レストランやホテルなどの宿泊施設、映画や本といったコンテンツなど、普段の生活の中で口コミ評価を参考にしたことは誰にでもあるだろう。
ユーザーが実際に体験した評価である「口コミ」は、情報の質が命となる。特に高価なものほどしっかり検証したいし、いい加減な情報に惑わされたくない。
そんな口コミの質にトコトンこだわった、マンション・アパートの口コミサイトが「マンションノート」だ。運営企業である株式会社レンガの代表取締役社長 藤井 真人氏(以下、藤井社長)は、「くらし」をキーワードに、「人生を助けるサービスをつくりたい」と語る。
今回のインタビューでは、普段は聞けないような口コミサイトを運営するための極意を存分に語ってもらった。
ヒトの目とITシステムを組み合わせ、口コミ精度をアップ
「口コミの品質を高めるために、マンションノートに投稿してもらう情報は、良い点と悪い点の両方を記述してもらいます。さらに情報の信ぴょう性を審査するため200弱のチェック項目があります。システムと人の目とを組み合わせています」(藤井社長)
システムと人の作業を組み合わせるというのは一見すると至極当たり前のことである。「マンションノート」の場合は、人が行なう作業の部分を仕組み化・効率化することで、審査作業の生産性を極限まで高めているのが特徴だ。
AIを使って、どんなに高度な形態素解析を行ない、自動で情報の信ぴょう性を判定したとしても、最後は人の目でチェックしなければ情報の質は、ある一定レベルで頭打ちになってしまう。
「ヒトの作業とシステムを組み合わせた“仕組み化”が重要」と、藤井社長がインタビュー中になんども繰り返していた。
実際の「マンションノート」の審査では、投稿されたすべての口コミに対して、ITシステムの自動審査が行われる。それと併行して、同じくすべての口コミに対して人の目でチェックがかかる。
人が行なう審査項目は200弱にものぼるが、審査業務を仕組み化することで誰でも同じ質で作業ができるようになっているという。
これらの取り組みにより情報の質が高まり、今となってはユーザー同士による「衆人環視」の目が効き始めている。つまり、実際に住んでいる人やマンションのオーナー、管理を行う不動産屋によって誤りの指摘・修正が行なわれているのだ。
「自分が住んでいるマンションの口コミでもし事実と違うことが書かれていたら、そもそも気になりますよね」(藤井社長)
信ぴょう性が高そうな情報が書かれている中で、誤りの記述があると余計に気になるので、口コミの自浄作用が働きやすいというわけだ。
マンションノートに投稿されている実際の口コミの例。この例では実際にマンションに住んでいる人のコメントなので内容が具体的。これから住もうとしようとしている人にかなり役立つ情報だ。
大切なのは信頼できる情報、だから中立の立場を徹底する
マンションノートのビジネスモデルに注目してみよう。
そもそもマンションノートは、自分が口コミを投稿しないと、サイト内の他の口コミが見られない仕組みとなっている。その前提で、以下の2つのモデルがある。
①サイトアフィリエイトとして広告収入を得る。
②毎月一定量の口コミを閲覧する対価として月額課金収入を得る
順に詳しく見ていこう
①サイトアフィリエイトとして広告収入を得る
法人からの収益。マンションノート上にGoogle アドセンスの広告リンクを貼ったり、大手マンション情報サイトであるSUUMOやHOME’Sなどの空き物件情報リンクを貼ったりして、問い合わせが発生する度に広告報酬を得る。マンションノートには不動産会社や不動産仲介会社から個別に受注する広告枠が存在しない。
②毎月一定数の口コミを閲覧する対価として月額課金収入を得る
個人からの収益。どうしても口コミが書けない人や、お金を払ってでも口コミを読んでみたい人向けの月額課金モデル。3段階の課金モデルがあり、中心的なプランはベーシックプラン(1,980円/月)で、20マンションまたは20エリアの口コミが見られる。
「実は当社には広告営業担当がいません。一方で不動産情報サイトの運営企業様から提携のご依頼は多くいただきます。不動産のデベロッパー様から大きな広告枠が欲しいという問い合わせも受けますが、情報の中立性を損なう、もしくはユーザー様が見た時に中立性について誤解を招くような広告掲出の依頼は全てお断りしています」(藤井社長)
そもそもマンションの情報を得ようとしている人のほとんどが、SUUMOやHOME’Sなど複数の不動産情報サイトで情報を収集した後、比較・検討するのではないだろうか。
その中の一つとして「マンションノート」がある。「マンションノート」は中立的な口コミ情報をユーザーに提供し、不動産情報サイトへの流入を促す役割になっているので、実は協力関係にあると言ってよい。
むしろ大手不動産情報サイトの掲出物件情報が集まってきているので、ユーザーは「マンションノート」で大手不動産情報サイトの掲出物件情報を横断的に検索しつつ口コミも同時に確認するということもできるのだ。
「以前に町の不動産屋さんのお話を聞いたことがあります。来訪するお客様が“マンションノートにこんなことが書いてあったんだけど本当?”などと質問してくるようになってきているそうです。
そのため、不動産屋さんの営業担当者がお客様に先回りして口コミ情報を得るためにマンションノートを事前にチェックしてその良い点を伝えることで営業ツールとしてもご利用いただいたりしているようです」(藤井社長)
マンションノートが中立的な立場を維持することで、不動産会社もマンションノートから得た情報をお客様に話すと説得力が増す。むしろ売上のために情報の中立性を崩してはいけないのだ。
「我々はひたすらユーザーのほうを向いて質の高い情報を提供していきたい。マンションを買おうとしている人が、そのマンションの入り口で実際の住人に声をかけて住み心地についてヒアリングすることは普通できませんよね。
殆どの人にとっては一生に一度の買い物で、賃貸でも次の更新日の2年後まで引っ越しは難しい。
でも一度決めてしまったら住まいは日々のQOLに大きく影響します。そんなユーザーが求める情報を的確に橋渡ししてあげたいのです」(藤井社長)
まとめ
マンションノートの目標は日本全国にある、あらゆる集合住宅の情報を網羅することであるという。
「誰にとっても完璧なマンション・アパートはありません。しかし造り手の想いが込められているからこそ誰にとっても良い点が無いマンションもありませんよね。」(藤井社長)
例えば、首都高速の横にあるマンションを例にとると、「排気ガスで洗濯物が汚れる」という悪い点をいう人もいれば「目の前に首都高速の入り口があるから便利」と良い点をいう人もいる。
それぞれの集合住宅が持つ個性を正しく発信し、徹底的に情報を追及していくことが、マンションノートひいては藤井社長の掲げる目標なのだ。
株式会社レンガ
代表取締役 藤井 真人
大手広告代理店である博報堂でキャリアを積み、ファッション通販サイト「バイマ」を運営するエニグモ(現在東証一部)を共同創業し取締役COOを務めた。スタートアップの立ち上げが得意で、20代前半にも立ち上げ経験がある。
運営サービス:マンションノート(https://www.mansion-note.com/)
取材・文/久我吉史 撮影/関口佳代