ビットコインと暗号の歴史はコンピュータの歴史と重なる

2019.06.14 [金]

ビットコインと暗号の歴史はコンピュータの歴史と重なる

ビットコインと暗号

ビットコインを成り立たせるための中核技術に暗号理論があります。

普通の生活をしていると暗号はそんなに意識しないのではないでしょうか?

ところが、意識してなくてもコンピューターの発展と暗号理論は密接な関係が当初からあるのです。

そして暗号理論が丁度、ビットコインを成り立たせるほどに進歩したところで、その成果を上手に集めて再構成して活用して誕生したのがビットコインなのです。

『ブロックチェーンとはPC革命との歴史的背景』の中でコンピューター誕生に大きく貢献した人として以下の3人を上げました。

アラン・チューリング(人口知能の父、その道を開いた)
クロード・シャノン(全ての情報は2進数で表現できることを数学的に証明、情報理論考案者)
ジョン・フォン・ノイマン(プログラム内蔵コンピューター、現在まで続くコンピュータの原型を考案)
アラン・チューリングは第二次世界大戦当時、絶対解読不可能と言われていた、ドイツのエニグマという暗号機械の解読を試みます。

歯車機械のような、コンピューターの原型のようなものを活用するという独創的な方法を使ってです。

その過程で、彼は、自分の作った暗号解読機械があたかも人間より賢い知性を持ったように(現に人間にできないことをやっている)感じたことから、知性をもったコンピューターという着想を持つに至ったのではないかと言われています。

また、中学時代の親友が病死して以来、無神論者で唯物論者になった彼は逆に、その友人の魂を蘇らせるためであるかのように機械に人格を持たせることに情熱を持つようになったともいわれています。

彼の暗号解読の成果により、第二次世界大戦の終結が早まったといわれるほどです。そしてそれが同時にコンピューター誕生の礎になりました。

クロード・シャノンの発表した論文は全てその後世界を変える程ものを作った人で、この情報理論の始祖はコンピューター時代の暗号化理論でも決定的に重要な役目を果たしました。

以下に要点をあげます。

「攻撃者が無限の計算能力をもっているという仮定の下で、平文に関する情報量がどの程度攻撃者に漏れるかを研究し(情報理論的安全性)、この意味で安全な暗号方式はワンタイムパッドを用いる暗号方式だけであることを示した。」(wikipedia暗号理論より)

上記のことについて、ある種の証明に近いことを、コンピューターが誕生しかけた頃に行っています。

またここで指摘されている、攻撃者が無限の計算能力を持っている場合という仮定の置き方は、ビットコインとブロックチェーンはそれに現実的な解を与えたに等しい、あるいは非常に近いともいえるのではないでしょうか?

 

公開鍵暗号 1976年

この方式により暗号の利便性は革命的に上がりました。

この方式以前は、共通鍵という、暗号化と復号化(暗号化された情報を元の文書に戻すこと)両機能をもった暗号化のための鍵しかありませんでした。

実際の鍵と違い、暗号化のカギはデジタルなものとしてネットで配布できます。ところがこの方式だと、その鍵を、ハッカーにネット上からとられる危険性あるため、送りたい相手にだけ、秘密裏に、他の誰にも知られず送る必要がありました。

これではネット上で普及するのが非常に難しいであろうことは、合鍵造り放題のデジタルの鍵をネットを通じて届けるという行為自体が危険性が高いであろうことからも想像してもらえるかと思います。

公開鍵は実際の鍵で一番例えやすいのは南京錠です。この南京錠の本体にあたるのが公開鍵、この南京錠を開けるための鍵が秘密鍵という位置づけです。

ですから、この方式により、暗号化する部分の鍵だけを、安心して、ネット上に配布することができるようになりました。

後はそれを受け取った人が、配布している人が自分が送りたい人かを、デジタル署名で確認して、その鍵を作って暗号化したデータを送ります。

受け取った側は、自分しか持っていない、秘密鍵で復号化すればよいので、気密性が漏れる心配があるとすれば、秘密鍵を盗まれることだけです。

厳密にはこの方式が提案されてから、実現と普及までに時間がかかった一因は、秘密鍵が公開鍵から決して生成されるものであってはいけないというということに対応するためでした。

因みに、ビットコインを保有するとは、そのビットコインの秘密鍵を保有することと同義です。その秘密鍵でしか、ビットコインの所有権の移動ができないからです。

DigiCash(1989-1998)David Chaum

David Chaumさんは最近ブロックチェーンイベントにも登壇されています。

公開鍵と暗号鍵を利用して決済を行える、まるでビットコインを先取りするようなシステムでした。

ただ、1994年からブラウザーが普及し始めてきたので、その5年前からこのビジネスを始めたことは、時代に先行し過ぎていたことも、ビジネスとした厳しくなる一因でした。

Davidはブラインド署名というアイデアも作り実装もしました。これは現代でいうと匿名仮想通貨のような機能も持っていたようです。

既存の権力側からすると必ずしも歓迎されないアイデアではなかった可能性が高いように思えます。それもビジネスとしての成功を阻害した可能性があるようにもみえます。

Hash Cash(1997)

SPAM mailの攻撃を減らすために、メールを送信するときに一定のハッシュを作成する作業をもって、送信者を証明するアイデア。

それにより、大量にメールを発信しようとした場合は、負荷がかかりすぎて実質送信が時間がかかりすぎて無意味になるという発想。

原罪、Bitcoinのマイニングにもこのアルゴリズムが使われている。また作業証明というアイデアでした。

B-money(1998)

Wei Daiによって「匿名の分散型電子現金システム」として作成された初期の提案です。Bitcoinを作成するときにSatoshi Nakamotoがb-moneyを参照しました。(wikipediaより)

bit gold(1998)

Nik Szaboが分散デジタル通貨のためのメカニズムを設計しました。Bit goldは決して実装されていませんでしたが、「Bitcoinアーキテクチャの直接の先駆け」と呼ばれてきました。(wikipediaより)

Bitcoin(2008.10.31)論文

Satoshi Nakamoto(実在の人物か不明のまま)リーマンショックで金融機関の危機が叫ばれていた時期に狙いすましたかのように発表された。

Bitcoin genesis block(2009.01.03)

最初のブロックがこの日に作られ、それから10分に一個の新しいブロックが作られることが、継続されている。一番実績のあるブロックチェーンとなっている。(2019年4月25日現在)

歴史には必然性のようなものが後から感じられうことが多いですが、ビットコインも、必要な技術がそろってきたことも、そのタイミングでリーマンショックでの金融危機がおこり既存金融機関が実は脆弱なものだとわかった時期に誕生したことも、すべてビットコイン誕生の必然性となっているようにみえてくるのです。

撮影/倉持涼

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