日本のマンガ・アニメ・ゲームで世界を席巻! 15年以内に和製ディズニーを目指す

2019.07.26 [金]

日本のマンガ・アニメ・ゲームで世界を席巻! 15年以内に和製ディズニーを目指す

日本が世界に誇れるコンテンツであるアニメや漫画は、日本国内では「サブカルチャー」として、本筋から外れた文化として見做されている。

そんなコンテンツをビジネスチャンスと捉え「知的財産ビジネス」で世界一、和製ディズニーを目指すと豪語するのが株式会社ダブルエル 代表取締役の保手濱 彰人氏(ほてはま・あきひと)だ。

東京大学を中退後、2014年にダブルエル社を創業し、毎年高い成長率で売り上げを伸ばしてきている。地頭がよく、ビジネスセンス抜群な保手濱氏が考えるこれからのコンテンツビジネスについて話を伺った。

 

分業化している日本のコンテンツ産業を一気通貫でつなぐ

「アニメやゲームキャラクターを使った日本のコンテンツ産業の売上高は、まだまだ伸びしろがあります。なぜなら日本のコンテンツ産業は、ウォルトディズニーのような企画から配信・二次利用までの一気通貫でのビジネスモデルを築けていない。そこを再構築できればまだまだ成長の余地がある」(保手濱社長)

 

コンテンツの知的財産を扱う上場企業の最大手である「バンダイナムコホールディングス」の2019年3月期の売上高が約7320億円なのに対して、世界最大のエンタメ企業である「ウォルトディズニー・カンパニー」の2018年9月期の売上高は約6.5兆円(594.34億米ドル)である。

その差は約10倍もある。差が生まれている原因を保手濱氏は、日本のコンテンツ産業は分業体制で、一気通貫でのビジネスモデル体制が築けていないからだと分析している。

一気通貫でのビジネスモデルとはどういうことか。IT業界で最初に時価総額100兆円を達成した「アップル」を例にすると分かりやすい。

アップルの場合は、読者の皆さんもご存じの通り、ハードウェア、OS、iTunesのようなコンテンツサービスまで全て自社で製造・開発・運営している。

まさに、スマートフォン産業の構造を一気通貫で担っているわけだ。ビジネス用語だと「垂直統合」や「ヴァーティカル・インテグレーション」と言ったりする。

ユーザーが求める機能や使い勝手を実現しやすくなり、他社に比べた競争力が高くなり、付加価値が加速度的に大きくなっていく。

ウォルトディズニーではどうか。作品やキャラクターの企画から、映画館での上映、グッズなどの版権提供までを一気通貫でできている。

 

「産業構造に加えて、労働環境にも大きな違いあります。

海外だと、質の高い労度環境で高い報酬を得たクリエイターが活き活きと制作していますが、国内だと、優秀なクリエイターを劣悪な環境で長時間の労働させていることが多いです。そのため国内のコンテンツ業界を再編したいと強く考えています」(保手濱社長)

 

版権ビジネスを行なう上で、そもそもの版権の対象となるコンテンツを一気通貫で調達し、収益をあげようと目論む保手濱社長が掲げるダブルエルのビジョンが「コンテンツ業界を再編し和製ディズニーになる」こと。

達成できた暁には、質・売上ともに世界一のコンテンツ産業企業になりそうだ。

では、一気通貫のビジネスモデルを構築するために具体的には何をしているのか?

 

「全て自社でやろうとせずM&Aでサプライチェーンのキーとなる企業をグループ化していっています。創業から今までで5社をM&Aで獲得しました。ファイナンスと組み合わせて非連続的に成長しています」(保手濱社長)

 

M&Aというといいイメージがないという方もいるかもしれないが、保手濱氏は交渉をするときは敵対的に話をするのではなく、「日本のコンテンツ産業がもつ課題を解決したい」と交渉先に語りかける。

交渉先の経営陣も課題を感じているが、解決するためのビジネス機能を構築するにできていなかった。

そのビジネス機能をダブルエルが担うことで、両者の思いが合致しM&Aが成立している。保手濱社長の手腕が存分に発揮されていることだろう。

日本のマンガ・アニメ・ゲームで世界を席巻! 15年以内に和製ディズニーを目指す

いい出口がコンテンツホルダーとの出会いを生む

しかし、M&Aした企業はうまく保手濱社長の考え通りに機能しているのだろうか。

 

「もちろん機能しています。よい出口があると版権を持つ企業が自社を頼ってくれるし、よい入口があるおかげで、企業価値が高まり。さらによいコンテンツ産業企業との出会いが生まれています」(保手濱社長)

 

ここでいう入口とは、実際のコンテンツ制作を行う企業や版権を持つ企業のことで、出口とは版権を使ってグッズなどを制作する企業のこと。

ダブルエルでは、入口側として「シティコネクション」社を、出口側では「キャラアート」をそれぞれ子会社として持っている。

シティコネクションはかつて日本に存在した「ジャレコ」というゲーム会社が開発したゲームの版権を現在所有している企業。「ゲームリブート事業」として「Nintendo Switch Online」や「プレイステーションネットワーク」でゲームを配信している。売り上げの多くが海外を占める。

キャラアートでは、版権モノのグッズやイラストコンテンツを制作している。最近では、中国の杭州に拠点を作り中国での展開も仕掛けているが売上が好調であるという。

 

まとめ

コンテンツ産業に一石を投じるだけではなく、産業構造に破壊的なイノベーションをもたらそうとしているダブルエル社。スタートアップ企業ながらM&Aを繰り返せる資金調達力やビジネス力が保手濱社長の強みだ。

「日本の大手コンテンツ産業企業の社長に就任できたとしたら、売り上げを1桁2桁増やす自信がある」(保手濱社長)と自信溢れる姿も印象的だった。

日本のマンガ・アニメ・ゲームで世界を席巻! 15年以内に和製ディズニーを目指す

2002年 東京大学理科Ⅰ類に入学。
2005年には「東大起業サークルTNK」を設立し、経産省支援のビジネスコンテストにおける優勝経験などを経て、2006年に起業。
2014年にジャパンコンテンツの国際展開を行う(株)ダブルエルを設立。和製ディズニーの事業戦略をビジョンとし、海外での戦いに向け、現在様々なコンテンツプレイヤーを仲間に巻き込み中。

取材・文/久我吉史  撮影/関口佳代

この記事をシェア