“アルトコイン”経済圏の創出。ブロックチェーン後発企業の生き残り戦略

2019.10.04 [金]

“アルトコイン”経済圏の創出。ブロックチェーン後発企業の生き残り戦略

日進月歩のブロックチェーン業界は仮想通貨などの流行り廃りが激しく、日々変化している。多くのスタートアップ企業が誕生し、生き残り戦争も激化するばかりだ。FYDO exchangeは、ビットコイン以外の仮想通貨「アルトコイン」の王者を目指すイギリス企業だ。先駆者がひしめくブロックチェーン業界で生き残るために、戦略的に事業展開している。
同社CFOのPaul Lawton(ポール ロートン)氏は三菱UFJ銀行など金融業界でトレーダー、リスクマネージャーとしてキャリアを積んできた。理事会アドバイザーのPaul Finnigan(ポール フィニガン)氏はシティバンクやユニリーバのマーケティングを担当し、貿易金融の知見を持つ。
今回、IFA社COOの桂城漢大氏が金融のプロフェッショナルに、これからブロックチェーン業界に参入して勝ち残る秘策について伺った。

「アルトコインの王者」へ。業界の先駆者に勝つために

Lawton:金融危機が起こったあと、ほとんどの金融機関は政府に管理され、制限がかけられるようになりました。社長のサムは金融市場が中央集権的なシステムになってくると考え、2017年に「政府の古いやり方から、もっとクリエイティブな方法に変わるべきだ」という思いで会社を立ち上げました。FYDO Exchangeなら会員に成功報酬を与えられます。これは貨幣ではできないことです。2009年にビットコインや暗号通貨が金融市場に登場し、こうした新しい取り組みができるようになりました。

桂城:取引所のマーケティングはどのように行っているのですか?

Lawton:SNSのインフルエンサーを使うこともありますが、広報活動で一般的なメディアに露出してはいません。

Finnigan:その代わり、マーケティングの一環として、ビットコイン以外の暗号通貨である「アルトコイン」のトップに立ちたいと考えています。私たちの5つのアルトコインには、すでにたくさんのメンバーがいます。

Lawton:FYDO exchangeはブロックチェーン業界では後発の企業なので、生き残るために戦略的なポジショニングをしなければなりません。ブロックチェーンによって量も価値も上昇するアルトコインは、戦略的なポジショニングに適しています。取引所のメンバーそれぞれが取引し、リスティングされているアルトコインは無料のエアドロップを利用できます。しかし自分の取引所でアルトコインは購入できません。無料で掲載できますが、選ばれる必要があるのです。

“アルトコイン”経済圏の創出。ブロックチェーン後発企業の生き残り戦略

桂城:消費者が選ぶのですか?

Lawton:いいえ、セールスがメンバーにとって最大限の価値が見込めると判断した場合に購入します。こういった方法は今までありませんでしたが、活発な人々の大規模なコミュニティが誕生しやすくなります。機関投資家やトレーダーにも焦点を当て、プラットフォームに流動性を持たせています。

桂城:確かに、コミュニティ形成の助けになりますね。

Lawton:ブロックチェーンは健康、法律、住宅、銀行業界などの主要業界にも情報を記録する手段として広がっていくでしょう。ブロックチェーンの成長に伴って、アルトコインもトークンの一部になると思います。

桂城:アルトコインがトークン(貨幣の代わりになる価値を持つもの)として機能するようになれば、アルトコインによるトークンエコノミー(トークンによってモノやサービスの売り買いを行う経済圏)が誕生する可能性がありますね。

“アルトコイン”経済圏の創出。ブロックチェーン後発企業の生き残り戦略

日本の法規制は他国の利益につながる

Lawton:イギリスで会社を始めたのは、信頼できる法律があるからです。他の国よりも契約に関する法律が厳しく、投資家やクライアントは安心して取引できます。ブロックチェーン企業の活気も感じられますね。

桂城:日本企業との取引も考えていますか?

Lawton:ええ。アジア太平洋地域では仮想通貨市場の先発ですから。コインチェックの不正流出事件などによりセキュリティ面で疑いの目を向ける人もいますが、新しいテクノロジーはアクシデントを経て改善されていくものです。日本政府はセキュリティ強化と規制改善を進め、2020年の東京オリンピックに合わせて公式の仮想通貨を発行するのではないかと予測しています。

桂城:確かに、イギリスでは中央銀行が仮想通貨を探していますよね。日本人はまだ仮想通貨に対して懐疑的ですが、ロンドンの人々は仮想通貨にどんなイメージを持っていますか?

Finnigan:肯定的です。ロンドンはミレニアル世代やジェネレーションZ世代が多く、彼らは新しいテクノロジーを日常生活で使っていきたいと思っており、仮想通貨やブロックチェーンに対してオープンな姿勢を持っています。

桂城:見習いたいです。日本はコインチェックの事件が起こってから、政策をガラリと変えました。さきほどおっしゃったように、新しいテクノロジーに事件はつきものですし、なかなか完璧にはいきません。しかし日本政府は完璧を求めるのです。

Lawton:多くの人々が資産を失いましたから、政府はとても保守的になりましたね。これは日本の損失であり、私たち他国の利益でもあります。

桂城:そうなんです。良い人材がシンガポールや台湾など国外に流れてしまい、日本は多くの才能を失っています。日本政府は新しいテクノロジーに関してはリスクを負いたくないという態度です。「好きなようにやってください、でも私たちは関係ありませんからね」と。

Lawton:テクノロジーを社会に浸透させるには環境も重要ですね。ロンドンは世界の中でもオープンな街で、国際的なテクノロジーコミュニティも市内にあります。もちろん、仮想通貨やブロックチェーンのような金融テクノロジーの国際的なコミュニティもあり、恵まれています。

桂城:最後に、ブロックチェーンの魅力を教えていただけますか。

Lawton:ブロックチェーンは飛行機やテレビ、ラジオのように社会を変える力があります。ブロックチェーン業界に入ろうかと悩んでいるなら、業界にいる人と話をしてみてください。オープンな風土がありますから、何でも聞けると思います。

桂城:影響力とオープンな風土が魅力だということですね。

Lawton:はい。ただ、犯罪には十分に気をつけてください。まだ新しい業界ですから、いろいろなアクシデントが起こり得ます。そして矛盾するようですが、この業界の人と話してできるだけ信じてください。私たちもセキュリティを強化して安心できる環境を整えていきます。
もし話をしたければ、FYDO exchangeを通じて気軽に連絡してくださいね。

“アルトコイン”経済圏の創出。ブロックチェーン後発企業の生き残り戦略

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ライター/萩原かおり 翻訳/佐々木希 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

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