ビットコインの誕生 暴騰そして暴落の要因

2019.06.18 [火]

ビットコインの誕生 暴騰そして暴落の要因

ビットコインの価格ができるまで

2009年1月3日ジェネシスブロック(ビットコイン最初のブロック)の出来た時は価格どころかまだ送金もされていませんでした。

2009/01/12 終値 ¥0 最初のビットコイン取引が行われるSatoshi Nakamotoからソフトウェア開発者であるHal Finneyへ、ビットコインの送信が世界で初めて行われました。

2009/10/05 終値 ¥0.07 New Liberty Standardによりビットコインの価格提示

New Liberty Standardによりビットコインと法定通貨の交換レートが初めて提示されました。

この時の価格は1ドル1,309.03BTC、日本円で1BTC約0.07円です。これは、ビットコインの採掘に必要な電気料金から計算して提示された価格でした。

ジェネシスブロックから最初に価格が付くまでに10カ月かかりました。その期間、この開発、運用に関わっていた人達はその時点では価格がないビットコインのために労力を割いていました。

これが、その頃を知らない殆どの人には、想像でしか彼らの気持ちはわからないところなのですが、IT業界ではLINUXというオープンソフトの素晴らしいOSがあり、ボランティアで開発されてきていることを、私は思い出しました。

何らかの価値を認めたものを共同で作り出す作業に優秀な人達がボランティアで参加してくれる事例はこのように他にもあるのです。

2017年にはビットコインは200万円を超えるピーク価格を一度つけているので、この時の価格は最初の価格の実に6千万倍!!!ということになります。

2010/05/22 終値 ¥0.2 初めて商品(ピザ)とビットコインの交換

ピザ2枚(約25ドル)と10,000BTCの交換が行われ、これが商品購入における最初のビットコイン決済の例となりました。

実際は、店舗側がビットコイン決済を受け付けていたわけではなく、ピザの購入代金を第三者にビットコインで支払い、その第三者にピザを通常の決済方法で買ってもらったという流れでしたが、これが最初の商品とビットコインの交換とされています。

そしてこの時点で既にビットコインの価格は最初の価格から約3倍になっています。最初のブロックから10カ月0円で運用されていたことの方が凄いことかもしれませんが。

2011/06/12 終値 ¥1,489 最初のビットコインバブル

TIMEでも紹介され、多くの人がビットコインの存在を知ることとなり、価格は急上昇しています。

出来てからまだ18カ月、最初の価格形成から8カ月、その時の価格から2万倍の急上昇です。

ここまでの急上昇が起きる背景には、ビットコインが注目され、買いたいという需要に対して、供給できる量が極端に少ないという事業が大きく影響してたと思われます。

ビットコインはマイニング(採掘)で得られる新規ビットコインは一定で、4年ごとに得られる量は半減し、発行できる上限も2100万枚とシステム上決められています。

どれだけ注目されてもそれに応じて供給量を増やすような仕組みがないことが、バブルを生みやすい要因になっているのです。

2011/06/19 終値 ¥1,401 Mt.Goxがハッキング

価格がピークを付けた、わずか7日後に、当時最大の取引所であったMt.Goxで大事件が起きました。

Mt.Goxがハッキング被害を受け、ビットコインやユーザー情報・パスワードが盗難され約1週間取引が停止されました。この影響で、連鎖的に他の取引所からもビットコインの盗難が発生し、ビットコイン価格が著しく下落しました。

私はこの取引所を運営していた、Mark Karpelesと2018年の夏にキャンプに行く機会がありました。彼は保釈され裁判中でしたが、その後無罪判決がでました。

彼に直接会った印象は、マスコミ等から得ている印象とはあまりに違うものでした。物静かな、控えめで、決して怒りそうにない穏やかな人物でした。

カメラが大好きで、大きな望遠レンズを駆使して、キャンプ場から綺麗な月の写真を撮って喜んでいました。

取引所のことも、訊くのをためらっていると、自分からそれを感じ取ったかのように話してくれました。

運営がうまくいってなかった、Mt.GOXを買い取って、使いやすくなるように改良を加えて行ったら、ユーザーが信じられないペースで増加していったこと。

それに伴って、お金が信じられないほど増えていったこと。(当時の価格上昇と、取引所として保有していたであろうビットコインの量から想像すればそれはそうでしょう)

実はハッキングは、誰かが、掃除のおばさんを10万円で買収し、USBメモリーで重要なデータをコピーして持ち出させて行われてたこと。

それを彼は話してくれました。彼が社内のビットコインを私的に流用していたということが散々報道されていましたが、結局判決も無罪となり、彼は今どんな思いでしょう。

 

Mt.GOX事件への司法の不公平感とバブルの要因

何故彼はここまで糾弾されてしまったのでしょう?

