ミレニアル世代の資産運用の入口はデジタルツールが開く

2019.09.03 [火]

ミレニアル世代の資産運用の入口はデジタルツールが開く

「若者がお金を使わなくなった」と言われるようになって久しい。

一方、ここ数年、新卒者の採用は“売り手市場”が続いているとされる。また、2019年4月からは、働き方改革関連法案の一部改正を受け、企業は「働き方改革」に取り組んでいる。

このように経済的な環境が激変する中、2000年代に成人となり、社会人として生活を始めた“ミレニアル世代”は、いかにお金と付き合うべきなのか。自身もミレニアル世代で、『ミレニアル世代のお金のリアル』の著者として、同世代へ積極的にお金に関する情報を発信している横川楓(よこかわ・かえで)さんに聞いた。

 

まとまったお金は必要ない、まずは一歩を踏み出そう

―― 働き方改革はミレニアル世代にも影響は出ていますか?  

はい。ニュースなどでは、残業代が減って家計が苦しくなったという、中高年層のサラリーマンが注目を集めがちですが、私と同世代のサラリーマンにも大きな影響が出ています。2000年代は「リーマンショック」などもあり、日本を含め、世界的に景気は良くありませんでした。

そのときに社会人となったミレニアル世代は、給料はなかなか増えず、残業代で家計をやり繰りしている人が多いんです。私の周囲の人たちも、給料が増える前に働き方改革で残業代が減ってしまった、という人が多い感じです。

 

―― そういう状況だと、投資とか資産運用とかは、なかなかハードルが高いですね。

貯金ができていないという人がほとんどだと思います。そこまで余裕がないというか。

 

―― そもそも、ミレニアル世代で資産運用に関心、興味を持っている人はどのくらいいるんですか?

私の実感では1割から2割くらいの人でしょうか。でも、6月に起きた、「年金をもらっても老後の生活には2000万円不足する」という、いわゆる「年金不足問題」が話題になってからは、関心を持つ人が増えてきました。

ただ、関心度は上がってはいるものの、実際に貯蓄や資産運用に踏み出すという人は、残念ながらまだ少ないですね。やはり貯蓄にお金を回す余裕がない、特に、資産運用となるとまとまったお金が必要になる、と考えている人が多いようです。

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―― その、一歩を踏み出せない状況は、どうすれば突破できますか?

やはり、まずは「始めること」に尽きます。どんなに少額でもいいですから、貯金は始めて欲しいです。今は、いろいろなスマホの「貯金アプリ」が出ていて、楽しみながら貯金ができる工夫がされています。

例えば、『finbee』(フィンビー)は、クレジットカードを使ったときの端数を貯金するという、「おつり貯金」ができます。1000円に設定した場合、1000円未満のおつりと同額が銀行口座からfinbeeの口座に引き落とされます(カード支払額が1500円だとすると500円)。

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『finbee』は銀行口座と連動した自動貯金サービス。カード決済のタイミングや一日の歩数など、毎日の生活に合わせて貯金する金額を決めるだけで、口座に自動貯金。最初に設定する目標に向けて着実にお金を貯められる。

 

―― 知らない間に貯金をしているわけですね。

『finbee』には、1日1万歩以上歩いたら貯金するというiPhoneのヘルスケアアプリと連携させた「歩数貯金」とか、よく行くコンビニなど登録した場所に行ったら貯金する、スマホの位置情報と連携させた「チェックイン貯金」といった機能があります。

いずれも100円単位でできるので無理がないと思います。他にも、「おつり貯金」ができるアプリには『しらたま』などがありますね。

 

資産運用は優遇制度をうまく活用

―― 貯金から資産運用となると、さらにハードルが上がりますか?

実は、資産運用のハードルもかなり下がっているんです。ネット証券には、投資信託の積み立て投資が毎月100円からできたり、『つみたてNISA』も100円からできるところがあります。「NISA」というのは、投資による値上がり益や配当金にかかる税金が非課税になるという優遇制度です。

株式や投資信託への投資を始めようという人には“うってつけ”といえます。そして、その積立版が『つみたてNISA』です。貯金も大事ですが、こうした投資をまずは小額からでも始めるといいと思います。

 

―― 資産運用が100円からできる、ということを知らない人って多いですよね。

まとまったお金がないとできないと思い込んでいる人がほとんどです。あと、買い物や携帯電話料金などで貯まるポイントで投資をすることもできます。「楽天スーパーポイント」やNTTドコモの「dポイント」には、投資信託の値動きに連動させることによって、運用ができるサービスがあります。こうしたポイント投資なら、出費を伴わずに始められます。

 

―― 便利なアプリやサービス、優遇制度とか、それを知っているかどうかで、お金との付き合い方が大きく変わってきますね。

本当にそうなんです。お金に関することって、勉強する機会がほとんどないんですよね。なので、自分から意識を持って学んでいこうとしないと、なかなか知ることができません。まずは、数百円単位で始めて、資産運用をする習慣をつけていくことが大事。

資産運用や投資とかって、やっていくうちにわかってくることがすごく多いんですよ。スタートしてみて、余裕ができたら、積み立てる金額を増やしていけば長続きをすると思います。

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お金のことを知っているか知らないかで、将来大きな差が出る

 ―― これはミレニアル世代に限ったことではありませんが、お金とか資産形成にもっと関心を持つようにするには、どうすればいいんでしょう?

まず、自分の給与明細をきちんと見てみることから始めてはどうでしょうか。税金や年金などの社会保険料が、毎月いくら給料から引かれているかをチェックしてください。そして、自分の年金がどうなっているのかも見てほしいです。

日本年金機構の「ねんきんネット」(https://www.nenkin.go.jp/n_net/)にアクセスすれば、いつでも最新の年金記録をチェックできます。自分の収入や、将来もらえる年金のリアルを知っておくと、もっと資産運用の必要性が感じられるはずです。

 

―― お金との付き合い方で、注意をすべきことってありますか?

本来、資産運用や投資を始めるにあたっては、ある程度は知識が必要になります。でも、あまり“構え”てしまうと、いつまで経ってもスタートが切れません。投資の本や日経新聞を読まないと、などといったことは考えず、まずは始めてみてることが大切だと思います。

やっていくうちに疑問点が出てくると思うので、その都度、ネットで調べたりすれば十分です。但し、怪しげな投資関係の「インターネットサロン」などには注意してください。きちんとした情報が載っている無料のサイトはいくらでもありますから。

 

―― お金を増やすために、余計なお金を使う必要はないということですね。

私も最近よく思うんですけど、お金のことを含めて、世の中には知っているかどうかで差が付くことって、すごくあるなと。そういう大事なことって、自分から知ろうとしないと、誰も教えてくれないんです。

投資や資産運用を始めることが、自分から何かを始めるという“生き方”の第一歩にもなれば、素敵だなと思います。

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横川楓(よこかわ・かえで)/ミレニアル世代のお金の専門家

1990年東京生まれ。明治大学大学院経営学修士(MBA)、ファイナンシャルプランナー(AFP)を取得。実家が会計事務所を経営し、幼少期からお金への関心を持つ。在学中に地下アイドルとして活動した経歴も。現在は、唯一の“ミレニアル世代のお金の専門家”として、同世代に向けて、さまざまなお金に関する啓もう活動を行なっている。

 

取材・文/松岡賢治 撮影/干川 修

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