闇市場シルクロードとリバタリアニズムの思想

2019.06.19 [水]

闇市場シルクロードとリバタリアニズムの思想

2013年10月1日 13,356円 オンライン闇市場のシルクロード運営者が逮捕

アメリカで主に違法薬物の取引を行っていた闇サイトのシルクロードの運営者がFBIにより逮捕され、サイトが閉鎖されました。

違法薬物のEbayとまで呼ばれるサイトでした。

シルクロードという闇サイトは法定通貨でなくてビットコインを使って通販をしていました。

ビットコインが悪い目的で使われることがあるのは、ビットコインが暗号通貨だからという説明では足りません。

全てのビットコインのトランザクションはブロックチェーンのログに記録されるので、普通に使っていれば、使用者を割り出されることもあり得なくはありません。

ユーザーが自身のオンライン上の「財布」と身元の紐づけを避ければ、かなりの匿名性で取引を行うことができることを利用されました。

またそのECサイトも、深層Webという検索エンジンのクローラーにデータを収集されない方法で作られていました。(例えばパスワードで保護されたWebページでデータ収集されない、タグ表記で防ぐこともできる。例)朝日新聞が慰安婦問題の英語文謝罪記事を外国から検索されないタグ設定にしていた等)

さらに、Tor(The Onion Router)という、TCP/IPにおける接続経路の匿名化を実現するための規格も使うことで、IPアドレスも割り出せないように運営されていました。

この事件はFBIにより犯人が逮捕され、終身刑となりました。

ビットコインのイメージにも悪影響がありました。

犯人は、ロス・ウィリアム・ウルブリヒト(Ross William Ulbricht, 1984年3月27日)

当時の彼はまだ30前の若者でした。理工系のエリートといった学歴を持ち、知性も高かったのでしょう。

彼は、違法薬物だけでなくマルウェア、海賊版コンテンツ、盗まれたアカウントやクレジットカード情報、ハッキング技術なども販売していました。

これだけのことをしてしまう背景には、リバタリアニズム的な思考もあったようなのです。

またこの事件は『ディープ・ウェブ』というキアヌリーブスがナレーションをするドキュメンタリー映画にもなっています。

それだけ世間の注目度、ドラマ性の高い犯罪でした。

また犯人が固執していた政治哲学者ルートヴィヒ・フォン・ミーゼスはリベラリズムを主張した人で、彼の弟子のハイエクは貨幣的景気循環理論でも知られ、ノーベル経済学賞をもらっています。同時に哲学者としても有名です。

また犯人は『Alongside night』という映画化された小説の影響も受けています。

これらのことと、犯人が事業で失敗した経験から、彼は現在の政治や経済の体制に大きな不満を持ち、それ自体がひっくり返ることを望むようなリバタリアンであったことが推測されます。

 

ビットコインとリバタリアニズム

ビットコインは、国や中央銀行が発行する法定通貨ではなく、個人間でのお金のやり取りが自由に行えるものを作ろうとしていることから、リバタリアニズム(個人的な自由、経済的な自由の双方を重視する、自由主義上の政治思想・政治哲学の立場)を思想的に反映した技術にも見えます。

この思想自体は善悪と直接的な関係はありませんが、仮に悪意を持ち、犯罪を計画している個人まで後押しすることになれば、犯罪を増やしてしまうことになります。

合法であること、あるいは単に違法でないこととで、それが人類として正しいことをなせているとは、限らないというのが、人間社会です。

これに大きな不満をもって活動するとき、個人がもっと自由に活動、活躍できることを望むことは自然なことに思えます。

ただその中に、犯罪を計画する個人も入ってきたら、一律に自由を保障するわけにはいきません。

ビットコインは個人の経済活動の自由度を上げる

ただ、法律はそれぞれ平等に適用されることが建前になっています。

技術の力で一律に自由度があがり、法律の裏をくぐる方法が増えたら、このシルクロードの犯人のような人が増え、犯罪を助長してしまいます。

それに対応するために、法律や規制をさらに厳しくしていくと、個人はさらに自由度を制限され、体制に近い側の権力はさらに強くなる。

それをうまく利用してビジネスできる人との経済格差はさらに広がりかねない。

これらだけだと、全く解決方法がないようにすら思えてしまいます。

ただ、これに対してもブロックチェーンを活用して、改善手段は見いだせるはずです。

 

AirbnbやUberのレビューをもしブロックチェーンで記録出来たら

私は、Airbnbのホストをやっているのですが、ユーザーレビューというのは、自分の鏡のようなものです。

部屋が汚れていれば当然それはゲストさんにわかるのですが、それを超える人間的な暖かい交流があると、ありがたいことに良いレビューを残してもらえます。

Uberもおそらく同様でしょう。

今この2社はブロックチェーンでなく単に自社で管理しているデータベースにユーザーレビューを集積しているでしょうから、会社側で内容を消去、変更、することも可能なはずです。

でもそれが、ブロックチェーンで運営された場合、あたかも、自分の価値はユーザーレビューの集積だけに依存する存在として記録され、誰にも勝手に削除変更のできないものになってくるはずです。

そういう未来が来た場合は、犯罪を犯しそうな怪しい人には個人的な自由を制限するということができるようになるかもしれません。

それが、権力側の都合で出来てしまうと、いわゆるデストピアの世界になってしまうので、簡単ではないでしょうが、そういう進歩の可能性もブロックチェーンは夢を見させてくれます。

撮影/倉持涼

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