これからのデータ資産運用はどうなる?ブロックチェーン上に集まる高価値データの未来も要注目

2019.06.27 [木]

これからのデータ資産運用はどうなる?ブロックチェーン上に集まる高価値データの未来も要注目

仮想通貨での資金調達法は、さまざまなところで注目を浴びているが、中でも2019年初頭からはIEO(Initial Exchange Offering:イニシャル・エクスチェンジ・オファリング)が話題を集めている。

堅牢なセキュリティを誇り、世界各国で取引所の運営をしているHuobiでも、積極的にIEOを取り入れている様子だ。

今回、Huobiの嘉伟COOとAIre VOICEの編集長大坂氏が対談。後編では、これからのデータ資産調達法として注目されているIEOの継続性と、ブロックチェーン上に集まる貴重なデータの活用法について伺った。

 

IEO熱が高まっているが、一時的なもの

──日本でも、新たなデータ資産調達方法としてIEOが今年の1月以降、大変注目されています。IEOはこれまでのデータ資産調達方法のICO(Initial Coin Offering:イニシャル・コイン・オファリング)とは異なり、取引所が事業を掲げる先物取引のようなものですよね。
ICOの場合は、資産調達のためにまず、投資家に知ってもらうための広告などの資金が必要でしたが、IEOなら取引所に集まっている投資家に直にアピールできる。一方投資家側も、取引所が間に入る分、詐欺や資金調達後に逃げられてしまうのを防げるので安心です。

両者によい面がありますが、取引所としてはリスクもありますし、より慎重な審査も必要になると思います。こうした中で、御社では積極的にIEOを行っていますが、この熱はどのくらい続くと思われますか?

嘉伟COO: IEO対しては、今盛り上がっていますが、熱は下がっていくだろうと私は見ています。

なぜなら、大坂さんも触れておられますが、取引所がIEOを行うのにリスクを伴うからです。今IEOが注目されているのは、ユーザー(投資家)が安価で資産を購入したあと、上場した時に高い利益を得ることができているからでしょう。これが多くの人が熱を上げる理由だと思いますよ。

でも本来は、「この資産に本当に多くの金銭的価値があるか」を見なければなりません。

「その資産がどのくらいの価値を持つのか」は、最終的に上場をして、市場においてどのくらいの価値がつくかによります。

ですので、どこかの取引所が「その資産をどう判断したか」で価値が決まるものではないのです。また、取引所が価値を与えるのは、取引所にとって高いリスクが伴います。どれだけ市場に豊富な資産があるかも見なければなりませんしね。

ただ、今年の市場を見る限りでは、市場の資産はそう多くないと思うので、IEO熱は下がり続けるだろう、と考えています。

これからのデータ資産運用はどうなる?ブロックチェーン上に集まる高価値データの未来も要注目

──熱は下がり続けるだろうという見込みとのことですが、HuobiではIEOを積極的に行っていて、2019年3月26日には新しいプラットフォーム『Huobi Prime』を、さらに5月9日にはその派生版である『Prime Lite』を始動していますよね。なぜ、これから冷えていくと予想されているところに新しいことを始められたのでしょうか。

嘉伟COO: 私たちは、ユーザーにより低コストで多くの取引機会を提供できるようにプロジェクトを開発してきました。『Huobi Prime』がその結果のひとつなのですが、実は、公式的には『Huobi Prime』はIEOを行うプラットフォームではなく、単なる市場活動の一環として発表しています。

一般的に言うと、マーケティング活動またはセールス活動にあたるものという認識ですね。販売するトークンも事業者側が初めて発行するトークンではなく、外部投資家の手にあるもの。初めて発行するトークンを扱うIEOとは異なるものなのです。

その『Huobi Prime』よりも短い上場サイクルを実現した高速版が『Prime Lite』です。これからは『Prime Lite』がすでに上場している通貨、例えばビットコインやライトコインを取り扱うようになると思います。『Prime Lite』は短期決戦型で流れの早い場となるでしょう。

これからのデータ資産運用はどうなる?ブロックチェーン上に集まる高価値データの未来も要注目

ブロックチェーン上のデータは個人の信頼度を蓄積しているもの

──トークン、つまりデジタルな通貨は、私たちが使ってきた現在の貨幣と同じく、ある程度の金銭価値を持っているものです。ただそれは実物ではなく、デジタル化されたものに変わっただけだと思っています。
でもデジタル化した通貨をやり取りすると、その情報はデータとして残りますよね。そうして集まったデータは何かしらの価値を生み出すと考えているのですが、取引所にあるデータの価値については、どう扱われていますか?

嘉伟COO:私たちは取引所としては、それらのデータを利用して何かを生み出すようなことはしていません。

ただ、ブロックチェーン上にあるデータは非常に大きな価値を持っていると考えています。そのデータを使用して、資金の流れを分析することができるので、多くの人がそこに集まるデータを利用して価格変動のトレンドなどを分析したりしていますよ。それ以外には何もしていません。

 

──今の中国ではすでに、リアルな通貨を持たない・使わない社会に変貌しています。
例えば、交通機関を利用する時でも、買い物をする時でも、WeChat PayやAli Payなどで支払いを済ませている。ということは、取引所に集まるデータは主に金融分野、または金融商品の分野に集中しているということですよね。
では、この分野で生み出された消費者行動のデータについては、どう思われていますか?

嘉伟COO:消費者行動のデータには、非常に大きな価値があります。

基本的に、人々の消費行動はすべてデータに記録されるので、多くの分野で利用価値があるためです。例えば、ピンポイントで正確なプッシュサービスを提供することにも役立ちますし、リスクマネジメントや与信調査のサポートにもなります。

あなたがもしローンを組もうとした場合、与信調査の際に、これまでの消費行動を見られ、返済能力があるかどうかを判断されるのです。

これからのデータ資産運用はどうなる?ブロックチェーン上に集まる高価値データの未来も要注目

──こうしたデータは、すでに日常的な場面でも利用されているのでしょうか?

嘉伟COO:例えば、中国のAli Payにセサミクレジット(芝間信用)という指標があります。個人や法人の信用力を数値化するサービスで、「個人特性」「支払い能力」「返済履歴」などの総合点で評価されるものです。

セサミクレジットのスコアが高い人はより高い信用度を持ち、他国へ行く時のビザが免除されたり、中国国内でポータブル充電器のシェアや、カーシェアサービスを利用する際、デポジットを免除されたりというメリットを享受できます。

これらはすべてその人に信用度の蓄積があるからです。そのセサミクレジットは、まさに人々のAli Payでの消費行動に基づいて計算され、蓄積されているのです。

中国では、すでにブロックチェーン上に集まる消費者行動データを元に、与信の照会ができる状態になっていますよ。

 

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ライター/土屋菜々 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

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