世界的金融都市・香港で生まれたフィナンシャルSNSは金融業界を変えるか

2019.08.20 [火]

世界的金融都市・香港で生まれたフィナンシャルSNSは金融業界を変えるか

香港は世界的な金融都市だ。どの国の企業も自由に競争できる環境があり、世界中から人・モノ・金が集まってくる。その一方で、金融では厳しい審査が行われる。成熟した伝統金融が、これからのフィンテックサービスの成長を阻んでいるのだ。
香港のTideBit社はブロックチェーンを活用したフィナンシャル SNSiSunOne」を開発し、難民など銀行の金融サービスを利用できない人々でもお金の取引ができるサービスを提供。従来の貨幣ではできなかったことが可能になり、失われつつあった金融の自由が人々の手に戻ってきた。IFA社の阿部氏が同社CTOJun Ma(ジャン マー)氏と対談し、伝統金融の課題やフィンテックの可能性、さらに各国の企業がひしめく香港におけるビジネス戦略について伺った。

世界中の人々の半数しか銀行口座を持っていない

Jun Ma私は大学卒業後に創業し、2010年頃にメディア系の開発業務を担当しました。香港の電子グルメ雑誌のアプリ開発を行っていたのですが、2015年頃からブロックチェーンや仮想通貨がブームになり、現在は香港ドルで仮想通貨を購入できる最大の取引所を運営しています。

阿部:「フィナンシャル SNS」というコンセプトで、金融×SNSのプロジェクトも展開なさっていますね。

Jun Ma極論、Facebookのような巨大プラットフォームを作り、既存の金融サービスを利用できないユーザーに向けて「だれでも使えるフィンテックサービス」を提供したいと考えています。現在、世界中の半分の人は一般的な銀行のサービスが受けられません。

阿部:紛争中の国の人々や難民など、自分の口座を持てない人はたくさんいます。一部の人しか銀行を利用できませんね。

Jun MaiSunOne」は国の通貨をベースにして仮想通貨を提供し、だれでも金融サービスを受けられるようにします。 Facebook のようにSNSで世界をつなげれば、香港ドルを仮想通貨に替え、それを米ドルに替えることが可能になります。仮想通貨がワールドコインとして機能するようになるんです。

世界的金融都市・香港で生まれたフィナンシャルSNSは金融業界を変えるか

阿部:仮想通貨をスマートコントラクトで抵当にし、世界各地の現地通貨のコインに両替すると。実際にはどのような手続きをするのでしょうか?

Jun Maだれでも使えるようにしたいので、あえて独自機器を使わず、ATMなど従来の機器を通じて展開しています。現金をATMに入れると仮想通貨に変換されて、他国で現地通貨にして出金できる、といった流れです。

阿部:従来の手続きよりも簡単ですね。

Jun Maええ。一般的な銀行の手続きであれば、口座開設する際に本人の身分証などの書類手続きが必要ですが、仮想通貨はそうした本人確認などの手続きが不要です。香港や日本のユーザーであればこうした手続きが当たり前にできますが、難民など、世界の銀行口座が持てない人々にとっては簡単ではありません。

阿部:ほかにもメリットはありますか?

Jun Ma顔認識と指紋認証の機能があり、極論カードや携帯がなくても取引できます。現在はATMを介していますが、将来的にはスマートフォン同士で送金できるようにする予定です。
スピーディーな取引により、ビットコインを通じた投資活動が可能で、ビットコインを抵当にして現金を得ることもできます。ビットコインを売らずに現金を手にすることができるのです。今は銀行にお金を預けても利息は1%ほどですが、仮想通貨だけのファンドに投資すれば5%ほどの利息になります。

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阿部:こうした新サービスができると銀行の利用者が減る可能性もありますが、銀行には嫌がられませんか?ターゲットが違うから大丈夫でしょうか。

Jun Ma銀行口座を作れない人々がメインターゲットなので、銀行とは敵対していません。銀行口座を持たない人々は、働いても現金しか受け取れず、紛失や盗難といったリスクと常に背中合わせです。銀行のサービスを使いたくても使えない人々に、信用できる資産の守り方を提供し、金融の自由を与えたいと考えています。

「自由の港」香港が抱える不自由

Jun Ma拠点は香港ですが、アメリカ、日本、台湾、中国、マレーシア、シンガポール、トルコに支店があり、世界中の人々に向けてサービスを提供しています。ただ、銀行口座を持てない人々はアフリカなど東南アジアに多く、メインで展開したいのはこうした国々です。

阿部:香港の特徴について教えてください。

Jun Ma香港は、銀行口座を作るのがとても難しい国です。「自由の港」と呼ばれていますが、中国の法律を守らなければいけないうえに、アメリカやユーロの法律も守る必要があります。いずれかの国のブラックリストに載っている人は口座開設できません。世界の金融のハブということもあり、とても厳しい基準で審査しているんです。そのため、フィンテックが発展しやすい環境ではありませんね。

阿部:香港の口座を持っている日本人はとても多いので、意外です。

Jun Maあくまでもフィンテックの話なので、従来の伝統金融とは別の話です。金融においては、香港はニューヨークとロンドンに並ぶ世界的な都市ですから。

阿部:香港証券取引所は世界で一番古い証券取引所の一つですよね。

Jun Ma困ったことに、従来の伝統金融が発展したことで、かえってイノベーティブなビジネスは資金調達しにくくなりました。わざわざ挑戦しなくても、香港の金融業にはお金がザクザク入ってきますから。香港証券取引所は、世界で一番大きいマイニングカンパニーですら上場できませんでした。

阿部:日本も伝統金融が多く、ルールを守らないと受け入れられません。イノベーティブな会社が上場できないこともよくあります。どうしたら従来の金融業界にも理解され、融資を受けられるのでしょうか。

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Jun Ma上場するなら、証券取引所の人がわかりやすいキャッシュフローを描くことです。たとえば不動産会社はキャッシュフローがわかりやすいので上場しやすいでしょう。これからマイニングファームのリリース業を行う予定ですが、場所を人にリリースするビジネスモデルは不動産業に近いので理解されやすく、融資を受けやすいでしょう。

阿部:わかりやすいキャッシュフローのビジネスで資金調達する。香港におけるビジネス戦略だと言えそうです。

Jun Ma私たちはグループ企業で複数の会社がありまして、わかりやすいキャッシュフローの事業は香港取引所に上場しているTideBitで運営します。それによってスムーズに資金調達でき、イノベーティブな取り組みに資金を回せるのです。

阿部:なるほど、しっかりとしたレギュレーションができていますね。

Jun Ma金融は発展に伴って自由が奪われている部分があります。情報とお金が銀行に集約し、かえってユーザーの自由が奪われている。スマートコントラクトで運営するフィンテックサービスなら、夜逃げや詐欺といった事件も起こらず、だれもが信頼して取引できるようになります。「フィナンシャル SNS」という新しいコンセプトで社会を変えたいです。

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阿部:楽しみです。将来ブロックチェーン業界に入りたい人に向けて、一言いただけますか?

Jun Ma政府がお金をたくさん発行しても、お金持ちの人がどんどん豊かになり、貧しい人はどんどん貧しくなるばかりで、経済は良くなっていません。ブロックチェーンはそんな社会構造を変える力がある。社会を変えたい方は、ぜひ参加してください。

AIre VOICEではブロックチェーンの最新ニュースはもちろん、さまざまなバックグラウンドを持った方へのインタビュー・コラムを掲載しています。ぜひご覧ください。

ライター/萩原かおり 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

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