物流もフィットネスもブロックチェーンで効率化。「アナログの最適化」を実現する

2019.08.16 [金]

物流もフィットネスもブロックチェーンで効率化。「アナログの最適化」を実現する

運送や通関業務をサポートする貿易会社「Shanghai Transport China Logistics International Co., Ltd」、パーソナルトレーニングジム「BESTA」を展開する「RILISIST株式会社」の代表取締役を務める黄皓(コウ・コウ)さん。

まったく異なる業態を率いて新規事業の立ち上げにも挑戦する青年実業家は、「ブロックチェーンは確実にビジネスをドライブさせる」と語る。黄さんがビジネスパーソンとしてどのようなキャリアを歩んできたのか、そしてブロックチェーンにどのような期待ができるのか、インタビューを実施した。

大手商社から経営者へ。自分の力を試したい

――本日はお時間をいただきありがとうございます。まずは黄さんご自身のご経歴を伺えますか?

黄:新卒で三菱商事に入社、最初は鉄鋼製品のトレーディングを行う事業投資先の管理部門に配属されました。1年間の研修を経て、三菱商事と双日の合弁会社で、鉄鋼・鉄鋼原料の卸売販売を行うメタルワンへ出向し、中国語のスキルを活かしてアジアを中心にステンレスの営業に従事しました。

当初から海外向け鉄鋼製品拡販を担当してきましたが、仕事の内容は、自らホームページを調べて工場に足を運び、ステンレス材を買ってもらうという泥臭いものでしたね。ステンレス領域にはまる企業なら、どんな国のどんなお客さんでも良かったので、コンタクトした企業はトータルで1000社を超えたと思います。
そのときに、世界的規模を誇るIT企業に、知名度はないけれど研磨の技術力が高い取引先の製造工場の製品を売り込んだんです。さまざまな試行錯誤や製品開発も行い、結果、採用になり、製品の一部にメタルワン経由で日本の高品質ステンレス材の商流を確保することが出来ました。

その後、メキシコの自動車産業に取り組みたいという会社の意向で、ローカル企業に営業するためにメタルワンの現地法人にマネージャーとして駐在しました。スペイン語しか通じない場所だったので、言語の壁にぶつかりながら部下をマネジメントするという怒涛の日々を過ごしましたね。アジア、そしてメキシコと、異文化に身を置いて仕事をすることは楽しかったですし、やはり生活や経済のインフラに関わる仕事をさせてもらえたのは貴重な経験でした。

ただ、入社から6年ほど経った頃、徐々に新しい分野にチャレンジしたい気持ちが高まりました。あとは、自分自身の力を試したかったのも理由のひとつですね。当時の副社長に「君たちが仕事できるのは三菱商事という看板があるからだ。だから、どこに行っても拒否されないし、話を聞いてもらえるんだぞ」と言われたんです。それがとても刺さって、ビジネスパーソンとしての真の価値を確かめたいという気持ちが生まれました。

そして、20163月末で三菱商事を退社し、父が創業したShanghai Transport China Logistics International Co., Ltdに入社しました。主要顧客は中国に生産拠点を構えるアパレル企業や繊維商社が多く、工場から日本の店舗に商品が並ぶまでの国内外輸送や通関業務、在庫まで一気通貫のサービスを提供させて頂いております。

20184月には代表取締役を拝命、家業を継ぐことになりました。同時期には、かねてより関心があった自己啓発を手助けするサービスを展開したいと考え、パーソナルトレーニングジムを手掛ける会社を立ち上げることを決めたんです。

物流もフィットネスもブロックチェーンで効率化。「アナログの最適化」を実現する

キャリアとまったく関係ない事業を始めたきっかけは、子どもの頃の経験です。ちょうど中学生の頃に中国を離れ日本に定住したのですが、ルックスも服装も外国人っぽくて、いじめというか好奇の目で見られました。思春期真っ只中だったこともあり、しばらく学校に行くのがつらかったですね。
でもあるとき、それまで通っていた理容室ではなく、美容室で髪を切ったら、クラスの皆から「いいじゃん!」って褒められたんですよね。大人になっても、友だちから肯定されて感じた当時の喜びを忘れていなくて、自己啓発につながるサービスを展開できたらいいなという想いがありました。そのため「BESTA」では身体を鍛えるだけではなく、ファッションやメイクなど、トータルプロデュースしています。

現在、僕もトレーナーとして教えています。これまでtoBビジネスだったので、toCビジネスで「痩せた」「恋人ができた」というお客様の声を聞けたり、喜ぶ姿を目の前で見られたりするのは嬉しいですね。

利便性と安全性を両立するブロックチェーンで管理負荷を軽減

――通関・輸送にまつわる業務と、ジムの運営において、ブロックチェーンの可能性やメリットをどのように捉えていらっしゃいますか?

