「Libra」を理解するための3つのポイント

2019.08.24 [土]

「Libra」を理解するための3つのポイント

全世界の誰もが平等に、金融サービスを使える時代は来るのでしょうか。Facebookが発表した暗号資産「Libra(リブラ)」には、そんな時代を早急に実現させようとしている取り組みが伺えます。Libraに対して米国は否定的な意見を表明するなど、各所で議論を呼んでいます。議論を正確に読み解くために必要な基本知識をここでは解説します。

「Libra」を理解するための3つのポイント

Libraは協会の形態を取っています。Facebookが主導していますが、最終的に協会員は100団体とすることで、議決権などのコントロール権限を各団体1%以下となるように調整されます。協会参加には10億円相当の投資が必要になっています。

引用元:Libra協会公式サイト(https://libra.org/ja-JP/

「Libra」を理解するための3つのポイント

協会の構成団体は、世界的に有名な決済業者やベンチャーキャピタルなどが名を連ねています。

引用元:Libra協会公式サイト(https://libra.org/ja-JP/

 

Libraの目的とは?

最低限知っておきたいLibraの特徴を3つまとめます。

Libraの特徴

1.Libraの目的は銀行口座すら持てない人々にモバイルバンキングサービスを提供する
2.Libraは2種類の暗号資産を発行する「Libra コイン」と「Libra Investment トークン」
3.Libra コインを扱えるウォレットは「カリブラ」でFacebookの子会社

それぞれの特徴を解説していきます。

 

1.Libraの目的は銀行口座すら持てない人々にモバイルバンキングサービスを提供する

日本で生活していると銀行口座は必須で、誰もが持っているイメージがあります。しかし新興国に目を向けてみるとまだまだ銀行口座を持っていない人がたくさんいます。世界銀行の調査によれば、全世界で17億人以上の人々が銀行口座を持っていません。

2017年時点で例えば中国では2億2400万人。インドでは1億9100万人もの人が銀行口座を持つことなく生活しています。手元にある現金を安全に保管できないばかりか、ローンを組んで自動車や住宅を購入したりなどのサービスも利用できません。

Libraはそのような人たちのために、Facebookアプリを使ったサービスの提供を目指しています。例えば送金サービスでは、Facebookのメッセンジャーアプリを使って個人間や企業対個人で送金を行うサービスです。

送金は金融サービスの基本と言っても過言ではありません。Facebookやその他のアプリを介してローンの契約ができれば、送金サービスを通じで貸付金を送金し返済金を受け取ることができます。

どのような人にでも金融サービスを提供する取り組みのことを「金融包摂」といいます。SDGs(エス・ディー・ジーズ)という開発目標の一つです。

「Libra」を理解するための3つのポイント

SDGsの17の開発目標。金融包摂は、⑧成長・雇用のテーマの中の一つに含まれています。

引用元:持続可能な開発のための2030アジェンダ(外務省)

(https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/oda/sdgs/pdf/000270935.pdf)

 

2.Libraは2種類の暗号資産を発行する「Libra コイン」と「Libra Investment トークン」

「Libra」には目的に応じて2種類の暗号資産があります。法定通貨や国債などを裏づけに発行して通貨のように利用する「Libra コイン」とLibraの金融機能に対して投資を行える「Libra Investment トークン」の2種類です。いずれもLibra協会が発行します。

・Libra コイン:価格変動を抑えるために複数の通貨・金融商品に裏付ける
・Libra Investment トークン:投資家がLibra協会に対して金銭を払い込む。Libra協会は投資を行った運用益をトークンの保有比率によって分配する

「現代ポートフォリオ理論」という投資の理論があります。この理論では投資先を複数に分散した「ポートフォリオ」を組めば、価格変動のリスクが小さくなり、投資先から得られるリターンが安定します。分散には相関が低い資産を選ぶ必要があります。相関が低いとは、例えばAという金融商品とBという金融商品があったときに、Aの価格が上昇した場合にBの価格は下落するという風に、価格の動きが逆になるイメージです。互いが互いのリスクとリターンを打ち消すので、合計の価格変動が小さくなるとも言えます。

「Libra」を理解するための3つのポイント

Libra コインとLibra Investmentトークンの関係。ユーザーは送金目的のためにLibraコインを取得します。一方で、投資家は投資目的でLibra Investmentトークンを取得します。どちらもLibra協会に対して法定通貨を支払うことでコインやトークンを取得します。Libra Investmentトークンのほうは運用益を獲得できますが、Libra コインを取得したユーザーは運用益を得ることはできません。ユーザーや投資家から受け取った法定通貨は「信託」という仕組みで分離するので、もしLibra協会が破綻した場合でもユーザーが払い込んだ法定通貨が保証されます。

 

3.Libra コインを扱えるウォレットは「カリブラ」でFacebookの子会社

ブロックチェーン技術を使った暗号資産である「Libra コイン」は保管や送金をするために専用のウォレットが必要になります。このウォレットを開発・提供するのが「カリブラ」という会社で、Facebookの子会社です。ウォレットの秘密鍵やウォレット利用者の本人確認はカリブラで行うことで、Facebookと情報管理を分離しています。やはり金融機能をFacebook本体に持たせてしまうと、必要以上に個人情報管理の仕組みが必要になってしまいます。そこでFacebook アプリとカリブラとを分離し、SNSと金融機能をそれぞれ別で管理するようにしたのです。

「Libra」を理解するための3つのポイント

カリブラのイメージ。見た目は他の暗号資産のウォレットと同じです。

引用元:カリブラの公式サイト(https://calibra.com/

「Libra」を理解するための3つのポイント

カリブラの送金の例。Messengerアプリと連携してLibraコインの送金を行います。受け取ったLibraコインはカリブラのウォレットに入りますので、法定通貨にする場合は、カリブラ上で行ないます。

引用元:カリブラの公式サイト(https://calibra.com/

 

日本で扱うにはまだ法規制上の課題が残っている

Libraがリリースされて、実際にLibra コインを持ちたいと思ったときはどのように入手すればよいのでしょうか。

そもそもLibra コインが暗号資産に当たるかどうかが論点になります。特徴2で説明したように、法定通貨や金融資産を裏付けにしていますから、暗号資産ではなくて、金融資産のひとつである「通貨建資産」という整理になるかもしれません。

またLibra コインを一般消費者が得るためには、Libra協会から直接購入することはできません。「認定再販業者」というLibra協会に出資を行った業者から購入する必要があります。Libra コインが暗号資産として認定されるのであれば、現行法だと暗号資産取引所になります。一方で通貨建資産となった場合には、金融商品を扱う証券会社でなければなりません。

いずれにせよ法規制の整備がないことにはLibra コインの購入・販売は難しいのが現状です。

 

まとめ

金融包摂に対して革新的な取り組みである一方、誰もが平等に利用できるサービスでFacebookのユーザー数を考えると、毎日数億数十億といった取引が発生するでしょう。

そうなると、ブロックチェーンのデメリットである拡張性にどのような工夫がされるのかは見どころです。Libraの発表後、世界中で賛否両論が巻き起こっています。今後の動きは注視しておくべきでしょう。

 

文/久我吉史

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