最初のブロックチェーンはビットコインを実現するために登場しました。
その後、ビットコイン以上にブロックチェーンの可能性が注目されてきたことで、ブロックチェーン単独で語られることが増えました。
ところが、2019年現在でも、ブロックチェーンの活用分野で最大の物はトークンを発行することのままです。
そのため、ブロックチェーンが現在もトークンとセットで語られることが多いのです。
私自身、ブロックチェーンに興味を持ち、調べたり、イベントに出たりしているうちに、自然にトークンへの興味も深まってきました。
PCの初期に、スプレッドシート(表計算の代表ソフト エクセル)を使うためにPCを買い、PCを持っていてたら多くの人がスプレッドシートにも詳しかったこととも似ているところがあります。
ブロックチェーンをOSに例えれば、トークンはキラーアプリケーション(プラットフォームを普及させるほどの魅力をもったアプリの意味)になっています。
もともと、ビットコインを実現するためにできたのがブロックチェーンなのでそれがまだ続いています。
仮想通貨、暗号通貨、暗号資産の関係
日本でビットコインは仮想通貨という分類名で広く知られました。
英語圏では、暗号通貨(Crypto currency)が広く使われていましたが、
暗号資産(Crypto asset)の方が使われるようになりました。
実際、通貨としてより、資産としての意味合いで売買されることが多いので実態に合わせたのでしょう。
日本では、金融庁の2019年3月に法律でも暗号資産と呼ぶことにしましたが、まだ仮想通貨という呼ばれ方のほうが一般的です。
トークンと暗号資産の関係
ビットコインもイーサリアムもブロックチェーンで生成されたトークンです。
ただ通常、ビットコインについて話す際、ほとんどの人がビットコインと呼びます。
暗号資産で最も時価発行総額も大きく、ブロックチェーンの起源にもなったある意味、トークンよりも有名な名称だからでしょう。
イーサリアムも同様の位置付けだと思われます。
ビットコインやイーサリアムのように独自のブロックチェーンを持たず、他のブロックチェーンに間借りして作られたコインは慣用的にまとめてトークンと呼ばれることが多いです。
大事なことは今やトークンの適用範囲は広がっていることを理解しておくことです。
2019年においてはSTO(Security Token Offering)への関心が高まっています。これは証券(株式証券、不動産所有権の証券化)をトークンで表現して資金集めを行う方法で、トークンは証券として扱われています。
ゲームのポイントをトークンで表現することもあります。
トークンの適用範囲は拡がり続けているので、暗号資産より遥かに広い概念をカバーするようになってきています。
トークンがITで交換できるようになった
ここではトークンをお金のような価値を持ったものと考えてください。
厳密にはITインフラの信用自体だけは交換できないともいえるものでした。
銀行や、アマゾン、Yahoo等でITネットワークでお金のやり取りができているのは、その組織の信用と法定通貨の信頼性や、クレジットカードの信頼性があって、なされていることです。
怪しい、あるいはよくわからない会社にクレジットカードの番号とセキュリティー番号を渡したら危険でためらいますね。
またお金と同等の価値を持ったものがデジタルデータとしてネットワーク上に無防備に存在していたら、ハッカーの格好の攻撃対象になってしまうでしょう。
そもそも単純なデジタルのデータは、コンピュータで簡単にコピーできてしまいます。
ブロックチェーンが出来るまでは、これだけネットワークとコンピューターが発達しても、価値の移転は、それを管理する組織に依存せざるを得なかったのです。
ブロックチェーンでなぜそれが出来るようになったかは、保持し続ける期間が長くなるほど改ざんが困難になる特殊なデータベースができたと考えておいてください。
トークンとは?トークンの最古の歴史
人類最古のトークンは約6千年前シュメール文明(メソポタミア文明の初期、人類最古の文明)で作られました。
トークンこそが文明を作ったという側面があります。ブロックチェーンが人類史に大きな影響を与えると考える理由の一つです。
文明と農業は一体となっています。この地域は農地となる場所に粘土も豊富にありました。
その粘土の小さな塊に、取引や所有権を記録する模様を刻んで、焼き固めたものが最初のトークンでした。
これが、人類最古の文字である楔形文字の起源にもなっています。
音声ではなくて、取引を記録したトークンが文字の起源になっているのです!
また粘土を焼いて固めることで、刻んだ文字を後から変更することができなくなります。
これはブロックチェーンでは改ざん困難性に似ています。
このトークンから、取引の記録や、所有権の売買が出来るようになり、文明が発展していった可能性が大きいと考えられます。
そのくらい、この取引や所有権と記録、証明したものを流通売買できることのインパクトは大きかったと思われるのです。
トークンという言葉の多くの意味
トークンという言葉は代用貨幣と翻訳されていますが、それだけでは想像つかない様々な使われ方がされています。
例えば、
1.海外では鉄道に乗るためのプリペイドされたプラスチック硬貨の形状をしたもの
2.ワンタイムパスワードを発行する(セキュリティーを高めるため)携帯デバイス
3.英語の用例での中には、お金のない青年が、好きな女性に一輪の花を贈り、思いを伝えた場合、この一輪の花はトークンだと書いてあります。意志を伝えるツールをだからでしょう。
ブロックチェーンに関わる文脈の中で使われるトークンはまさに代用貨幣や代用証券のように使えるデジタルデータのことです。
ただ、世の中では、多くの人が様々な意味で理解しトークンという言葉を使っています。これを読んでくださった方は、どのトークンを指しているか、前後の文脈から理解して使って下さい。
ブロックチェーンはトークンの利便性を高め進化させる
トークンにもとから、新しい属性を付け加えることができるようになります。
今までの、代用貨幣や、証券より、より利便性の高い性質を与えることができるのです。
例えば、株証券ですが、現在は日本だと、大半がホフリ(証券保管振替機構)という機関に預けられ、売買してから、4日後に、お金が振り込まれるというシステムで運用されています。
配当は郵便為替等で書留で送られてきて、それを郵便局に持って行って現金化するというような面倒なことがまだ行われることが多いのです。
これが直接、自分の仮想通貨ウォレット上で売買によるデータが処理され、配当も自動的に振り込まれる。ということが行えるようになります。法整備がまだ十分ではありませんが、技術のスケーラビリティーさえ克服できれば広く普及することが可能なところまできています。
そもそもトークンを保有することがその証券を保有することと直接的に同等の意味を持つことができるようになります。今は、株も不動産もどこかの組織にデータが集められてその登録の移転をやっていますが、それをより便利に運用できるようになるはずです。
トークンの最古の歴史と、人類文明の誕生が重なっていることからも、ブロックチェーンによりネット上でトークンを生成・流通させられるようになることは人類文明に大きな変化を与えることになるのではないかと私は考えております。
これがブロックチェーンが大切になるであろうということを理解してもらうためにトークンの歴史を説明させてもらった理由です。
撮影/倉持涼