お金のこれから

2019.11.21 [木]

お金とは何か#10
お金のこれから

お金のこれから

前回の記事で『法定通貨の寿命』の話を書きました。厳密には法定通貨に限らず全ての通貨には寿命が宿命のようにあるのです。

経済が健全であるためには、緩やかな年2%程度のインフレが望ましいと言われています。

この『お金とは何か』シリーズの初期で書いたように、お金には『価値の保存』の機能が必要ですが、もしこの保存が正確におこなわれたり、この30年あまりの日本のようにデフレというお金の価値が物に対して上昇すると、お金を積極的に使う動機が弱まってしまいます。

もし、2%のデフレの世の中で、300万円の自動車を買おうとした場合、それがすぐ必要な自動車でもないとした場合、こういう計算ができます。一年我慢して、買うのを先延ばしたら、300×98%=294で実質6万円安く買える。急いで買わなくてもいいかな。

ところが逆に2%のインフレだと来年まで買うのを遅らせると実質逆に6万円高くなる。今買おうかとなる。

どちらが経済の成長に良いかは簡単にわかることです。そしてインフレが続くと、通貨の価値は落ち続けていく。日本の貨幣の歴史だけをみても一つの通貨だけでなく経済の体制が大きく何度も変化してきていることがわかります。

ここでは一例として、以下からの抜粋をあげておきます。

本多博之 (2012年). “織田政権期京都の貨幣流通 – 石高制と基準銭「びた」の成立 ”. 広島大学大学院文学研究科論集より 抜粋—-

戦国期には、銅貨や米に加えて金や銀の流通が増加して貨幣状況が複雑となった。織田信長は永禄の法令である撰銭令・精銭追加条々で、京都において米を商取引に使うことを禁じつつ、金銀の商取引を認めて銅貨との交換比率を定めた。米による現納を正確にするために、京都の十合枡を公定枡として採用して、これはのちの豊臣政権にも引き継がれる。公定枡による度量衡の統一は、米の価値尺度としての信用を高めたため、結果として石高の信用につながった————

日本の貨幣の歴史では、貨幣の種類が増えてわかりにくくなったのでお米を価値尺度として戻したという意外にも思える時期もあったということです。

それ以前もその後も、貨幣(お金)は多様な変化を経てきました。現在のように戦後の混乱期を整理した1950年あたりから70年近くも同じ体制で同じ通貨を使用し続けている方が日本の歴史ではむしろ珍しいと言えるかと思います。

さらに、今の日本のデフレの数十年に及ぶ持続的な継続は人類史上でも稀なことです。私が調べた限りでは、ベネチア時代に、インフレが止まった時期があっただけで、デフレがこんなに続くことは人類史上でもなかったはずです。それが日本だけでなく、世界で起きそうになっています。

出生率が人口を維持できないところまで世界の多くの国で落ちてきていることも、今までの人類の歴史でなかったことでしょう。

それらのことから推測できることは、お金の形が大きく変わっておかしくない時期にさしかかっているだろうということです。

そして、法定通貨に対して仮想通貨(暗号資産)の規模は小さくともわずか10年で大きく成長しました。今の仮想通貨(暗号資産)がこのまま伸びていくかはわかりませんが、新しい資産となり得るもの、法定通貨の代替えとなるものを、お金持ちほど考え探しているのではないでしょうか?

不動産も値上がりが期待できる資産としての価値は限界にきているかもしれません。そう思う根拠は先進国における人口が横ばいから減少に転じることと、シェアリングエコノミーにより、使われてない不動産が有効活用されることで、需要が満たされていき、一つ前の記事で書いた希少価値が失われてくると思うからです。現在の不動産の価値には値上がり期待が多く含まれているのでその期待がもてなくなると急に売りたい人が増えるという逆転現象が起きます。価格がピークに達して横ばいが続けばその時期はいずれ訪れます。

株も、少なくとも既存の業種の株は資産として価値を今までほどは持ち得なくなると思います。アマゾンで買い物すると驚くことの一つに、私では機能性もファッション性も一流ブランドと大差ないのに金額は一桁安いという製品が送られてくることがあります。ITによる中抜きが進むことで、ブランド企業が発注していた工場からダイレクトにアマゾンの物流に組み込まれて購入できているのかもしれません。

若者は株を買うことにあまり興味を示さない代わりに暗号資産やトークンには興味を示す人が多いそうです。若者は敏感に時代の空気を感じ取るからだと思います。ちょうどYouTubeに最初に反応したのが子供達であったように。

また、すでに支払いをクレジットカード、Suica、**Pay  ですることも増えてきました。

これらを使って支払うとき、紙幣や硬貨を使わないで済み数字のやりとりだけになるので、法定通貨がどこかの会社のポイントか、はたまた海外のクレジットカードで海外の法定通貨かどれを使っているのか今までほど気を遣わなくなってきています。

法定通貨の一番の使い道は、税金の支払いになり、日常の様々な支払いには自分の投稿した記事に投げ銭してもらったトークンで支払うというような未来がくるかもしれません。

既に、YouTubeLiveや17Liveのようなライブ配信サービスにおいて、投げ銭が行われていますが現在のところはそれは法定通貨でおこなわれています。

もしこれが、自分が応援している歌手のLive配信に、その歌手のファン向けのトークンが発行されて、それを投げ銭その他に使えた場合、一生懸命その歌手のファンコミュニティーを拡大したファンにはそのファン向けトークンが与えられる。それでさらに活動を頑張ると、その歌手が有名になり、もらったファントークンの価値自体がさらに上がる。そんな使い型ができるようになった場合、自分が努力しても法定通貨の価値には関係ないことと比較して、動機付けが全然変わってきます。

そしてこの仕組みはすでに韓国のK-POPグループでは採用して世界に発行したトークンを配布しているグループもいます。その場合は自分の歌詞をその国の言語に翻訳してくれたファンにトークンを配布する等の仕組みまで作られています。

今までの通貨政策は中央銀行だけに許された特権でした。一般の人はそれに参加することはまったくできませんでした。では中央銀行ではどれだけ価値のあることをしていたのかというと、どうもよくわからないのです。通貨を安定させるための努力はかなりしていたようなのですが、非常に高給の職員を大量に養うだけの価値がどこにあるのかをもっとわかりやすく説明する義務があると思います。

そして、これからは、トークンを使って、それぞれが自分の価値観や得たい仲間を作れる仕組み作りをおこなうという、世界ができてくれるのではないか、自分もそれに貢献したいと思っています。

お金と喜び

私は講演をさせてもらい、講演料をいただくことがあります。その講演料でビールを買って公演後に飲むとしびれるほど旨く、そのビールを買うためにお金を使ったこともとても嬉しく感じます。

でもお金を貯めて、それで株を買って、利益がでて、などやっていたときは、神経をすり減らすばかりで全然喜べませんでした。

1990年までのバブルの頃は、学歴の高い、一般的な意味で賢い人ほど、儲けた金をさらに増やすことに夢中になることがありました。株や不動産を買うと値上がりするのでもっと買いたくなる。結果借金してまで買って、後で大変なことになる。欲をかいただけで、喜びどころか苦しみだけが残った人も多かったことでしょう。

それに対して、田舎のおじさんが、自分の所有してい田舎の土地を高く買ってもらってその金で連日連夜、水商売の店に通い詰め遊び尽くして使い切ってしまったこともありました。結果的には、こういう人の方がバブルを楽しんだのです。

次回もお金とは何かのシリーズについて書きたいと思います。

 

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