「若手こそ今からブロックチェーン業界に飛び込むべき」と語るのは、深圳登月テクノロジー社 最高情報責任者の頼浩霖氏だ。
頼氏は、2017年の仮想通貨バブルで約300倍の利益を得てブロックチェーン業界に参入し、起業。金融のスペシャリストでもある頼氏は、伝統的な業界よりもブロックチェーン業界のほうが若手に適している、と述べる。
今回、AIre VOICE編集長の大坂氏が頼氏と対談し、金融業界におけるブロックチェーンのメリットとデメリット、ブロックチェーン業界で働く意味について語った。
約300倍の利益を生んだ仮想通貨バブルを経て起業
大坂:本日はありがとうございます。さっそくですが、頼浩霖さんのキャリアと現在の仕事について教えてください。
頼:金融業界で働いた後、2014年からブロックチェーン業界に入りました。それ以前から仮想通貨の取引をしていて、2017~2018年のバブル期には約300倍の収益になり、仮想通貨市場が短期間でピークに達したことを実感しましたね。
その後は複数の金融商品に分散化させて、高い運用収益を得ようとする代替投資であるヘッジファンド分野に入って起業し、ヘッジファンドやトークン投資銀行に関連する業務、一部の株式投資を行っています。
最近人気のSTO、戦略コンサルティング、融資業務などです。
大坂:なぜヘッジファンド分野に入ったのですか?
頼:より大きな時価総額を必要とするヘッジファンドは参入が多く、ほかの投資分野よりも当時は安全だったからです。
2017年にブロックチェーンのヘッジファンド事業を開始して、今の会社を設立しました。ヘッジファンドの主要メンバーには、清華・北大の数学学部の博士や修士がいます。
大坂:常に先を読み、最先端のビジネスにチャレンジしていますね。ブロックチェーン分野で競争する企業は国際市場に進出するケースがほとんどですが、これから業務分野や展開規模を広げるご予定はありますか?
頼:あります。中国最大のEコマース企業であるアリババは、確固たる地位を築いてから多くの業界に進出し、さらに成長しました。
ある程度の企業体力がついたら、複数の業界に進出することでより多くの資源やチャンスを作り出せると思います。
大坂:ビジネスや投資においても、早く着手すればより多くのリターンを得られる可能性が高くなりますね。ブロックチェーンにも、将来大きなリターンを創出するポテンシャルを感じます。
頼:ブロックチェーンはインターネットの産物ですから、発展スピードも速いでしょう。3~5年後にはブロックチェーンが社会に浸透しているのではないでしょうか。
ブロックチェーンで世界の金融業が一新される
頼:ブロックチェーン技術によって財産上の権利や義務を記録管理できるようになり、スマートコントラクト(契約の自動化)を実現したら、商品や資産が流通しやすくなり、もっと多くの人が資産運用するようになるでしょう。
企業融資や資産移動もスムーズになって世界中の投資活動が活発になり、金融分野に大きな変化が訪れると思います。
大坂:金融分野はほかの分野よりもブロックチェーン技術の活用が進んでいますから、近いうちに実現しそうですね。そもそもブロックチェーンはビットコインによって広まりましたし、金融の産物とも言えますから。
頼:支払い方法も日々進化していますね。日本の政策は中国よりもオープンで柔軟ですから、支払いに関する新技術を導入しやすいと思います。
中国ではスマホ向け無料通信アプリ「WeChat」や決済アプリ「アリペイ」が支払いにも活用されていますが、これからはデジタルアセット(デジタルデータとして保有されている資産)での支払いも実用化されるでしょう。
大坂:支払い含めたやり取り全般に言えることですが、ブロックチェーンだとリアルタイムでデータ更新できない点が課題です。ビットコインもタイムリーにデータ更新しているわけではありません。大体10分ごとに1回の更新なので、反映までにラグがあります。この問題についてはどう思われますか?
頼:現在の支払いではリアルタイムのデータ更新ができませんが、いずれは新しい技術が開発されて改善されるでしょう。
大手企業も支払い分野へ進出しつつあり、JPモルガン・チェースなどの一部の大手金融機関ではJPMという独自の貨幣も発行しています。こうした安定した通貨を取り扱うことがコストダウンにつながり、銀行間の譲渡もしやすくなるのではないでしょうか。
若者が活躍しやすいブロックチェーン業界
大坂:これからブロックチェーンをうまく活用していくには、どんなことに取り組むべきでしょうか。
頼:ブロックチェーンについて勉強して「平等な社会を実現できる」という本来の価値を理解し、技術を実用化できる段階まで発展させることです。
日常生活における多くの問題は、ブロックチェーンで解決する可能性があります。たとえば、ブロックチェーン業界は新しい業界で伸びしろがあるので、多くの雇用機会を創出するでしょう。未知の領域だからこそ、若者にも活躍するチャンスを与えます。
大坂:すでに成熟している既存の業界は権威者に独占されていることも多く、若者が活躍する余地がありませんね。90年代以降に生まれた人にとっては、挑戦しにくい風土があるかもしれません。
頼:ブロックチェーン業界は新しいうえに日進月歩で進化しているので、情報感度の高い若者が戦いやすい業界だと思います。
その一方で、常に学習努力が必要な業界でもあります。ひと月経てば情報がガラッと変わるほどスピードが速く、日々勉強しないと淘汰されてしまうでしょう。
大坂:どんなアプローチで学習なさっていますか。独学で情報収集しているのか、人と情報交換しているのか。
頼:同じブロックチェーン業界でも各社で接触する情報が違うため、なるべく人と情報交換しています。
懇親会やサロンで他社と交流すると、普通だったら手に入らない貴重な情報を教えてもらえるんです。よく北京や上海で国内外の企業と食事しながら情報交換し、ともに成長できるよう切磋琢磨しています。
ブロックチェーン業界はオープンなコミュニケーション文化があり、若い時からどんどんキャリアアップを目指せる場だと思いますよ。
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ライター/萩原かおり 編集/YOSCA 撮影/倉持涼