パソコンの電源を入れたまま外出したり席を外したりすることはないだろうか。何もしなければ待機電力を消費するだけで終わってしまうが、あるアプリをダウンロードするだけで、使わない間だけリソースを企業に販売し、収益を得ることができる。
そのアプリを開発したのが、2018年に設立された北京の企業Poseidon Networkだ。ブロックチェーンを使って、パソコンやモバイルデバイスなどのITリソースのマッチングサービスを提供している。今回、同社のプロダクトマネージャーであるBill Sun(ビル サン)氏とIFA社の阿部氏が対談。どのようにITリソースを有効活用して利益を得るのか、サービスの裏側を解説する。
ITリソースのマッチングサービスが誕生
阿部:はじめに、Billさんのキャリアを教えてください。
Bill:以前は、ヘッジファンドでブロックチェーンのリサーチャーをしていました。その後、北京のIT系プロダクト開発の会社でブロックチェーンに関する仕事に就いていましたが、ずっと一つのプロジェクトに長く携わるような仕事をしたいと思い、台湾に戻って今の会社に勤めるようになりました。戻ってきてからは、いろいろと活動的に動いたので、おそらく台湾ブロックチェーン業界の大半の方と知り合いになれたのではないかと思っています。
阿部:なぜ台湾でブロックチェーンの仕事をしようと思ったのでしょうか?
Bill :それは創業者であるLight Linさんと一緒に仕事がしたいと思ったからです。Linさんは、Googleができる前からブログサイトを運営していて、当時はYahoo!を超えるボリュームを持っていました。最終的に、そのブログはYahoo!に買収されたのですが。
阿部: Billさんが現在、Poseidon Networkで携わっている仕事は何ですか?
Bill :Poseidon Networkには2019年の年明け頃に入社しました。現在はプロダクトマネージャーとして、製品のデザインをしたり、マニュアルやフローの作成などを行っています。それと、もともとヘッジファンドのリサーチャーだったこともあり、BD(ビジネスデベロップメント)にも携わっています。BDを行う部門は社内にも別にありますが、そちらはカスタマーエンドへのBDで、私が行っているのはビジネスエンドへのBDです。
阿部:Billさんはかなり広い業務を担当されているようですが、御社のメイン事業はどのようなものか教えていただけますか?
Bill:私たちが目指しているのは、ブロックチェーンのトランスポートレイヤーです。ネットワークには7つのレイヤーがあって、その4レイヤー目がトランスポートレイヤーです。具体的な事業の内容としては、コンピューターリソースの需要と供給のマッチングです。例えば、阿部さんがPCを立ち上げたまま、外出したとします。
阿部:ああ、よくやります(笑)
Bill:ですよね(笑)。その場合、阿部さんのPCリソースは余っている状態になります。一つ一つは小さくても、世界中で集めると大変な量になります。それを集めて、リソースを必要とする企業に提供する。それが私たちの主な事業です。
アプリをダウンロードするだけで世界中で利用可能
阿部:リソースを提供する側になるにはどうすればよいのでしょう?
Bill:非常に簡単です。Mac版とWindows版のアプリがあるので、それをダウンロードしていただければ、プラットフォームにリソースを提供することができます。そして集まったリソースを、私たちが企業の方々に販売することになります。
阿部:つまり私が、普段使っていないPCを立ち上げてリソースを提供すれば、トークンがもらえるということですか?
Bill:その通りです。QQQというのがあるのですが、リソースを提供する方には企業側からそのトークンが提供されます。一方、企業側がサービスを利用したい場合は、QQQトークンを購入する必要があります。
阿部:弊社IFAがサービスを利用する場合はどのようにすればよいのでしょう?
Bill:私たちのパートナーにQNAPという世界で二番目に大きいNASサーバーのサービス会社があります。企業の方々は、QNAPのオフィシャルのサイトからアプリをダウンロードしていただければ、すぐにこのサービスを利用できます。
阿部:これは、世界中のどこからでも利用できるのでしょうか?
Bill:もちろんです。QNAPのノードは世界中どこにでもあります。QNAPが持つNASは現在世界中で500万台稼働しています。基本的に、企業は夜に業務は行わないので、NASサーバーがフル稼働している時間は実質10〜12時間くらいです。その空いている時間のリソースを使わせていただくことになります。
阿部:なるほど。
Bill:現在のクラウドサーバーのスピードは、まだまだ遅いと感じています。ビデオ配信されている映画を台湾で観ようとしても、そのデータは南米のデータセンターにあるかもしれません。理論的に言えば、一番近くにあるデータセンターからデータを取る方が早いはずです。それをグローバルなレベルで実現するには、ブロックチェーンによる非中央集権型のサーバーしかありません。
ブロックチェーン業界は数十倍のリターンが期待できる場所
阿部:これから始まる5Gについて、どう思いますか?
Bill:インターネットが登場して40年、トランスポートサービスであるCDNが登場して30年が経ちます。CDNは過去30年の間、毎年30%ずつ市場が成長しています。5Gの時代が到来すれば、CDNはさらに飛躍するでしょう。私たちのサービスに、今このタイミングで参加していただければ、その飛躍を体感できるようになると考えています。
阿部:今後、日本で行いたいことはありますか?
Bill:日本の仮想通貨やブロックチェーンのマーケットは、かなり成熟しているイメージがあります。その理由の一つは、法律の整備が整っているから。私たちにとっては、ルールが明確な方が発展しやすいので非常にありがたい状況です。日本人の仮想通貨への関心も高まってきています。日本のマーケットにどうやって私たちのサービスをPRしていくか、BDの担当者がいろいろな事業者の方々と話を進めていますが、その中に日本の大手企業と繋がっている方がいるそうなので、徐々に日本のマーケットにも広がるのではないかと思っています。
阿部:その際は、是非とも私たちも参加したいですね。では最後に、日本の読者に向けてメッセージをお願いします。
Bill:今のIT産業は、半導体でもソフトウェアやハードウェアの開発でも、ほとんどが成熟しきっています。1年掛けて新しい製品を開発したら2倍のリターンが得られるなど、見返りについてもある程度の予測が立ちますが、ブロックチェーン分野は、同じく1年掛けて開発したらリターンが10倍にも20倍にもなる可能性があります。これほどハイスピードで成長しているにも関わらず、まだ参入している企業は少ない。これは大きなチャンスです。日本の皆さんにもこの流れに乗って大きなリターンを得て、私たちのサービスが日本で開始された際は是非とも参加していただきたいと願っています。
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ライター/小関 匡 編集/YOSCA 撮影/倉持涼