ブロックチェーンが交換できる対象を拡大

2019.10.11 [金]

お金とは何か #5
ブロックチェーンが交換できる対象を拡大

お金は交換を媒介する機能をもっていることを前回説明してきましたが、

ブロックチェーンが使われ始めてから、トークンというものが使われるようになってきて、法定通貨であるドルや円でなく、トークンでしか買えないものが出てきました。

そこで使われるトークンは間接的に法定通貨が売買できるでものであったとしても、法定通貨では少なくとも直接的には交換を媒介できないものが出てきたということです。

トークンの簡単な説明

ブロックチェーンとトークンは連動している場合がほとんどなので、ブロックチェーンの普及にともなって、トークンという言葉もよく使われるようになってきました。

ところが、トークンとは何のことですか?というと明確に即答できる人は少ないのです。

理由はトークンという言葉が指し示すモノが複数種類あること。

それぞれの理解が違うまま、トークンという言葉が多用され過ぎていることが要因になっています。

トークンは代用貨幣という言葉で、大雑把には説明ができます。

日本のSuicaをずっと単純にしたプラスチックの硬貨のようなモノが、切符代わりに、外国の地下鉄に乗るときに使われていますが、これもトークンと呼ばれています。これは代用貨幣の一種類と言ってもいいのでしょう。

ただし、全く代用貨幣とは言えないモノとして、ワンタイムパスワードを表示するデバイスもトークンと呼ばれています。

ビットコインとイーサリアムそれ自体をトークンという人はほとんど、いませんが、イーサリアムのERC20というプロトコル(規格)を使って、多くのトークンが作成されました。それぞれのトークンにも名前はあっても、ひとくくりにトークンと呼ばれていることが多いようです。

明確な定義はないものの、イーサリアムやビットコインのようにメジャーで、独自ブロックチェーンをもち、発行されている暗号資産は、固有名詞で呼ばれていて、それらのブロックチェーンを間借りするように使わせてもらって発行された暗号資産のようなものはトークンと呼ばれることが多いです。

ただ、ビットコインを使った経済圏があったら、それもトークンエコノミーの例としてあげても間違いともいわれないと思われます。

トークンという言葉の日本での使われ方はそのように、明確な定義がないまま使われているのが現状と思われます。

トークンにより新しく交換できるモノ

2019年現在。日本でも何種類ものトークンが特定のコミュニティーの中で使われています。

その大きなきっかけになったのは2017年4月からのVALUという個人の価値を売買できるサービスの開始でした。

VALU社は個人それぞれにビットコインのオープンアセットプロトコルという規格を使って作られたVALUというトークンを発行し(審査基準や発行VALU数の基準がある)、それを売買できる、株の取引所のようなシステムも提供することで、いきなり、個人の価値の売買をVALUトークンを使ってできるようになったのです。

このVALUトークンはそれぞれの個人ごとに違うモノが発行され、その個人の価値が高まっていると認識されると価格が上がってくるという使われ方をしていました。新規公開の小型株にさらに小型のものを個人に株の代わりにVALUトークンで発行しているイメージです。

そして、そのVALUはビットコインでしか売買できません。

日本円では交換できないモノだったのです。(もちろん日本円で同じことやったら、法律上かなり難しいことになっていたはずです)

トークンが来るまでは、デジタルデータは簡単にコピーできてしまうので、ネット上でお金のやり取りは困難でした。信用のある大企業にクレジットカードで支払うとかが今もECサイトではよくある使われ方ですね。

それが、ブロックチェーンが使われるようになったことで、コピーできないデジタルデータとしてのトークン(代用貨幣)が使えるようになった。

そして、そのそれぞれのトークンでしか扱えないコミュニティーの中だけで運用される経済圏が作られた。

間接的には法定通貨で売買できるとしても、直接的に法定通貨で売買できないトークンが使われるコミュニティーができることは、経験した人間でないと想像しにくいのですが、社会を大きく変える可能性があります。

独自の価値観で運用される経済圏を作れるからです。トークンエコノミーについてはいくらでも議論できる余地はありますが、この記事でお伝えしたいことは、貨幣の基本機能として交換の媒介機能がありますが、既存の経済圏への交換媒介機能はそのまま機能しても、すでに始まりだしたトークンエコノミーの経済圏が拡がってきた場合、未来においては、法定通貨では少なくとも直接的には交換できない価値をもったモノが増えていくということなのです。

もともとは食べ物のように生きていくために必須のものの交換を媒介するためにお金(貨幣)は使われ始めたのでしょう。それが、原油だったり、サービスだったり、見栄や自己承認欲求を高められるブランド物だったりが、食品よりも高い価格となってきました。

未来において、人間は何に一番お金を使うようになるのでしょう?

この流れで想像すると、一段と抽象的な物に、より高いお金を使うようになるのではないでしょうか?

そうすると、法定通貨で直接売買できないトークンエコノミーの世界が広がり、それぞれのコミュニティーの中でしか使えないトークンの価値が全体としては(価値のなくなるトークンも今後もたくさん出ることでしょうが)出てくると考えられるのではないでしょうか。

現在、すでにネットのライブ配信しているときに投げ銭が行われていてその金額が大変なことになっています。人気ライバーの収入は月数千万円ともいわれています。17Liveや、YouTubeのライブ配信もその一例です。私も見てみたことがありますが、あれはファンが自分の名前を呼んでもらいたい場合や、自分を喜ばしてくれる情報発信への感謝の気持ちを投げ銭という形で表しているようです。

もう、今までの購買という概念とは違いますが、何らかの価値を届けたい、交換したいという気持ち、心と、お金の交換とも言えるのかもしれせん。そしてそのための未来のお金はトークンになる可能性も高い。便利で、一定の価値観を共有できる人の間では連帯感が生まれるから。

お金で交換される価値に占める心の割合は広がり続ける

以前の記事で戦時中、食料を得るために、価格の高かった着物や時計など、いわゆる金目の物を持参して、農家で物々交換してもらっていたこと。貨幣の価値がなくなっていたときはそうするしかなかったことを書きました。生きるために食料もない極限状態では、食料の価値は、他のあらゆる物より高くなったという歴史的な実例です。

逆に、社会が安定して、生活必需品が大量生産されて、効率的に流通するようになると、その価格は驚くほど下がっていき、人は今まで気づいていないものとお金を交換しようとするようになる。

先ほど例に出したVALUの場合も、それを買うことでそのVALUを発行しているVALUERと人間関係ができることに大きな価値を感じた人は多かったのです。

これから一段と、心が喜ぶ物に対してお金を使いたいという欲求は高まるのではないかと私は推測しています。

そして未来において、人々は何とお金を交換したくなるか、既存の常識にとらわれずに想像することが、ビジネスでも、自分の生活を豊かにするためにも、とても大切になってきます。

UberやAirbnbのようなサービスもほんの10年前の常識では、あり得ないビジネスでしたが、今は世界中に広がっています。これからも、現在の常識では考えられないようなサービスが立ち上がり、お金と交換されていくことだけは間違いないのです。

次回は、お金の尺度としての機能について書きたいと思います。

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