観戦者が減りゆくスポーツ業界。トークンエコノミーで深刻なファン離れを解決するFANTASTEC

2019.11.06 [水]

観戦者が減りゆくスポーツ業界。トークンエコノミーで深刻なファン離れを解決するFANTASTEC

SNSなどインターネットの普及により、スポーツファンは試合に足を運ばなくなった。ファンの全体数が増えても質が下がってしまい、収益に貢献するファンの数は少なくなる一方だ。
ロンドンのFANTASTEC社は、ファンコミュニティをエコシステムとして捉え、ファンに価値を還元できるトークンエコノミーを構築中だ。これにより、観戦することでグッズなどのリターンを得られる仕組みが出来上がる。AIre VOICE編集長の大坂氏は、製品開発部長のSimon Woollard(シモン ウーラード)氏と対談し、ファンに観戦の価値を還元するエコシステムについて伺った。

SNSでいいねするだけの人はファンではない

Simon Woollard:私はFANTASTECのパートナーマネジメントを行い、製品部門の部長を務めていますが、経歴は少し変わっていて、王室空軍のパイロットとして働いた後、幸運なことにスポーツ関係企業に転職し、しばらくはスポーツマーケティングに従事してオリンピックなどの大きなスポーツイベントに携わりました。

大坂:テクノロジー関連の仕事ではなかったのですね。

Simon Woollard:ええ、ブロックチェーンとは遠いところにいました。転機が訪れたのはスマートフォンが普及した2007年頃のことです。グローバルコンテンツディレクターとしてスポーツ関連のコンテンツを扱うようになり、トレンドやテクノロジーにも精通する必要があると感じました。スポーツに関するAIやウェアラブルテクノロジーなどに注目が集まり、2013年頃にはブロックチェーンが広まりだして「ブロックチェーンを使ってスポーツの問題を解決できないか」を模索し始めたのです。

観戦者が減りゆくスポーツ業界。トークンエコノミーで深刻なファン離れを解決するFANTASTEC

大坂:スポーツの問題とは何ですか?

Simon Woollard:ファンのスタジアム離れです。現代ではテレビはもちろん、InstagramやフFacebookなどのソーシャルメディアを通じて、世界中のスポーツチームの試合を観られるようになりました。わざわざ足を運ばなくても試合をチェックできるから、観戦しに行かなくなったんですね。

大坂:ファンの数も減っているのでしょうか。

Simon Woollard:いえ、特定のチームのファンは増えています。ただ、スタジアムには行かない。こうしたファンは離れていきやすいので、スポーツチームにとっては由々しき問題です。ファンとして過ごす時間こそ価値なんですね。収益化もしにくいですから、運営にも支障をきたします。

大坂:なるほど、SNSで「いいね」するだけのファンは本当のファンとは言い難いかもしれません。ブロックチェーンによって何らかの解決策が打てるのですか?

Simon Woollard:トークンエコノミーによって、ファンも応援することによって何らかの報酬を得られるシステムを構築したいと考えています。スポーツ観戦に時間やお金を費やしても、ファンには何の見返りもないですよね。ブロックチェーンは代替可能で記録が永久に残りますから、観戦回数に応じてコンテンツやTシャツなどのグッズ、飲食物を提供するなどのさまざまな方法で価値を得られるようになります。世界中の99%のファンは選手の直筆サインをもらえませんが、システムを利用すればブロックチェーンに保護された直筆サインをもらうことだってできるのです。

観戦者が減りゆくスポーツ業界。トークンエコノミーで深刻なファン離れを解決するFANTASTEC

レアル・マドリードも待望するトークンエコノミー

大坂:ユーザーだけでなくスポーツチーム側からも喜ばれる取り組みですね。

Simon Woollard:ええ、今年の9月まではプロジェクトをローンチするつもりはなかったのですが、アーセナルやレアル・マドリードなどクラブ側から「ぜひ取り入れたい」と要求されてローンチが早まりました。

大坂:ローンチを早めたことで何かトラブルは起こりましたか?

Simon Woollard:やはり開発中にいくつかのトラブルは起こりますよね。最大の難点は、ブロックチェーンは発展途上の新しいテクノロジーだということです。ブロックチェーンというと仮想通貨を連想する人が多いのですが、実際はもっと幅広く活用できる便利なテクノロジーですから、それを多くの人に知ってもらい、トークンエコノミーの価値も理解していただきたいと思っています。

大坂:認知度向上が最初の課題ですね。長期的にはどんなビジョンを持っていますか?

Simon Woollard:ブランドシップや資産価値、トレードなどの価値を提供することです。そのためにスポーツに関するエコシステムに取り組んでいます。顔認証でスタジアムに入ってトークンで食べ物やグッズを買ったり、バスに乗ったり、コンテンツをダウンロードしたりできるエコシステムを構築します。

大坂:今おっしゃったことが実現されたら、スポーツ観戦の価値が上がりますね。

Simon Woollard:はい、近いうちにトークンを使ってバスや電気自動車で試合を観に行く日が来るでしょう。まずは人々にFANTASTECを知ってもらうことが重要なので、現在はマーケティングや開発担当者とともに情報収集に力を入れています。

観戦者が減りゆくスポーツ業界。トークンエコノミーで深刻なファン離れを解決するFANTASTEC

大坂:今はサッカーにフォーカスしているとのことですが、ほかのスポーツにも展開する予定はありますか?

Simon Woollard:野球やアイスホッケー、音楽や映画にも展開できると思っています。FANTASTECを発展させるために、大きなスポーツチームやサービスとは積極的に提携していきたいですね。

大坂:エコシステムやブロックチェーンは日本でも注目されていますが、日本人は保守的なのでまだその業界で働きたいという人は少ないです。最後に、興味を持っている若い世代に向けてメッセージをいただけますか。

Simon Woollard:日本人は保守的ですが、革新的でもありますよね。ブロックチェーンが現代の課題解決に貢献することを理解すれば、本来の価値が伝わって好意的な見方ができるようになるのではないでしょうか。日本はファンの文化がありますし、流行の流行り廃りのスピードも速い。ですからブロックチェーンによってトークンを集めれば、持続的にさまざまな価値が得られることに目を向けてほしいです。日本のJリーグやバスケットボールチームなどとも何かしらの取り組みができると思います。スポーツ業界の活性化を目指すなら、まずブロックチェーンの利便性を理解し、まわりにも説明してみてください。おもしろさと魅力がよくわかりますよ。

AIre VOICEではブロックチェーンの最新ニュースはもちろん、さまざまなバックグラウンドを持った方へのインタビュー・コラムを掲載しています。ぜひご覧ください。

ライター/萩原かおり 翻訳/佐々木希 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

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