世界的大手企業が口コミで集まるデータベースサービス。データパラドックスからの脱出劇

2019.08.09 [金]

世界的大手企業が口コミで集まるデータベースサービス。データパラドックスからの脱出劇

デジタル時代に競争力を維持するにはデータの共有が必要不可欠だが、誤用や紛失などのリスクは高まる。これをデータパラドックスと呼ぶ。ブロックチェーンを使ったデータベースサービス「Gospel Technology」を提供するイギリスのテック会社「Gospel(ゴスペル)」は、高い技術力をもってヨーロッパのGDPREU一般データ保護規則)に適応したオリジナルチェーンの開発に成功。高い信頼性を確立し、世界的大手企業が口コミで集まった。

今回、同社のReuben ThompsonVP Technology)とAIre VOICE編集長の大坂氏が対談。後編では、データの信頼性と安全性を担保するにはどうしたらいいのか、そしてブロックチェーン業界の魅力はどこにあるのかを伺った。

口コミで広がった世界的企業の顧客ネットワーク

大坂:Gospel Technologyが使っているオリジナルチェーン「ゴスペルチェーン」の特徴を詳しく教えてください。

Reubenゴスペルチェーンは個人の許可を得たブロックチェーンで、同じデータをノードへコピーすることでアクセスを厳密に制限し、効果的なコンセンサスセキュリティを維持しています。データの取り扱いに特化した機能性があり使い方が限定されるため、現段階ではベースにゴスペルチェーンを使っている他社サービスはありませんが、オープンソースなのでぜひ使ってほしいとは思っています。

大坂:オープンソースなら、ソースコードからプログラムの構造や動作原理が把握できますから、バグの修正もしやすくなりますし、他社のプログラムに組み込むことでますます発展していきそうですね。Gospel Technologyのプロモーションはどのように行っていますか?

Reuben現在はサプライチェーンのクライアントが口コミで広めてくれています。お客様からお客様へとネットワークが広がっていくのは理想的な形ですね。

大坂:それだけ評価されているサービスだという証になりますね。自社発信の情報より他者発信の情報が信頼されますから、そうした口コミが生まれると新規顧客を獲得しやすくなります。最高のプロモーションだと言えるでしょう。

500万ポンド(約68000万円)もの資金調達に成功したのも、こうした高い評価によるものでしょうか。

世界的大手企業が口コミで集まるデータベースサービス。データパラドックスからの脱出劇

Reuben資金調達が順調にいった最大の要因は、顧客の多くが世界中どこにでもあるような大手企業で信用を得やすかった点にあると思います。もちろん、良い評判があるからこそ、こうした大手企業がGospel Technologyを利用してくれているのですが。

大坂:インフラ企業が多く利用しているのもアドバンテージだと言えそうですね。インフラ企業はたくさんのデータを取り扱うでしょうから、それだけデータ保護にも注力する企業が多いでしょう。

Reuben従来のインフラの構造はデータ移動を防ぐことに重点が置かれているため、複雑なセキュリティ層の下でデータを保護しています。この構造だと従業員が共同作業するたびにデータ通信することになり、データが侵害されやすく管理不能にさらされやすいというデメリットがあります。

大坂:データパラドックスに陥ってしまうと。

Reubenええ。すべての企業がデータへの絶対的な信頼を維持しながら安全にデータを扱えるように、ノードの分散ネットワークを構築し、すべてのノードの優先合意によってトランザクションまたはアクセスが承認されるモデルを作り上げました。

ブロックチェーンに書き込まれた情報は削除できず、チェーンデータ上で発生したすべてのトランザクションは追跡・監査可能です。

大坂:客観的な合意形成ができるようになり、セキュリティも強化されますね。信頼性と安全性を両立できています。

ブロックチェーン業界は、世界的大手も虜にする技術力を培える

大坂:日本人は新しい分野には保守的な傾向があり、ブロックチェーンの浸透もまだまだです。たとえば中国は国が新技術に投資していますが、イギリス、あるいはロンドンはいかがでしょうか。

Reubenイギリスはヨーロッパ内では保守的なほうだと思います。ただ、アメリカや南ヨーロッパは大規模なプロジェクトを多く推進しているのですが、イギリスは細部まで固めたプロジェクトが多いのが特徴です。

弊社はヨーロッパやサンフランシスコにもオフィスがあって常にイノベーティブなことをしようとしているため、Gospel Technologyは先進性と保守性を併せ持っており、使用者からの評判も良いですね。

大坂:使用者から信頼されているのですね。日本でもブロックチェーンは注目されているのですが、新しい領域なので人が集まりにくく採用に苦戦しています。「まだ新しい業界だから、これからどうなるかわからない」と不安視する人が多いんです。

実際にブロックチェーン業界で働いていて、どんなやりがいを感じますか?

Reubenゴスペルの実例を踏まえて「何を解決できるか」をお客様に提示できる点にやりがいを感じますね。もちろんブロックチェーン技術は発展途上ですから、現状のブロックチェーン業界は未熟ではあります。ただその分だけ伸びしろがあり、弊社にはその可能性に着目した優秀な人材がたくさん集まっています。

大坂:なるほど、優秀な人材に囲まれて仕事できるのは大きな財産になりますね。キャリアアップにつながります。

Reubenまだ解決できていない課題を解決できる可能性を持っている業界で、優秀な人々とともに働いてキャリアアップできるのは大きな魅力です。これから先も企業から必要とされ活躍できる人材を目指すなら、これほど適した業界はありません。

大坂:2020年代も活躍できる人材を目指すにはうってつけですね。テクノロジー分野は未来性のある業界ですが、特にブロックチェーン業界はこれから大きく拡大する可能性が高いと感じます。

世界的なニーズがあり自国内だけでなく他国でも活躍しやすい業界なので、グローバル人材を目指せるでしょう。今回は貴重なお話をありがとうございました。

AIre VOICEではブロックチェーンの最新ニュースはもちろん、さまざまなバックグラウンドを持った方へのインタビュー・コラムを掲載しています。ぜひご覧ください。

ライター/萩原かおり 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

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