約3億円を動かすブロックチェーンゲーム。新技術はゲームの遊び方を変える

2019.06.17 [月]

約3億円を動かすブロックチェーンゲーム。新技術はゲームの遊び方を変える

仮想通貨「イーサリアム」で“仮想ペット”となる子猫を買うブロックチェーンゲーム「CryptoKitties」が世界的なヒットとなり、約3億円以上を動かした。

大手ブロックチェーンゲームを開発するTonArtsの創設者である宋阳氏は、ブロックチェーンゲームの可能性に魅せられて多くのブロックチェーンゲームを生み出している。

今回、AIre VOICE編集長の大坂氏が宋阳氏と対談した。前編では、ブロックチェーンゲームがヒットした理由や、新技術がゲーム業界および一般消費者の生活に与えるインパクトについて伺った。

 

世界的ヒットになったブロックチェーンゲーム

大坂:本日はお忙しいところありがとうございます。さっそくですが、宋さんの職歴と仕事内容について伺えますか。

宋:ずっとゲーム業界で働いています。最初は携帯ゲーム、そして複数のゲームプロジェクトに参加し、ゲーム市場で人気になったプロジェクトも担当しました。

ブロックチェーン業界のチャンスに気づいたのは「CryptoKitties」というブロックチェーンゲームが大流行したときです。

 

大坂:ユーザが世界に1匹しか存在しないさまざまな種類の猫を所有できるゲームですね。
一匹2000円から数万円で売られている猫を仮想通貨「イーサリアム」で購入し、交配して、コレクションを楽しんだり、子猫を別のユーザに売ったりできる仕組みをブロックチェーンで実現した点が画期的でした。このゲームの猫は“仮想ペット”と言えますね。

宋:イーサリアムのブロックチェーンの上でNFTの所有権や取引履歴を記録することで“世界にたった一匹しかいない猫”という設定を実現できたんです。

ネットワークが混雑するほど人気で「ブロックチェーンとゲームを結びつけたら、ゲーム市場で大きな反響を呼ぶかもしれない。

インターネットビジネスよりもっと大きなチャンスを掴めそうだ」と感じ、当時担当していた携帯ゲームプロジェクトをやめてブロックチェーンゲームの仕事を始めました。

約3億円を動かすブロックチェーンゲーム。新技術はゲームの遊び方を変える

大坂:具体的には、「CryptoKittes」のどこに可能性を感じたのですか。

宋:トークンやNFT技術、ゲーム性を融合させてインターネット資産になった点です。

ゲーム制作で一番重要なのは、シリーズ制作を想定した経済体制を作ること。ブロックチェーンは非改ざん性があるうえに、発行数も限られているため、市場でゆるやかに価値を持つようになります。

 

大坂:「CryptoKittes」のゲーム機能には、スマート契約という仕組みがあると聞きました。スマート契約とは何でしょうか?

宋:スマートコントラクト(smart contract)のことです。スマートコントラクトはとてもおもしろいシステムで、一行のコードを書いてブロックチェーンネットワークにアップロードすると実行されます。

これまでのゲーム制作では経験したことがない新しいシステムで、他人はデータを改ざんできません。

従来の非改ざん性はトークンの非改ざん性を指していますが、仮想通貨「イーサリアム」の誕生によって、業務ロジックの非改ざん性を実現できるようになりました。

ブロックチェーンゲーム「CryptoKittes」は非改ざん性を持つブロックチェーン技術を導入していることから、インターネット資産としての価値を持つようになった初のゲームです。

 

技術革新が起きるとゲームの遊び方が一気に変わる

大坂:携帯ゲームの仕事を辞めた後、どんなブロックチェーンゲームを制作なさったのですか?

宋:最初はイーサリアムの仕組みに基づいて「楽块」というブロックゲームを作りました。

ブロックチェーンの非改ざん性を利用して、レゴ積み木のようなブロックゲームに仕上げたのです。ピーク時はDAU(1日のアクティブユーザ数)が約3万に到達したこともあります。

 

大坂:なかなかの反響ですね。

宋:ただ当時は自分たちのメインチェーンがなく、このゲームはサイドチェーンに基づいて運営していました。

携帯ゲーム出身のチームですから、みんなで模索しながらゲーム項目を推進し、去年の9月にようやく新しいゲームを開発しました。EOSに基づいた策略系の対決ゲームです。

 

大坂:そちらの反響はいかがでしたか?

宋:9月にリリースされた後、11月までの2か月間で大きな広がりを見せました。

DAU(1日のアクティブユーザ数)は700人ほどで、ゲームランキングの上位に入っています。

中国以外の英語圏を含めたら、DAUは3000人以上になると思います。「楽块」や「暗号王座」などほかにも新しいゲームプロジェクト計画も進めていますよ。

他のチームは基礎となる技術面に重点を置いているんですが、我々は内容に重点を置いていて、そこが差別化ポイントになっています。

 

大坂:分野は変わっても、ずっとゲームの仕事に携わっていますね。ブロックチェーンを利用しているのは宋さんのチームだけですか。

宋:みんなゲームとブロックチェーンを結びつけていますが、重視するポイントが違います。

多くのブロックチェーンゲームは、すでに出来上がっているゲームをどうやってチェーンに移すかを模索しています。

たとえばトークンをどう使うのか、ブロックチェーン技術をいかにシンプルに利用できるのかといったことです。

僕たちはもともとゲーム出身ですから、優秀なブロックチェーンサービスの提供を第一に目指しています。

 

大坂:新技術はゲーム業界にどのような変化をもたらしますか?

宋:新技術によりゲーム業界のターニングポイントとなる技術革新が起きますね。

技術革新が起きると、新しい遊び方が生まれて人々の生活にまで影響を与えます。任天堂やソニーがテレビゲームを普及させましたが、やがてインターネットゲームが普及しました。チームを組んでチャットしながら一緒にプレイできるインターネットゲームは、ゲームの新しいトレンドを生み出したのです。

そして、モバイルインターネットが出現してからは持ち運べる気軽なゲームが主流になりました。昔だったら想像もできない遊び方が次々に生まれています。

 

大坂:技術革新は新しいチャンスを生み出しますね。

宋:新しい技術の特徴を的確に掴み、ゲームに活用して、大手ゲーム会社に急成長した会社もあります。

ゲーム業界の発展に合わせて、密に関わっているブロックチェーンのゲームを作り出し、ゲーム史上に残るチームにしたいです。

 

(後編へ続く)

 

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ライター/萩原かおり 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

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