究極のブロックチェーン技術は共産主義社会を実現し、貿易戦争の解決にも貢献する

2019.07.04 [木]

究極のブロックチェーン技術は共産主義社会を実現し、貿易戦争の解決にも貢献する

非現実的な理想論とされがちな共産主義社会が、ブロックチェーン技術によって実現するかもしれない。

上海千紙鶴物聯網有限公司の創始者である姚建東氏は、中国でブロックチェーンが普及すれば社会そのものが大きく変わると予測。「米中貿易戦争の解決にも寄与するのではないか」と述べた。

上海千紙鶴物聯網有限公司は、ブロックチェーンを活用してIoT・クラウドコンピューティング事業を行っている。

今回、AIre VOICE編集長の大坂氏が姚建東氏と、姚建東氏の息子である姚之颖氏と対談。ブロックチェーンがもたらす中国の変革と、中国から世界へと派生する影響について伺った。

 

中国人の欲求を掻き立てたビットコイン

大坂:本日はお時間いただきありがとうございます。中国は日本より行政手続きが早く、ブロックチェーン業界が進んでいる印象があり、いろいろとアドバイスをいただきたく思っています。まず、姚さんの会社や仕事について教えてください。

姚建東:私はブロックチェーンの専門家ではありませんが、千紙鹤というIoTとクラウドコンピューティング専門の会社を運営しています。

IoTとクラウドコンピューティングを主要事業にした理由は、この2つが企業に大きな利益をもたらすだろうと考えたからです。

私の息子が社内でクラウドコンピューティングを、もうひとりの息子はインターネット周りの業務を、私は経営の実務を行い、家族3人の力で会社全体の業務をほぼ統轄しています。

 

大坂:親子が会社で協働しているわけですね。中国でブロックチェーン業界が拡大したきっかけは何だったのでしょうか。

姚建東:ビットコインのおかげでしょう。中国人は常に金儲けにアンテナを張っているので「今仮想通貨を買えば1000倍の価値になる」と言われた途端、たくさんの人々がビットコインを購入し、投資を行いました。爆発的な広がりを見せましたね。

究極のブロックチェーン技術は共産主義社会を実現し、貿易戦争の解決にも貢献する

大坂:日本でも、投資目的でビットコインに興味を持った人がたくさんいました。中国だとこうした傾向がより顕著だったのでしょうか。

姚建東:中国人はトレンドに流される傾向があり、ブロックチェーン技術について知らなくても世間のビットコインブームに乗って購入した人がたくさんいます。だからまだ新しいブロックチェーン業界に大量のヒトとカネが参入し、一気に盛り上がったわけです。

中国のブロックチェーン人気は、ブロックチェーン技術に対する評価によって生まれたものではなく、投資をしてお金儲けをしたいという動機から生まれたものです。

こうした国民性を考慮すると、ブロックチェーン運用の方法は国ごとに変えるべきかもしれません。

 

エッジコンピューティングがデータの脱中心化を進める

姚建東:ブロックチェーン=金融というイメージがありますが、新しい工業価値も生み出せると思います。

これから中国が取り組むべき「産業のインターネット化」においても、ブロックチェーンが活躍するでしょう。会社としても、ブロックチェーンの性質を利用してどんな価値が生み出せるのかを常に考えています。

 

大坂:やはりブロックチェーンは投資に使うもの、というイメージが強いのでしょうか。

姚建東:現在の中国では「ブロックチェーン=仮想通貨」であり、金儲けの手段だと認識されていますね。

私自身は、ブロックチェーンがクラウドコンピューティングやIoTに及ぼす影響について考えていまして。専門家や学者と議論や研究をしながらIoT事業を進めているのですが、ブロックチェーン技術はデータのストレージに関わっていくのではないかと思っています。

究極のブロックチェーン技術は共産主義社会を実現し、貿易戦争の解決にも貢献する

大坂:というと?

姚建東:クラウドコンピューティングはサーバー上にデータを一括記憶しているので、中心部がサイバー攻撃された場合、情報漏洩するリスクがあります。

データの安全性に潜在的なリスクがある状態ですから、将来的にはクラウドコンピューティングの中心化は推奨されなくなるでしょう。そこで分散型のブロックチェーン技術が活用されるわけです。

 

大坂:中国は産業大国ですから、データを保持する中央集権型のデータベースでお金を稼ぐビジネスがたくさんありますよね。分散型のブロックチェーン技術が使われるようになると、こうしたビジネスを行っている企業は打撃を受けそうです。

姚建東:ええ。中国の西北部、西南部、沿岸部でデータベースに対する投資運用がされていますが、脱中心化した場合はこれらの投資がなくなっていくでしょう。

 

大坂:クラウドコンピューティングの脱中心化は、どのように行うのですか?

姚建東:エッジコンピューティング(即座に要求される処理に対して、クラウド経由でなくデバイスに近い部分で処理を行う技術)によってクラウドコンピューティングの脱中央化が実現できると考えています。そのエッジコンピューティングを支えるのがブロックチェーン技術です。

 

大坂:クラウド経由する必要がないエッジコンピューティングであれば、脱中心化を目指せますね。処理やレスポンスのスピードが上がるのも魅力です。

 

ブロックチェーンは本当の共産主義社会を実現する

大坂:今後、ブロックチェーンは中国でどのように広まっていくと思われますか?

姚建東:脱中心化ではなく、弱中心化、あるいは多中心化の形で発展するんじゃないかと思います。

中心となる存在は持続するけれど、そのパワーが弱まったり、中心になる存在が増えたりするということです。

これによって、一般消費者と政府両方のイデオロギーが変化し、米中貿易戦争など対立関係になりがちな欧米諸国との関係も改善されるのではないでしょうか。脱中心化した世界なら、力で他国を制覇する必要がありませんからね。

 

大坂:国の考え方そのものが変わる可能性があると。

姚建東:個人的には、究極のブロックチェーン技術は共産主義社会を実現すると思います。共産主義の概念は、お互いに社会資源を共有でき、個人が必要に応じて社会資源を受け取ることです。

現在の技術だと共産主義は実現できませんから、ファンタジーのような机上の空論として捉えられていましたが、ブロックチェーン技術によって実現できるかもしれません。

姚建東:国によってブロックチェーンで実現できることは変わります。

日本のブロックチェーンビジネスの経営管理、特にプロセス管理は世界一だと思います。

2つの上場企業を持つ稲盛和夫氏のアメーバ経営は、脱中心化と目標管理制度を推進していますが、これはルールを守る日本人の性格あってこそ。中国人は革新的なので、プロセスを制限しなければ設定外の行動も行うため、この管理方法だとうまくいかないでしょう。

姚建東:隣国関係にある日中両国が協力すれば、日本人の優秀なプロセス管理と中国人の創造的な目標管理を組み合わせることで、かなり高度なブロックチェーン技術を生み出せるでしょう。

 

(後編へ続く)

 

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ライター/萩原かおり 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

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