LINEはなぜ銀行を作るのか?

2019.07.24 [水]

LINEはなぜ銀行を作るのか?

コミュニケーションアプリで有名な「LINE」が総合金融サービス企業になろうとしています。2019年5月27日には「LINE Bank設立準備株式会社」の設立を発表しました。日本の金融サービスの一端を担ってきた「みずほ銀行」と共同で行う銀行ビジネスのための会社です。他にも大手証券会社である「野村證券」と共同で行う証券会社「LINE証券」や「LINEほけん」、「LINEスマート投資」などの金融ビジネスに手を出しています。

 

Line Payで個人の購買情報を取得して与信に活用する

なぜLINEは銀行ビジネスを始めようとしているのか。ひいてはなぜ総合金融サービス企業になろうとしているのか考えてみたいと思います。

LINEはなぜ銀行を作るのか?

金融サービスの資産運用領域ではLINEスマート投資を500円から始められるワンコイン投資のサービスを始めており、今後の本格化に注目です。

引用元:https://linecorp.com/ja/pr/news/ja/2019/2692

 

LINEが行っている金融サービスといえばキャッシュレス決済の「LINE Pay」でしょう。ヤフーが手掛ける「PayPay」との市場獲得競争でのバラマキ施策を行うなどして、キャッシュレス界を賑わせています。LINE Payで支払いを受け取る加盟店の手数料は無料で、利用者には利用額の3%程度が還元されます。これではLINEが損をする一方で、ビジネスをやる意味がないのではないでしょうか。

 

しかし見方を変えると、金融サービスに役立てるために個人の購買情報の収集をする必要があり、あえてバラマキ施策を行っているのかもしれません。

 

LINE Payを使う利用者の購買情報を取得すると、そこにはその利用者のお金使い方の癖が見えてきます。この情報を基にしてその人の信用力を査定し、お金を貸すことができれば、銀行が行うローンの審査よりも精度が高い審査ができると言えます。

 

購買情報が絡んだ信用情報は、銀行だと取得することができませんし、従来の銀行がローン審査で行うときに使う「個人信用情報機関」の情報と比べると、実績ベースのデータなので信頼度が高いです。そのため、より効率に有効的にお金を借りたい人にアプローチすることが可能となるのです。

LINEはなぜ銀行を作るのか?

LINE Payは LINE上から起動できるキャッシュレス決済アプリ。個人間送金のほか、LINE Pay カードというJCBブランドが付いたデビットカード機能があり、チャージした分を上限にカード決済ができます。

LINEはなぜ銀行を作るのか?

個人信用情報の例(全銀協の場合)。ローンの貸付額や残債額、入金履歴などの情報が記録されています。銀行はこの情報を参照し融資可否を判断します。

引用元:https://www.zenginkyo.or.jp/fileadmin/res/abstract/pcic/open/kaiji_viewpoint.pdf

 

そもそも金融はデータのやり取りが主なのでネット系ビジネスと親和性が高い

LINEはなぜ銀行を作るのか?

ではなぜLINEは金融ビジネスに注目したのでしょうか。「儲かりそうだから」という答えだとそこで思考が止まってしまいますので、さらに踏み込んで考えてみましょう。

 

そもそも金融ビジネスはデータのやり取りが基本となっています。例えば銀行振込。ATMで自分の口座に現金を入金する必要がありますが、その後は受取先の口座番号と金額を入力して振込を行えば、相手の口座残高が増えます。この時、瞬間的に現金が相手のところに転送されるわけではありません。

 

ネット系ビジネスを行う企業にとって、より利用者の生活を便利にしようとするならば「金融ビジネス」が必須となるのです。メッセージに金融データを含めて相手に送ったり、スマホからワンタッチでお金を借りたりできれば、その利用者の生活時間を節約でき、またより豊かな生活が送れるようになるからです。

ユーザー数8000万人以上を数えるビジネス基盤を持つLINEにとってみれば、コミュニケーションアプリとして確固たる地位を確保したので、次は利用者の生活を便利にしようとしたくなるはず。それでいて新たな収益源を確保できるのが金融ビジネスというわけです。

 

しかしお金を扱うビジネスは規制で囲われています。そのため当局の規制対応の経験が豊富でデータも大量に蓄積できている銀行と手を組んだ方が早いと考えて、みずほ銀行と手を組んだわけです。同じ理由で証券ビジネスの領域では野村證券と手を組んだと考えてよいはずです。

 

2018年11月27日に行われたLINE Bank設立発表当初のみずほ銀行の発言では「与信周りでは黒子に徹する」という風に、銀行ビジネス特有の部分に特化して協業を行うことを示唆しています

。一方、LINEは、初心者でもわかりやすい画面インターフェイス作りなどに長けています。お客様にサービスを提供したり説明したりする表面はLINEが担当し、与信などの銀行業務を行う裏面はみずほが担当することで双方の相乗効果が期待できるでしょう。

LINEはなぜ銀行を作るのか?

まとめ

LINEのユーザーは普及率見ると10代が一番高いのですが、実際のユーザー数では40代が一番多いという調査結果もあります。

「LINEが金融ビジネスを行う」と聞くと無意識に若者向けのサービスではないかと想像しがちです。しかしLINEと組む相手であるみずほ銀行や野村證券は、若者というよりは中高年の客層のほうが多いはずで、その中高年が使いやすいスマホ金融サービスを提供できれば、中高年向けのスマホ金融サービスとしてLINEとみずほ双方に利益が上げられるでしょう。

そんな思惑がLINEの銀行にはあるといえるでしょう。

 

取材・文/久我吉史

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