AIはタクシーを無人化し、ブロックチェーンは医療界を健全化する。最新技術が変える未来

2019.10.03 [木]

AIはタクシーを無人化し、ブロックチェーンは医療界を健全化する。最新技術が変える未来

「ブロックチェーンを知らないと、恥ずかしくて街を歩けない」。2017年頃、中国のIT業界ではそんな言葉が飛び交っていた。そこでブロックチェーン知識をゼロから教える塾を立ち上げたのが、開聖ネットワーク科技有限公司のCEOであり、ブロックチェーン専門メディア「共識財経」の創業者でもある黎秉银(リ チンイン)氏だ。
黎氏はブロックチェーンに関するプロジェクトのサポートを行い、あらゆる業界にどうブロックチェーンを活用できるかを分析している。今回、AIre VOICE編集長の大坂氏が黎氏と対談。AIで実現する無人タクシーや、ブロックチェーンで解決する医療問題など、最新技術をビジネスに活用する方法について伺った。

ブロックチェーンはIT人材の必需品

大坂:本日はお時間いただきありがとうございます。さっそくですが、黎さんの経歴と仕事内容について教えてください。

黎:2017年3月からブロックチェーン会社でCEOを務め、ブロックチェーンのビジネスモデル、ブロックチェーン技術、マーケティングなどを担当してきました。そして2018年4月にブロックチェーン専門メディア「共識財経」を立ち上げています。中国では2018年にビットコインの人気が急上昇しましたが、いまだにブロックチェーンのことをまったく知らない人もたくさんいます。メディアを通じてブロックチェーンの本質や魅力を伝えたいと思って活動中です。

大坂:僕もまったく同じ思いでAIre VOICEを運営しています。どのような業務を行っているのですか?

黎:ブロックチェーンプロジェクトを推進している企業に行って、ベテラン技術者の取材をしたり、ブロックチェーンのシンポジウムなど国内のブロックチェーンイベントに行ってイベントレポートを制作したりして、さまざまな情報を発信しています。

大坂:主にメディア運営を行っているのですね。

黎:メディア運営だけでなく、ブロックチェーン企業の育成も行っています。ブロックチェーンに精通していない企業に対して、ブロックチェーンに関するアドバイスなどを行ってサポートしているんです。ブロックチェーン技術を活用して企業の競争力を上げることが目標ですね。

AIはタクシーを無人化し、ブロックチェーンは医療界を健全化する。最新技術が変える未来

大坂:具体的には、どのような方法で育成しているんですか?

黎:ゼロからブロックチェーンを学べる「共識商学院」という塾で講義を開催しています。2017年頃、インターネット業界では「ブロックチェーンのことを知らないと、恥ずかしくて街を歩けない」という噂が広まっていました。当時はブロックチェーンやビットコインの話で持ち切りだったんです。無料で半日参加できる「素人クラス」、有料の「経済クラス」、企業向けの「理事クラス」の3クラスを設け、ニーズに合わせた講義を行っています。

中国企業が約3億円を投資する「商品のクリーン化」

大坂:ブロックチェーンは、今後どんなビジネスに活かせると思いますか?

黎:まず物流、サプライチェーンの管理です。ブロックチェーンの特徴は透明性と非改ざん性で、不正にデータを改ざんすることはできません。消費者が食品を購入する時も、収穫地から生産、加工まですべての工程がデータ記録されているので、製品の安全性が確保された状態で手に取ることができます。

大坂:中国でサプライチェーンの管理にブロックチェーンを活用した事例はありますか?

