元軍隊のエンジニアが創業したブロックチェーン企業「Cross Angle」。スーパーエリートが手掛ける仮想通貨ビジネス

2019.10.17 [木]

元軍隊のエンジニアが創業したブロックチェーン企業「Cross Angle」。スーパーエリートが手掛ける仮想通貨ビジネス

投資家にとって、情報は投資判断に必要不可欠なものだ。韓国の軍隊でエンジニアを務めていた経験を持つLihan Lee(リー ヒョンウ)氏は、仮想通貨にまつわる情報を分かりやすく提供するためにCross Angleを創業。各仮想通貨の提供元から情報やデータを集め、取引所を介して投資家に提供している。
どのような仕組みでデータを集め、どうやって情報の正当性を担保しているのか。IFA社の阿部氏が韓国へ足を運び、Lihan Lee氏に伺った。

各仮想通貨のデータを情報として明確化

阿部:初めに、Lihanさんのご経歴をお聞かせいただけますか。

Lihan Lee:大学ではコンピューターを専攻し、5年ほど軍隊のエンジニアとして働いていました。韓国には徴兵制があるのですが、特例として優れた才能を持った一部のエリートには軍隊に入らなくていい権利が与えられます。私は特例で、軍隊には入らず、公務員のような形でエンジニアをしていました。

その後、オープンサーベイというリサーチ会社を創業し、一般の消費者に空いた時間でスマホの簡単なアンケートに答えてもらい、データを集めるというビジネスを行いました。当時、韓国ではスマホの普及率が90%以上になっていたため、アンケートを取ってデータを集め、それを利用していくということに、非常に興味があったんです。

さらにそのあと、飲食系のIT企業に勤めました。そこは日本におけるUber Eatsのようなデリバリーサービスを運営しており、そのなかで糖尿病と食事の関係についてデータを使って調査をしていました。それにも非常にワクワクするなど、データを活用して何かをするということにずっと興味を持ち続けていました。そして、その約1年半後にブロックチェーン業界に踏み込むことを決め、現在の会社を起業しました。

元軍隊のエンジニアが創業したブロックチェーン企業「Cross Angle」。スーパーエリートが手掛ける仮想通貨ビジネス

阿部:Cross Angleが行っているサービスの概要や特徴をお聞かせください。

Lihan Lee:私がブロックチェーンの業界に踏み込んだのは、業界内のたくさんの会社が投資を受けている一方で、その資金の流れが明確ではないと感じたことがきっかけです。

そこで、各プロジェクト(仮想通貨)の情報を集め、それを各取引所に告知するシステムをつくりました。上場した会社には公表しなければいけないと義務付けられているデータがあるように、アメリカやイギリス、日本などでは仮想通貨にも公表が義務付けられている情報があり、それを管理する団体が存在します。しかし韓国を含む世界中にはその団体が存在しないため、その位置づけを目指しました。
お金の流れというよりも、各プロジェクトが持つデータを明確化したイメージです。すでに、韓国にあるほとんどの大手取引所との連携を行っています。

阿部:投資家に対して情報提供をしているサービスなのでしょうか。

Lihan Lee:そうですね。取引所を経由しますが、結果的には投資家に対して提供しているという形です。サービスをリリースして時価総額上位500位のプロジェクトの中から150のプロジェクトのデータを集めることができました、年末まで300プロジェクトを目標にしています。

阿部:具体的には、どのようにデータを集めているのですか。

Lihan Lee:我々のプラットフォームに情報の入力フォームを設け、各プロジェクトの運営者の方々に良いニュースも悪いニュースも報告してもらっています。そうして得たニュース情報を、API化して各取引所に送り、ニュースとして出せるようにしているんです。つまり、何らかの情報を我々のプラットフォームに入力すれば、自動的にレポートとなって各大手取引所へ伝わり、ニュースとして投資家に発信されるというわけです。取引所では、その情報が各トークンの上場や上場取り消しの判断基準にもなっています。

阿部:発信した情報は、何人くらいの投資家の方が見ておられるのですか。

Lihan Lee:

取引所を経由しているので、明確には数値化されていません。ただ、今後はそれも把握したいと考えています。

情報配布先の取引所はこれからもっと増える予定で、年明けには日本語版の提供も開始するため、いろいろな取引所と話をしています。日本の大手金融機関にも、レポートは売れていますね。月に1回ほど共同創業者のジェームスが日本に行き、取引所はもちろん、日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)とも話を進めているところです。現在、Coinchec、Bitbnak、BitPoint、DeCurret、GMOコイン、DMM Bitcoin社とパートーナー契約を締結し、年末にはさらにパートーナー社を増やす予定です。