通関や輸送の分野は徐々にデジタル化されているとはいえ、いまだにアナログ管理が多くて手間が掛かるのですが、こうした業務の軽減、効率化ができるのではないでしょうか。

例えば、通関業務では輸出国で輸出通関の際にデータや書類を提出して、審査や手続きを行うのですが、輸入国でも再度同じプロセスが必要です。審査では、商品の種類、数、品番、サイズ、重量、価格などを申告しなければなりません。これをアナログな申告方法で2度繰り返すわけですから、相当な手間が掛かります。日本から中国に船で輸送する場合、トータルで2週間ほど掛かりますが、実際は海上で輸送している日数は47日くらい。残りの7日は税関での申告に掛かっています。メーカーからすると、販売の機会損失になりかねません。

物流もフィットネスもブロックチェーンで効率化。「アナログの最適化」を実現する

もしブロックチェーンが導入されれば、各国の税関が情報を共有してスムーズに輸入でき、総輸送日数もコストも大幅に削減できるはずなので、効率的になると考えています。

また、ブロックチェーンは全体の監視によって管理できる安全性があります。1社がデータを管理していると、もし損壊したらバックアップが大変です。でも、全世界の人間が管理できる状態にしておくと安全性が担保されますよね。

もうひとつのメリットは、資金移動の利便性と安全性を両立できる点です。日本は資金移動が原則銀行でしかできません。中国だと資金移動はチャット上でできるので、個人間の資金移動ができるんですよ。これは、ものすごく便利な一方、管理されていないので贈与税の脱税も簡単にできてしまうんです。そこについても、しっかりトレースできるブロックチェーンの活用メリットがあると思います。

そしてジムの分野では、個人情報の管理がスムーズになると思います。たとえば、ジムに入会するときしかり、何かしらの会員に登録しようと思うと、その都度住所・電話番号・年齢・氏名を書きますよね。でも、ブロックチェーンで一括管理できれば、個人情報をいちいち申告しなくてもいいですし、どこでも均一のサービスが受けられるようになるはずです。考慮しないといけないのはプライバシーの問題ですが、どこにどこまで開示するかについては、個人の方が開示する先と中身を選べるようにできればいいと思います。

物流もフィットネスもブロックチェーンで効率化。「アナログの最適化」を実現する

デジタル化により、信頼を生むアナログ業務に注力できる

――ブロックチェーンによる業務の効率化と管理の最適化は、ビジネスにおいてどのような好材料になると思われますか?

お客様とのコミュニケーションの時間を最大化し、信頼を生み出せることですね。僕はアナログのまま続けるべき業務と、デジタル化でどんどん効率化するべき業務があると思っています。

たとえば「A 地点からB地点に荷物を動かす」という輸送・通関業務をアナログで行うメリットは“信頼”にあります。ビジネスにおいては“信頼”も欠かせない判断基準です。ジムのようなtoCビジネスでは、特にアナログなコミュニケーションが欠かせません。
信頼を生む重要なアナログ業務に注力できるように、作業的な管理業務はブロックチェーンなど確実なテクノロジーに委ねるのがベストです。

――では、最後にこれからチャレンジしてみたいことを教えてください。

今後は、オフィス向けにジムのビジネスを拡大していきたいです。すでにシェアオフィスへの展開が決まっているのですが、仕事の合間に10分くらいマッサージができるスペースをつくろうと思っています。いずれは、大きな企業でも人材確保の福利厚生として採用してもらいたいですね。あとは、化粧品も手掛けたいと思っています。

ブロックチェーンはまだ導入していませんが、コストスケールが小さくてカジュアルに使えるプラットフォームサービスがあれば積極的に活用して、現在手掛けている事業を加速させていきたいです。

――貴重なお話をありがとうございました。

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ライター/末吉陽子 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

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