国によって文化が違うように、日本とベトナムで仮想通貨を取り巻く状況も異なる。Remitano, Incは、アメリカやマレーシア、ベトナムなどで仮想通貨取引サービス「Remitano」を展開し、ブロックチェーンを促進するための援助活動を行っている。
同社のパートナーでありエンジェル投資家のLynn Hoang（リン ホアン）氏は、女性ユーザーが成長の鍵だと述べる。女性に仮想通貨を浸透させる方法や、インフレが進むベトナムの仮想通貨市場についてIFA社の阿部氏が伺った。
女性ユーザーの割合はわずか3%未満。それを改善していく
阿部：ブロックチェーンの促進活動に取り組まれているとのことですが、どのような活動を行っていますか？
Lynn Hoang：現在、ブロックチェーンを促進するためのコミュニティ作りに力を入れています。ブロックチェーンのユーザーはまだ1000万人以下と、非常に小さな数字です。そこで、なんとかもっと活用を広げたいとベトナム人のアクターなどを使ってSatoshi（ビットコインの最小の通貨単位）について紹介する動画を制作し、説明するようにしています。
阿部：みなさん、興味を持って来てくださるんですか？
Lynn Hoang：はい。2017年6月にコミュニティを立ち上げたのですが、その中で500人の女性を対象に講座を開き、ブロックチェーンがどんなものか教えています。ブロックチェーンは不特定多数のユーザーが登録された取引履歴を相互に監視する仕組みですが、現状、監視しているユーザーの中に女性は3%もいません。逆に言えば、今後大きなユーザーとなることが見込めるため、女性の参加率を上げようとUXのデザインを考え直したり、分かりやすいイベントになるよう検討を重ねたり、日本のオーナーを紹介して説明してもらったりしています。
阿部：なるほど、まさに同じ女性ならではの視点ですね。他にも取り組みを行っておられるのですか？
Lynn Hoang：より多くの女性にブロックチェーンに参加してもらうため、2019年の国際女性デーにはRemitanoのSNSでキャンペーンを行いました。Remitanoが国際女性デーにFacebookやTwitterで投稿した記事にいいねやRTで反応してもらい、そのエンゲージメント数に応じて恵まれない女性や子どもを支援している団体へ募金するというものです。実際に、アフリカの貧しい女性に数千ドルを寄付しましたね。また、20言語以上で動画を制作・配信し、6,000ビューを獲得しました。
阿部：本当に様々な活動をしておられるのですね。女性のブロックチェーンへの参加を促すために、重要なことは何でしょうか？
Lynn Hoang：特に女性に広げるという観点から見ると、UXが非常に大切だと感じています。たとえば、交通事故について考えてみましょう。女性が車を運転していて事故を起こした場合、その背後には「エンジニアがあくまで男性視点から車を設計しているため、女性にとって使いにくい設計になっている」という原因が隠れていることがあります。ブロックチェーンでも同じことが言えるのです。
阿部：エンジニアの育成にも力を入れているのでしょうか？
Lynn Hoang：はい。女性エンジニアの育成も私たちの目標のひとつです。実際に、サンフランシスコでは女性の仲間がセミナーを開いて参加者に教えています。ですが、技術がどうこうというよりUXのデザイン自体に問題があるというのが私の認識です。そのあたりにも今後フォーカスしていければと思います。
タンス預金が主流のベトナムは、田舎で仮想通貨が広がる
阿部：日本とベトナムの仮想通貨を取り巻く状況の違いについて伺っていきたいのですが、まず、日本の仮想通貨についてどう考えておられますか？
Lynn Hoang：来日して非常に感心したのが、日本の皆さんのブロックチェーンにおけるシステム作りの素晴らしさです。たとえば、日本語が全く分からない私でも、ネットのシステムを上手く使えば問題なく進められます。それは履歴システムの設定が非常に優秀だからではないでしょうか。ただ、仮想通貨について言えば、ブロックチェーンに興味のある層にご高齢の方が多いという点に少し疑問を感じます。これは以前、日本に招かれた際に強く感じましたね。
阿部：なるほど。では、次にベトナムの仮想通貨をめぐる現状について教えていただけますか？
Lynn Hoang：ベトナムでは、大都市ではなく田舎の方でより仮想通貨が浸透しています。「これを買うと、すぐ5倍、10倍、いや20倍になるよ」というような話をすると、皆信じて買ってくれるんです。なぜかというと、ベトナムはインフレが進んでいる関係で銀行に対する信用が低く、手元に資金をプールしておく人が多いからではないかと考えています。
阿部：日本で言う、タンス預金のようなイメージですね。
Lynn Hoang：ベトナムでは「紹介」というのが非常に重要です。若い世代、中でも10～20代は友達からの紹介が信頼のもとになりますから。ブロックチェーンを広げていくために、それは一つのヒントだと思っています。後はサービスのキラーアプリ化、つまりブロックチェーンを普及させていくような魅力的なサービス作りが必要ですね。
阿部：他に、ブロックチェーンへの理解を広げていくための方策やポイントなどはありますか？
Lynn Hoang：広げていく手段のひとつとしてFacebookの利用がありますが、Facebookは現在、法律、もといレギュレーションに引っかかりかねないのでまだまだ時間がかかりそうだと感じています。やはりアメリカなど規制の強い国でオフィスを持つより、より自由な場所でオフィスを作った方がレギュレーションに縛られず自由に発想ができますね。
阿部：最後に「ブロックチェーンがまだよく分からない」という人や女性に向けて、メッセージをお願いします。
Lynn Hoang：ブロックチェーンの仕組みを理解したいなら、少しでもいいのでまずは仮想通貨を買ってみてください。思い切ってトライしてみれば、大体その仕組みは理解できるのではないでしょうか。
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ライター／小泉ちはる 編集／YOSCA 撮影／倉持涼
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