元軍隊のエンジニアが創業したブロックチェーン企業「Cross Angle」。スーパーエリートが手掛ける仮想通貨ビジネス

情報の公平性や正当性を担保するために

阿部:各取引所によって欲しい情報が異なるため、これまではその都度プロジェクト側に情報を請求しており、プロジェクト側もその取引所に合わせていちいち情報を出す必要がありました。しかしそれでは手間がかかるうえ、プロジェクト側が嘘の情報を提供する懸念もあった。そこで、Cross Angleが取引所とプロジェクトの間に入ることで、公平性を保ちながら情報をまとめて提示できるようにしているということですね。

システムとしては非常におもしろいと感じますが、プロジェクト側が自分で情報を入力する以上、それが正しい情報だとは言い切れないのではないかと思います。情報の正当性はどのように担保しておられるのですか。

Lihan Lee:考え方としては株式市場と同じで、上場会社が悪いニュースを公表しない場合もあると思います。それがあとになって監査会社に発見されて悪いニュースになり、場合によっては上場取り消しになることもあるでしょう。

できるだけ正しい情報を入力してもらうための工夫としては、入力するフォームを16項目に分け、客観的な情報を登録しやすくしています。良いニュースか悪いニュースかというよりも、単に今の状況を正しく説明するということを重視しているんです。なので、例えば今回のマイナスは投資だと好意的に捉える人もいれば、目先がマイナスであれば良くないと否定的に捉える人もいるというように、その受け取り方は人によって異なるでしょう。我々は情報を提供するだけで、その内容の判断は取引所に任せています。

一方、我々のサービスの良さには、ログが残せるということが大きくあります。例えば、大きな取引所に上場するという一大ニュースを発信したものの、その内容に少し誤りがあった場合、我々のサービス上で訂正情報を出しておくと、世の中が情報の誤りに気付いたときに正しい情報を見つけることができるし、プロジェクト側もすでに正しい情報を出していると言うことができます。今後は、修正変更などのログを一覧で見られるようなプラットフォームをつくろうと準備を進めているところです。

阿部:なるほど。では、公平性についてもう一つだけお伺いさせてください。情報の提供元である各プラットフォームとビジネスでの取引がある以上、忖度をしてしまう可能性があると思うのですが、それについてはどうお考えになりますか。

Lihan Lee:おっしゃる通りで、そういった問題はあり得ると思います。ただ、今後中国などでも同じようなサービスが出てくると考えているので、似た機能を持つ会社と連携して互いにけん制し合うといった構造にできればと思っています。

Xangleは情報の入力側やデータをご提供いただくパートーナー社からは金銭的は利益を求めてません。このような部分が既存の仮想通貨の監査会社と差別化されていると思います。我々が存在する利用として各プロジェクトの客観的かつ基礎的なデータを提供するところにあり、我々のデータを活用して仮想通貨リサーチや情報プラットフォーム側が活用できるよう頑張りたいと思います。Xangleは国際標準の公示データ提供会社に成長するため、日本、中国、シンガポール、ロシア、南米などの世界各国のパートーナー社と協力していきたいと思います。

阿部:分かりました。最後に、読者に向けてメッセージをいただけますか。

Lihan Lee:AIreVOICEは、初心者の方々にブロックチェーンを分かりやすく説明しているメディアとのことで、すばらしい取り組みだと思います。
株もそうですが、本来は中学生でも投資が認められているにもかかわらず、実際に投資をしている人がほとんどいないというのは、そもそも投資にまつわるニュースが難しくて読み解きにくいということがあるのではと思います。しかし、ブロックチェーンプロジェクトはこれからのもの。まだまだ先例がない分、私たちもさまざまなグラフを新しく使うなど、分かりやすい情報の提供を目指しています。そういう意味で、一緒に成長していければいいと考えています。

AIre VOICEではブロックチェーンの最新ニュースはもちろん、さまざまなバックグラウンドを持った方へのインタビュー・コラムを掲載しています。ぜひご覧ください。

元軍隊のエンジニアが創業したブロックチェーン企業「Cross Angle」。スーパーエリートが手掛ける仮想通貨ビジネス

ライター/三ツ井香菜 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

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