ウェブメディア戦国時代にブランド力を持つには。ニッチなブルーオーシャンに切り込む「TIMETOCOIN」

2019.08.23 [金]

ウェブメディア戦国時代にブランド力を持つには。ニッチなブルーオーシャンに切り込む「TIMETOCOIN」

ウェブメディア戦国時代の今、独自の地位を確立しファンを獲得するのは簡単なことではない。立ち上げたはいいものの、認知度を高められず撤退するメディアも多い。ブロックチェーンや仮想通貨も例外ではなく、仮想通貨のブームに伴って数々のメディアが誕生している。存在感を持つには唯一無二のブランド力が必要だ。
香港初の仮想通貨専門メディア「TIMETOCOIN」は、レッドオーシャンのなかにニッチなブルーオーシャンを見つけ、そこに切り込んだ。そのニッチなブルーオーシャンとは「中国語」である。今回、IFA社の阿部氏が同メディアを運営するTime to Coin社のKenny hau(ケニー ハウ)氏と対談し、ウェブメディア戦国時代の活路について伺った。

メディアの言語がニッチなブルーオーシャンを切り開いた

阿部:Kennyさんは仮想通貨専門メディア「TIMETOCOIN」を運営なさっていますが、もともとブロックチェーン業界で働いていたのですか?

Kenny:いえ、ブロックチェーン業界での経験はなく、教育や建設に携わり、主に会社を大きくする営業の仕事をしていました。メディアを始めた理由は 、仮想通貨のファンだからです。以前から仮想通貨に関するブログを書いていたのですが、自分が書いている文章を掲載する場所をもっと広げたいと考え、メディアを立ち上げようと思ったのです。

阿部:ほかに仮想通貨専門のメディアはなかったのですか?

Kenny:英語のメディアはたくさんありましたが、中国語でビットコインや仮想通貨の情報を発信する専門メディアはまだありませんでした。中国と台湾で読めるブロックチェーンメディアを作りたかったんです。「TIMETOCOIN」は香港初のブロックチェーンメディアになりました。

ウェブメディア戦国時代にブランド力を持つには。ニッチなブルーオーシャンに切り込む「TIMETOCOIN」

阿部:ということは中国・台湾での競合メディアがいない状態で、小規模でスタートしても確固たる地位を築くことができますね。香港を拠点にした理由について教えてください。

Kenny:香港は融資を受けやすく、ビジネスを立ち上げやすかったんです。ただマーケットが小さいので、ビジネスが発展しづらい土壌でもあります。より多くの読者に届けるために、東南アジアや台湾、中国本土に向けて発信しています。

阿部:実際の読者層は?

Kenny:香港が半数ですが、残りの半数は台湾です。ほかにも東南アジア、マレーシアの読者も多いですね。

阿部:メディアでの使用言語は中国語のみでしょうか?

Kenny:はい。英語の仮想通貨専門メディアは多いので、まず中国語エリアで影響力を持ちたいと思っています。中国語の仮想通貨専門メディアもそれなりにあるのですが、中国本土とは発信できる情報が異なります。香港だから自由に発信できる情報もあるので、そこで差別化していきたいですね。

阿部:「TIMETOCOIN」の収益はどのように出しているのでしょうか?

Kenny:バナー広告で収益を出しています。PR会社から記事広告の発注を受けてコラムを制作することもあります。ただ、それだけで利益を出すのは難しいので、ほかにもいくつかプロダクトを作って利益を出しています。「TIMETOCOIN」は少し変わった方針で運営をしていまして、同じ会社内で複数のプロジェクトを回し、プロジェクト単位で責任者、マネージャーをつけています。取引所を運営しているメンバーもいれば、開発しているメンバーもいるんです。私は「TIMETOCOIN」の運営がメイン業務です。

阿部:プロジェクト単位で動いている会社なんですね。非常に流動的で、柔軟性のある働き方です。小規模ではありつつも、うまく協業して労働力を最大化していますね。北京や香港にもライターを抱えていますし、各人が分散しながら主体的に働いているところが、いわゆるブロックチェーン的な働き方を体現しています。

Kenny:会社ではありますが、仕事はプロダクトベースで回しています。一般的な会社単位の働き方ではなく、コミュニティ単位の働き方ですね。これからの時代に合った働き方ができています。

ウェブメディア戦国時代にブランド力を持つには。ニッチなブルーオーシャンに切り込む「TIMETOCOIN」

利益ではなく価値を伝えるのがメディアの使命

阿部:メディア「TIMETOCOIN」は個人で立ち上げたのですか?

Kenny:個人ではなく会社で作りました。AppleとGoogleの両アプリもあるので、開発はエンジニアが担当しています。記事は香港や北京の契約ライターが執筆しています。私は編集長の立ち位置ですね。

阿部:反響はいかがでしょうか。

Kenny:PV は1日1000前後とあまり多くはありませんが、それなりに見られています。記事の当たり外れが大きいのが特徴で、ビットコインの価格が上がると一気にPVが上がることもあります。

阿部:わかりやすいですね。記事を制作する際のポイントはありますか?

Kenny: 香港人はせっかちなので、なるべく結論を最初に持ってきてわかりやすい構成にしています。海外メディアだと詳しく長く書いている記事も多いのですが、それだと離脱率が上がってしまうでしょう。香港でInstagramが流行っているのも、画像一枚に情報が凝縮されていて、ぱっと見で必要な情報が伝わるからです。

阿部:今はスマホ社会ですから、情報が溢れかえっていてみんな疲れていますよね。情報を短くわかりやすくして、さらっと読んで理解できるようにする構造は時代に合っていると思います。ブロックチェーンのテクニカルな情報をたくさん書いても、理解してくれる読者は少ないですから。

ウェブメディア戦国時代にブランド力を持つには。ニッチなブルーオーシャンに切り込む「TIMETOCOIN」

Kenny:ブロックチェーンや仮想通貨の複雑な情報を、いかに簡単に伝えるかは大きな課題ですね。

阿部:私たちもそこには苦戦していて、探り探りやっています。日本でも仮想通貨を投機として、儲かるために扱っている人が多いですが、ブロックチェーン技術の本質的な価値を理解する人が増えないと業界は発展しません。

Kenny:メディアとしては、ブロックチェーンの本質的な価値をわかりやすく伝えて普及させたいですね。それが使命だと感じます。

阿部:おっしゃるとおりです。日本は仮想通貨に対するイメージが悪く、ブロックチェーン業界にお金が集まらず苦戦しています。それによって発展が遅れていて、スタートアップ企業も育ちにくい環境です。

Kenny:詐欺事件も起きましたから、誤解されやすい部分は大いにありますね。ブロックチェーンは大きな産業ではありますが、業界に入る人は事前にブロックチェーンの勉強してほしいです。何の職種であれ、ブロックチェーンについてしっかり理解したうえで価値を高め、広めてほしいですね。

 

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ライター/萩原かおり 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

 

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