ブロックチェーン技術でスマートな決済サービスを。ベトナムが抱える生活課題を解決できるか

2019.09.12 [木]

ブロックチェーン技術でスマートな決済サービスを。ベトナムが抱える生活課題を解決できるか

決済、証明、契約とさまざまな分野での活用が期待されるブロックチェーン技術。ベトナムのダナンに本拠地をおくRionLabは、主にブロックチェーン技術を用いた新たなサービスの受託開発を行っている企業だ。
今回、同社のVice Director(副社長)であるNguyen Minh Khanh(グェンミン カィン)氏とAIre VOICE編集長の大坂氏が対談。RionLabの事業や目指すところ、ベトナムの抱える課題とブロックチェーン技術に期待できる解決策について伺った。

新サービス開発のカギとなるステラ(stellar/XLM)

大坂:RionLabを設立したきっかけを教えてください。

Nguyen:ブロックチェーンを軸にした仮想通貨のプロジェクトに関わる機会があり、日本でブロックチェーンを開発されている方ですとか、開発していきたいクライアントと一緒に仕事をしたのがきっかけです。私は3年間ほど日本に居たことがありまして。そのうち2年間くらいは日本語の勉強を、1年間は仕事をしながらブロックチェーンの勉強もしていました。私と社長を含めた4人が株主となってRionLabを設立し、今ではベトナムや日本、東南アジアなどで主にブロックチェーンの受託開発を行っています。

ブロックチェーン技術でスマートな決済サービスを。ベトナムが抱える生活課題を解決できるか

大坂:ブロックチェーンの受託開発では、どのような依頼があるんですか?

Nguyen:ブロックチェーンの受託開発の依頼は、いろいろとニーズがあります。例えば、取引所やウォレット、決済システムの開発です。今ではほとんど受けていませんが、新規で仮想通貨を公開できるICO(Initial Coin Offering)や、政府機関から正式に発行を認められた仮想通貨として、STO(Security Token Offering)の開発に関する相談もたまにきます。

大坂:基本的にはイーサリアム(ETH)のような、汎用性の高いブロックチェーンに関する相談が多いですか?

Nguyen:仮想通貨の開発に関していうと、そういった汎用性の高いブロックチェーンに関する相談もあります。現在はあるクライアントと一緒に、ステラ(Stellar/XLM)を利用した新しいサービスを開発中です。

大坂:なぜ他の仮想通貨ではなく、あえてステラを選択したのですか?

Nguyen:ステラはリップル(XRP/JPY)のように送金スピードがかなり速いからです。それでいてリップルよりも扱いやすい。さらに他の取引所、IBMとか大手の取引所ではステラにかなりの投資をしていて、注目が集まっているのも理由のひとつです。また、ブロックチェーン業界ではステラ/リップル派とイオス(EOS)派があり、私たちは圧倒的な送金スピードの速さからステラやリップルの研究をしていこうと思っています。ステラから新しいサービスを開発するこの試みは、1年間くらいチャレンジしていく予定です。

ベトナムには下地がないからこそ伸びしろがある

大坂:ブロックチェーンを扱っている企業は増えてきていますよね。そうしたスタートアップに対して、ベトナム政府として支援などの取り組みはあるんですか?

Nguyen:現状、ベトナム政府は仮想通貨の支援をしていません。そもそも、ベトナム政府はブロックチェーンについて公式な許認可を出していないですし、法整備も整っていません。スタートアップ企業が仮想通貨を活用するのはちょっと厳しい状態です。ただ、今後はベトナム国内でもこういった仮想通貨の需要は増えてくるので、政府や大企業というよりは、スタートアップの中小企業が中心になって開発していくと思います。

ブロックチェーン技術でスマートな決済サービスを。ベトナムが抱える生活課題を解決できるか

大坂:もし、ベトナム国内で何か課題を解決するとしたら、ブロックチェーンはどういった課題を解決できると思いますか?

Nguyen:今のベトナムは特殊な状況でして、ずさんなところと発達しているところの差が大きいです。I Tは発展しているのに、食品や交通など生活に関わるところはずさんなのです。ブロックチェーンを活用すればこうしたさまざまな問題を解決できると思います。ベトナムでは交通事故の件数がとても多く、ブロックチェーンの分散管理を活用すればよりスムーズな交通管理も可能でしょう。

大坂:私は1ヶ月の半分程を海外で過ごしていて、さまざまな電子決済を目にしてきました。ベトナムにおいても、早い段階で仮想通貨を活用した電子決済は普及すると思いますか?

Nguyen:ベトナムにもすでに電子決済のサービスはありますが、どれも銀行の預金を利用したもので、手数料がかかりハードルが高いです。仮想通貨を活用した決済サービスがあれば、取引スピードも速く、手数料も抑えられるので利用者は増えると思います。それにベトナムはまだ現金を使うのが一般的で、仮想通貨を活用する習慣が日本に比べると少ない。これらのことからも、ベトナムにはまだ伸びしろがあると感じています。

ベトナムの人々にスマートな決済サービスを提供

大坂:銀行や取引所の窓口を通さない決済サービスとして知られる、OTC取引(Over The Counter)を自社で開発されたそうですね。なぜOTC取引を提供しようと思ったのですか?

Nguyen:日本側からベトナム側に給料やプロジェクトの支払いをするとき、通常は仲介会社を通して送金するのですが、たまにビットコインとか仮想通貨を使用することもあります。ただ、先ほどもお伝えしたように、ベトナムは仮想通貨の禁止事項がとにかく多くて。それに今あるOTC取引のプラットフォームはかなり高額で、1回の取引に10%くらいの手数料が発生することも珍しくありません。

大坂:つまり、決済を手軽にしたいとの思いでOTC取引の開発を始めたわけですね。

ブロックチェーン技術でスマートな決済サービスを。ベトナムが抱える生活課題を解決できるか

Nguyen:価格破壊とはいかないまでも、手数料を抑えて少しでも手軽に決済できるようにしたいなと。社内でちょうどOTC取引のプラットフォームを開発する流れもあり、新しい試みとしてOTC取引のサービスサイトを運営しているわけです。それに、ブロックチェーンはそもそも送金などを手軽にするための技術ですし、RionLabとしてもこのようなブロックチェーンを活用したサービスを提供するために活動しています。

大坂:数年後のビジョンはありますか?

Nguyen:ブロックチェーンの受託開発を主軸に、クライアントから依頼されているプロジェクトだけでなく、自社のプロジェクトもやっていきます。ベトナムにはまだ発展できるところがあるので、ベトナム国内に向けたサービスを展開したいです。もちろん、日本など海外に向けたプロジェクトの発信などもどんどんやっていきたいです。それの第一弾がOTC取引で、より良い決済やサービスを生み出していければいいなと思っています。これがRionLabが掲げているビジョンです。

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ライター/堀本一徳 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

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