日本の仮想通貨動向は韓国の注目の的?日韓のブロックチェーン事情を法律面から分析

2019.10.31 [木]

日本の仮想通貨動向は韓国の注目の的?
日韓のブロックチェーン事情を法律面から分析

ブロックチェーンをどのように活用できるかは、各国の規制や法整備がどこまで進んでいるかに大きく左右される。韓国でブロックチェーンの黎明期から同産業に関心を持ち、法律的なサポートやITコンサルティングなどを行っているのがD’LIGHT社だ。
今回、韓国のブロックチェーン産業で大きな影響力を持つ同社のPartnerであるWon H. Cho(チョウ ウォンヒ)氏とIFA社の阿部氏が対談。ブロックチェーンをめぐる韓国や日本の法整備の現状や、今後の展望について伺った。

韓国ではICOが禁止されている

阿部:まず、D’LIGHTの事業内容について教えてください。

Won H. Cho:主に、ブロックチェーン関連事業の手続きを規制の枠の中でスムーズに進められるよう法律支援をしています。海外の法人が韓国でプロジェクトを展開するときのアドバイスも行っていますね。2017年にD’LIGHTを設立したのですが、この2年で50社ほど案件を担当させていただいています。

阿部:ブロックチェーンや仮想通貨をめぐる韓国の法律について、教えてください。

Won H. Cho:韓国の金融監督院(日本でいう金融庁)では、ICO(仮想通貨による資金調達)を禁止しています。その境界についてはあまり明確ではないのですが…。ICOをしたい場合には、韓国を離れて他国でする場合が多いです。

日本の仮想通貨動向は韓国の注目の的?日韓のブロックチェーン事情を法律面から分析

阿部:それでは、「ICOしたい」という相談があったらどのように提案されるのでしょうか?

Won H. Cho:ICO可能な国がいくつかあるので、各国のメリットとデメリットをご説明します。国によって法律が異なりますので。たとえばスイスとエストニアを例に挙げると、スイスは信頼度が高いけれどもその分費用面でも高くなる。一方、エストニアでは信頼度こそ劣るもののコストを安く抑えることができます。

阿部:各国でICOした場合の違いを説明し、合うものを選んでもらうということですね。いま、各国でIC0の規制が始まっている状況だと思うのですが、今後どのように変わっていくと思われますか?

Won H. Cho:ICOに関しては、様々な制度が整って来ているので、その制度の中で私たちはできることを考えていかなければいけないと思っています。 

STOのマーケットが世界的に伸びている

阿部:資金の調達方法には、ICOとは別にSTO(株式などの証券をトークンとして発行することによる資金調達)も注目されています。STOに関して、韓国ではどのような状況になっていますか?

Won H. Cho:少し前まで、ICOと同じく規制されていました。ですが、最近はSTOの案件が増えて来ています。ICOについては金融監督院により禁止されていると申し上げましたが、STOについては言及がないんです。

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阿部:では、今後STOは増えていくとお考えですか?

Won H. Cho:マーケット自体はすごく伸びている印象です。現在、STOはシンガポールがメインになっていますが、ロンドンやパリでも増えていますし。今後STOできる国が増えていくと思うので、クライアントのニーズに合わせてどの国でどのように資金調達したらいいかきちんと説明できるよう、チェックは欠かしていません。

しかし、韓国については少し事情が違います。韓国では「海外から発行された株を国内の人間に売ってはいけない」という法律があるので、その制度が変わっていくのではないかと期待しています。

阿部:なるほど。ベストなSTOのやり方とは、どのようなものでしょうか?

Won H. Cho:ICOの場合は「トークンを発行して、さらにそこからどう進めていくか」という要素が強いのですが、STOの場合は「トークンそのものについて、きちんと利益を生み出せるような設計ができているか」というのが鍵になります。そこがICOとSTOの大きな違いでもありますね。

日本は、他国に比べいち早く仮想通貨に関する法律を作っていた

阿部:日本のブロックチェーンをめぐる法律について教えてください。

Won H. Cho:実は、日本は他の国に比べて仮想通貨に関する法律を作るのがものすごく早かったんです。ブロックチェーンに関して、韓国の法律は日本のものに近いので「日本の法律は早い段階で整うのではないか」と韓国でも期待が高まっていました。ところが、実際にはトークンも出てこなかった。

阿部:日本には広告規制などもあるので、投資の進め方には四苦八苦していますね。実際、日本ではライセンスを取得した仮想通貨業者がハッキングされたため、金融庁による業務改善命令を受け、業務をストップさせたというケースもある。それはもう復活していますが、金融庁もガチガチに規制するしかなくなっているのが現状です。これからまたどんどん変わっていくと思うんですけれども。

Won H. Cho:韓国の金融監督院もほぼ似たような動きをしています。 日本ではあまりないと思いますが、韓国では仮想通貨がマネーロンダリングにしばしば使われているということで、問題になっているんです。

日本の仮想通貨動向は韓国の注目の的?日韓のブロックチェーン事情を法律面から分析

阿部:日本でも、金融庁がハッキングはもちろんのこと、マネーロンダリングについても大変危惧していますね。あとはKYC(仮想通貨取引の際の本人確認手続き)も悩みの種のようです。日本は犯罪組織にお金が流れないように、心血を注いできていますから。
とはいえ、「投資してみたい」というニーズは日本でも大きいのではないでしょうか。

Won H. Cho: ブロックチェーンそのものが「単なる流行りに過ぎないじゃないか」と揶揄された時期もありましたが、だんだん専門家の間で「これはどうやらタダの流行じゃなさそうだぞ」という話になって来ています。大きな時代の流れだということは間違いないので、ブロックチェーンに関するプロジェクトをチェックしていただきたいですね。

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ライター/小泉ちはる 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

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