ブロックチェーン先進国・中国で成熟したエコシステムを育成。NodeCapitalの投資戦略

2019.11.24 [日]

ブロックチェーン先進国・中国で成熟したエコシステムを育成。NodeCapitalの投資戦略

ブロックチェーン技術に特に注力しているのが中国だ。仮想通貨の基幹技術としてだけでなく、国際送金、証券取引、物流管理への応用に向けた研究、技術開発、投資が活発に行われている。
ブロックチェーン専門の投資ファンドNodeCapitalは、2017年以降、世界中の200以上のプロジェクトに投資している。今回、AIre VOICE編集長の大坂氏が同社のYang Yumei(ヤン ユーメイ)氏を取材。成熟したエコシステムへの投資戦略から、中国におけるブロックチェーン市場動向や、中国から見た日本市場の姿に迫る。

投資戦略は「成熟したエコシステム」の育成

Yang Yumei:NodeCapitalは、2015年北京海淀区に設立したブロックチェーン専門の投資ファンドです。金色財経(メディア)、Huobi(取引所)、ColdLar(電子決済)、ChainUP(ネットワーク技術)、Zipper(モバイルプラットフォーム)など世界中の200以上のプロジェクトに投資しています。

ブロックチェーン先進国・中国で成熟したエコシステムを育成。NodeCapitalの投資戦略

大坂:どういったビジョンで投資を行っているのでしょうか。

Yang Yumei:投資によって「成熟したエコシステム」を作ることを目標としています。例えば、大手企業が2~3社いて、その大手が数十個の小さなプロジェクトを引っ張っていくような状況ができあがっていたら成熟していると考え、そういったエコシステムの発展に着目しています。

大坂:なぜ成熟度に着目するのでしょうか。

Yang Yumei:成熟したエコシステムに投資することで、業界全体が盛り上がっていくからです。ブロックチェーンの業界が盛り上がれば、技術も発展していきます。我々の役割は、複数の成熟したエコシステム同士をつなげていくことです。

大坂:具体的にどんなエコシステムに着目していますか?

Yang Yumei:メディアやコミュニティのエコシステムです。我々はこの分野では、中国最大のブロックチェーンメディア『金色財経』に投資するとともに、小さめのメディアプラットフォームにも投資しています。すでにメディアのトラフィックボリューム、ユーザー数、取引に影響するようなエコシステムができあがっています。それから、仮想通貨取引所のエコシステム。この分野では、Huobiを筆頭に、Bgogo、DDEXなど大小約30の取引所に投資しています。

大坂:ブロックチェーンの基礎技術にも活発に投資されていますね。

Yang Yumei:そうですね。ネットワークやウォレット、IoTやAIを活用したプロジェクトなど30~40個ほどに投資しています。データマイニング(解析)やマネーロンダリング防止、データトラッキングなどの企業にも投資し、国内20ほどの国営機関とともにイノベーション創出に励んでいます。将来的には、ブロックチェーンとビッグデータを組み合わせたプロジェクトにも投資したいですね。

ブロックチェーン先進国・中国で成熟したエコシステムを育成。NodeCapitalの投資戦略

大坂:投資判断する際に企業のどんなところを見るのでしょうか。実際の選定基準を教えてください。

Yang Yumei:技術の成熟度です。ブロックチェーン業界には未熟な技術も多く、実験段階のプロジェクトはあまり生存率が高くありません。まずはチームの技術力が高いか、次にその技術が実際に応用されているかを見ます。要は実生活にどう生かされているかですね。

大坂:投資相手にはどんなサポートを行うのでしょうか。

Yang Yumei:チームビルディングやトレーニングをお手伝いしたり、必要なリソースを聞いて最適な投資ファンドを紹介したり、世界中の十数社の投資ファンドを集めて“投資リーグ”を開催したり、さまざまなことをしています。目的はもっと早く成長できるように手助けすること。我々は自分たちのことを“創業者の裏の創業者”だと考えています。良質な木が美しい森に育つように、我々は良質なプロジェクトを育てる良い土壌になりたいのです。

大坂:研究にも力を入れていると聞きました。

Yang Yumei:ええ。研究こそが我々の投資戦略の要です。市場概況や技術動向、エコシステムで起こったことなどを研究し、著書や業界レポートとして情報発信する。毎年多くの資源と予算を研究に費やしています。

中国でも投資スピードは落ちている

大坂:市場概況というお話がありましたが、中国全体におけるブロックチェーン市場は現在いかがでしょうか。

Yang Yumei:中国では2017年にブロックチェーンの投資が盛んになり、この年だけでも十数個の投資ファンドが誕生し、個人・機関投資も増えました。2018年上半期も活発で、ブロックチェーン専門の投資ファンドだけでも50~60ほどあったと思います。ただ、組織化されたのはわずか十数件で、ほとんどが2~3人と小規模なものでした。2018年下半期以降、下火になってからも生き残っている投資ファンドは多くありません。NodeCapitalも2018年下半期以降に投資したのはたった2つと、全盛期と比べて投資スピードは落ちています。

大坂:中国国外でも投資しているのですか?

Yang Yumei:現在は中国がメインですが、海外にも投資しています。東南アジアに進出するためにシンガポールに支社を設立し、アメリカに進出するためにロサンゼルスのベンチャーキャピタルと合弁しました。また、金色財経のインターナショナル版『cointime』では、メディアの視点で世界中の良いプロジェクトを探し、NodeCapitalにつなげることを計画しています。

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中国が大きな絵を描き、日本が細部を詰める

大坂:日本市場はどう見ていますか?

Yang Yumei:日本市場は規制が厳しいので、日本発のプロジェクトには注目しています。ただ残念なことに、ブロックチェーンを実生活に応用させてイノベーションを起こしたプロジェクトは少ないと思います。とはいえ、日本で良いプロジェクトを発掘するのを諦めるつもりはなく、これはというプロジェクトを見つけて中国で応用したいと思っています。中国はとても大きな国で、応用の幅も広いので。

大坂:もしかしたら日本人は、中国の大規模プロジェクトをミクロ視点で最適化するほうが向いているかもしれません。中国発のプロジェクトを日本が発展させるといった流れは今後生まれると思いますか?

Yang Yumei:中国と日本の間で文化の摩擦が生じる可能性はあります。なぜかというと、中国はスピード重視ですが、日本では安定が重視されるためです。日本企業は規模も大きく発展しているので、その一部門が中国とプロジェクトを進めることで安定とスピードが両立できるかもしれません。今後やってみたいですね。

AIre VOICEではブロックチェーンの最新ニュースはもちろん、さまざまなバックグラウンドを持った方へのインタビュー・コラムを掲載しています。ぜひご覧ください。

ライター/川島弘之 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

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