中国最高学府が推進する「デジタル経済」とは。ブロックチェーンで世界貿易が変わる

2019.10.29 [火]

中国最高学府が推進する「デジタル経済」とは。ブロックチェーンで世界貿易が変わる

中国経済のさらなる発展のために中国政府は「デジタル経済」の確立に力を入れている。中国の最高学府である精華大学のX-labは、中国のみならず各国の政府と協力してデジタル経済を研究する機関だ。中国というと仮想通貨が禁止されているイメージがあるが、実際には最高峰の研究機関が数々の企業とともに千以上のプロジェクトを立ち上げ、研究開発に尽力している。
デジタル経済を支えるのがブロックチェーン技術だ。清華大学X-labの学部長であるZhong Hong(ヂョン ホン)氏は、ブロックチェーン3.0時代に突入し、資産をトークン化するATOとSTOによってデジタル経済が発展すると述べる。これから世界経済はどう変わるのか、見解を伺った。

ブロックチェーン3.0時代に世界貿易が進化する

中国の産業界・学会・国を結合した研究機関である清華大学X-labは、中国の新しい企業のプラットフォーム作りに貢献してきた。イノベーティブとクリエイティビティを掛け合わせたプロジェクトに邁進し、Facebook ともクリエイティブ事業を提供するために協働している。

Zhong Hong:世界中の大学、都市、中央政府、投資機関とも提携しており、将来的にはクリエイティブな企業をサポートできるソリューションやブロックチェーンの世界大学を作ろうと思っています。現在は外部の人々と一緒にプラットフォームを作っていて、研究と同時に企業の資金援助をしたり企業コンテストを開催したりしています。

中国最高学府が推進する「デジタル経済」とは。ブロックチェーンで世界貿易が変わる

過去6年間で、精華大学はフィンテックやインターネット、ブロックチェーン分野におけるクリエイティブプロジェクトを1600も推進した。ブロックチェーンを従来の産業とどう結合させれば“世界中で通用するデジタルエコノミー”を構築できるか模索している。特に技術研究に力を入れているのは、ブロックチェーン3.0だ。

Zhong Hong:すでにブロックチェーン3.0の時代に突入しつつあります。ブロックチェーン1.0でビットコインが誕生し、ブロックチェーン2.0でトークンが誕生しました。ブロックチェーン3.0は、これまでの仮想的なデジタルアセット(データで保有されていた資産)が現実的なデジタルアセットに移行します。今までは仮想通貨やトークンなどの資産がブロックチェーン上で取引されていましたが、今後は車や不動産などの物質的資産もブロックチェーン上で取引されるようになるということです。

ブロックチェーン3.0では、ブロックチェーン技術と AI、インターネット、 IoT といった技術が結合してさらなる発展を遂げる。製品の生産から販売までのサプライチェーンがブロックチェーンに記録され、追跡できるようになるだろう。

食品や不動産などにも利用でき、どんな材料を使ってどのような工程を経て生産されたか、そしてどのように販売されどの顧客のもとに届いたかまで把握できる。取引の透明性が高くなり、セキュリティも向上して生活者からの信頼を得やすくなる点がメリットだ。

Zhong Hong:ブロックチェーンが世界貿易のプラットフォームにどうやって実装するかを考え、我々が掲げたコンセプトが「ATO(Asset Token Offering)」です。全ての製品をトークン化して取引するという概念ですが、発展させるには法律での保護が必要不可欠なので、法律の 整備も進めていきたいです。

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「数字経済(デジタル経済)」で流通革命が起きる

さらにZhong Hong氏は「ATO+STO=Digital Rights Economy」として、ATOと 証券などの資産をトークン化するSTO (Security Token Offering)を組み合わせることで、実在する製品すべてがブロックチェーンを通じてデジタルアセット化でき、デジタル資産による経済圏が誕生すると述べる。X-labはこれを「数字経済(デジタル経済)」と命名し、中国政府とともに専門の研究室を立ち上げ、香港でも国際的な数字経済組織を設立した。

Zhong Hong:ATOによりビットコインのデジタル取引も可能になるでしょう。デジタル経済の確立に向けて、我々は実在する製品をブロックチェーン上にのせて取引できるようにする“ビットチケット”を開発しました。たとえばビットチケットで日本の農産物をデジタルアセット化すると、日本に行かなくても日本の農産物を取引できるようになります。現金のみならず証券も国境を越えて取引できるようになりますよ。

中国最高学府が推進する「デジタル経済」とは。ブロックチェーンで世界貿易が変わる

すべての商品がブロックチェーン上にのせられる時代が到来するとして、はたしてすべての商品がブロックチェーンでの取引に適しているのか。Zhong Hong氏は「適しているのは第一次産業の取引です」と語る。

Zhong Hong:土地や家などの不動産、原油や農産物などの原材料、貴金属が適しています。実際に中国西部で生産した宝石をブロックチェーン上にのせてトークン化(ATO)し、香港で取引しています。タイの不動産を中国で販売する実験も行っています。

サプライチェーンが長い農産物などは、情報をブロックチェーン上にのせるATOを行うと莫大なデータを扱うことになるが、すでにIoTにより生産から販売までの工程を把握する土台が出来上がっている製品に導入すれば負担は軽減される。あるいはチェーンを分けることで、パブリックチェーン上にすべてのデータを記録する必要がなくなり、効率化できる。

Zhong Hong:ATOがSTOの基礎となって発展し、これからの新しい商業モデルとして浸透するでしょう。世界中の GDP に占める割合もどんどん増えていくと思います。これが数字エコノミー3.0でありブロックチェーン3.0です。デジタル経済が確立されれば、世界中で新しいビジネスが次々に誕生するでしょう。ここには大きな可能性があります。

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ライター/萩原かおり 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

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