポイントです。投資するなら最初から貪欲に攻めず、余ったお金を使って少額投資するのが鉄則。手堅くいきましょう。

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ライター/萩原かおり 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

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