黎:Beingmateが2000万元(約3億2000万円)をブロックチェーンに投資し、自社の乳製品の生産工程を管理するプロジェクトを進行させているそうです。牛乳の生産地はどこか、どの地域の乳牛なのかなどを正確に把握できるようにします。中国最大級のECサイト「タオバオ」にはたくさんの偽物が流通していると言われていますが、ブロックチェーン技術を活用して製品管理すればクリーンなイメージを与えられ、ユーザーは安心してネットショッピングを楽しめるようになるでしょう。

大坂:偽物を取り締まりやすくなりますね。昔は「税関がインチキをする」ともよく言われていましたが、それもできなくなります。

黎:GPSシステムやAIも搭載すれば、ほぼ不正できなくなりますよ。2008年に中国の四川大地震が起きた時、募金団体の信憑性についても議論されました。Aという団体に100万元を寄付したとして、そのお金がどう使われたのか、被災者たちの元に届いたのかは知る由もありません。ブロックチェーン技術があれば、誰でも募金の行方を確認できるようになります。モノだけでなくカネの流通も透明化されるんです。

AIはタクシーを無人化し、ブロックチェーンは医療界を健全化する。最新技術が変える未来

AIで実現する無人タクシー、ブロックチェーンで解決する医療問題

大坂:AIにはどんな期待をしていますか?

黎:AIを搭載した車に興味がありますね。無人運転が実現され、ホットスポットなどの機能を持つ精密なカメラも搭載されるなど、車はとてつもないスピードで進化しています。AIによって自動運転の精度が上がり、無人タクシーとして機能するようになるのではないでしょうか。たとえば朝8時にシステムを自動で立ち上げ、タイヤやガソリンの点検をし、異常がなければ無人タクシーとして外に出ていき、タクシー代を稼げるようになるかもしれません。

大坂:車のIoT化によってAIタクシーが誕生するかもしれないということですね。勝手にお金を稼いでくれる仕組みは夢のようです。

黎:ネット予約サービスとの相性もいいですよね。ユーザーがタクシーをネット予約すると、AIタクシーはすぐにユーザーを見つけて迎車します。QRコードをスキャンしてデジタル通貨でタクシー代を払って、支払いが完了すると自動的にドアが開くという仕組みで運用できるでしょう。ガソリンが少なくなってもシステムで近くのガソリンスタンドを探せますから、ガソリン切れの心配もありません。AIとブロックチェーン技術によって、こうした高度な運用が実現できるんです。

大坂:効率的ですし、安全性も高いですね。タクシーは恐喝や料金未払いなどの事件も起きますが、AIタクシーなら安心です。Uberなどの大企業とも戦えるかもしれませんね。

黎:ブロックチェーンの話に戻りますが、医療業界でもブロックチェーンが大いに活用できると思います。医療技術の改善だけではなく、医療問題の解決にも役立つのではないでしょうか。たとえば、従来の医療業界では患者のデータは公開できず、患者自身ですら自分のカルテや処方された薬などのデータを得ることができませんでした。医療ミスなどで訴訟問題が起きても、病院側はいくらでも改ざんできる状態です。ところが、ブロックチェーン上に記録されたデータは改ざんできませんから、一度記録したカルテは永遠に残ります。病院に行かなくても、ブロックチェーンをベースにしたプラットフォームに登録すれば、いつでもどこでも必要なデータを探せるようになるでしょう。

AIはタクシーを無人化し、ブロックチェーンは医療界を健全化する。最新技術が変える未来

大坂:医療データを公平に、かつ安全に取り扱えるようになるわけですね。

黎:診察も効率化できます。現在はA病院で検査を受けても、B病院に行ったらまた同じ検査を受けることがあり、時間とお金が余分にかかりますよね。ブロックチェーン上にデータを記録すれば、どの病院からも同じデータを確認できるようになり、いつどんな症状があったかなどを把握して診断の正確性を向上できます。ビッグデータとしても活用でき、医療の進歩にも貢献するでしょう。ブロックチェーンはタクシーや医療など、金融業界以外にもたくさんの恩恵をもたらす存在です。

大坂:どうやってブロックチェーンをビジネスに活用するか、具体的な案を伺えておもしろかったです。本日はありがとうございました。

AIre VOICEではブロックチェーンの最新ニュースはもちろん、さまざまなバックグラウンドを持った方へのインタビュー・コラムを掲載しています。ぜひご覧ください。

ライター/萩原かおり 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

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