1つには、いきなり大金を得たことに対する、懲らしめるような感情が取り締まる側になかったとは言えないと思います。結果、無罪になっているのですから。

当時、全く仮想通貨に関わっていなかった私も、ニュースでこの事件をみて、怪しいことをしている人たちがいるなとしか思えませんでした。

被害者のインタービューを見ても、損害を悔しそうに語る姿が、妙なものにお金をいれたからしょうがないのでは?程度の理解しかできていなかったのです。

また、法定通貨に対して、ビットコインがいきなり存在感を増してきたら、既存権力側が脅威を感じて取り締まりたくなったとしても不思議ではありません。

この事件は、それに口実を与えてしまった面も否定できないのではないでしょうか。

ライブドア事件をみても、当時それ以上に法律を逸脱する行為をしていた、オリンパスや日興証券の経営陣が逮捕されてないことからも、新しく急成長した会社に対して、権力側は法律を平等には適用していないことがわかります。

また別の観点から見ると、現代はお金自体が、欲望の一番の対象という歪みが大きくなっているようにも見えます。お金を使って何かを買うのが、お金の本来の目的であったハズが、使いたくなくても、お金をより多く保有することが目的化してしまっている。

だからビットコインのように、供給量が厳しく制限されているデジタルデータは一気に値上がりして、それに参加することで儲けたい人によりバブルが形成されやすいということなのでしょう。

 

Mt.GOX事件前後の価格と考察

2011年4月4日 ビットコイン価格 63円
2011年6月6日 ビットコイン価格 1489円
2011年6月19日 ビットコイン価格 1,401円Mt.Goxハッキング事件
2011年11月14日 ビットコイン価格 169円Mt.Gox事件後の底値

こうやって見ると、そもそも、Mt.Gox事件までの上昇がわずか2カ月で200倍以上になる、あまりに急なものであったこと。

Mt.Gox事件で暴落はしたものの、事件前の価格より2倍以上の値段で下げ止まったことがわかります。

これはその後のビットコインの値動きでも繰り返されてきています。

ビットコインが注目を浴びマスコミでも紹介され急上昇、事件が起き、暴落、

でもよく見ると、注目以前よりも数倍高い価格で下げ止まっている。

ただし、注目を浴びてからの価格からしか見てない多くの人は、暴落する危険性ばかりが、記憶に残ってしまう。

それを繰り返してきています。

 

2012年11月28日 ビットコイン価格 1,013円 最初の半減期(50BTC→25BTC)

採掘報酬の半減が初めて実施されました。これにより報酬は50BTCから25BTCへ半減しました。

これは210000ブロック新規に生成されたら採掘量を半減させるという制度設計になっています。

10分ごとに新規にブロックが生成されるますから。以下のようにこれは4年間隔で半減させることになります。

 

この制度設計は神業的に巧みです。4年ごとに半減していくので、かりに永遠に採掘を継続したとしても上限が2100万枚を超えません。

説明のため以下に、計算を出してあります。ここまで計算すれば、2100万枚に限りなく近接してそれを超えないことがわかりますね。

Satoshi Nakamotoはビットコインがここまで歴史を作ることを真剣に考えてこれを作ったのですね。

尚、半減期を繰り返すと、なぜ定数をビットコインの場合は2100万枚を超えられないかを直感的に理解するには、全体の半分の量のマイニング、残りの半分のさらに半分のマイニング、と繰り返していくので、折り紙で半分を繰り返しているようなもので決して、端っこを超えないと考えるとわかりやすいかと思います。

 

2013年3月16日 4,597日 キプロス危機によりビットコイン価格が上昇

キプロスの金融危機により、キプロス国内の銀行が閉鎖されるなど法定通貨(ユーロ)への信用が低下し、ビットコインの人気が高まりました。

これにより、一時1BTC266ドルとなり、過去最高の価格となりました。

Mt.Gox事件後の底値から15カ月ですぐにここまで回復しています。

キプロスはEUに加盟しているのですが、ロシアの富裕層の資金が集まっていたため、この国に対して、ユーロとキプロスの間で急に金融支援の条件に課税強化が一方的に決定されたことに対する、預金者(主にロシアと思われる)からの反発が激しくなりました。

このような場合、お金の逃げ道としてビットコインしか選択肢がなく、それが暴騰の要因になったと推測できます。

法定通貨の信頼性への懐疑への解決方法としてのビットコインの役割がここで認識されてSatoshi Nakamotoもどこかで満足してくれていたかもしれません。

撮影/倉持涼

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