ブロックチェーンは最高のわき役。新技術を一般消費者の生活に浸透させるには

2019.06.05 [水]

ブロックチェーンは最高のわき役。新技術を一般消費者の生活に浸透させるには

「ブロックチェーンは最高のわき役です」。

アナログな業界で豊富な経験を積んだのち、若いブロックチェーン業界に飛び込んだ生粋の技術者であるAryan Hung氏は、現在のブロックチェーンについてこう述べる。

Aryan Hung氏がCEOを務める台湾のioeX社は、ブロックチェーンを活用してサーバーを通さず個人デバイス間でデータをやり取りできる技術を開発し、IoT系のプロダクトに注力している企業だ。

今回、AIre VOICE編集長の大坂氏がAryan Hung氏と対談し、ブロックチェーンを活用した新しいビジネスの立ち上げ方や、これからブロックチェーンをどう活用するべきか伺った。

 

アナログなガラケー業界から転身。サーバー不要のデバイス間通信を実現

大坂:本日はお時間いただきありがとうございます。ioeXは完全なる技術会社として地位を確立していますね。具体的にはどんな技術を提供しているのですか?

Aryan Hung:ブロックチェーンを用いて、サーバーを通さずに個人デバイス間でデータをやり取りできる技術を提供しています。

空間とネットワーク上のデータ量を分散したりつなげたりして、中央集権型ではないネットワーク構造を作っていて。

ioeXにより、個人のプライバシーを確保しながら「誰がどれくらいの空間とインターネット量を保有しているか」を把握し、世界中のスマートデバイス同士をつなげられるようになります。

ブロックチェーンは最高のわき役。新技術を一般消費者の生活に浸透させるには

大坂:高い技術力が求められますが、ioeXにはどんなメンバーが在籍しているのでしょうか。

Aryan Hung:他社製品を受託製造するODM(Original Design Manufacturing)を担当していたメンバーや、上海でプロダクトディレクターとして一緒に働いていたメンバー、あとは創業時に参加した新しいメンバーが中心になって立ち上げました。

ODMの経験を持つメンバーはハードウェアとソフトウェア両方の知見を持っていますし、携帯電話事業を手掛ける大手ブランド「ノキア」に在籍していたメンバーも高い能力も発揮しています。

現在の社員数は30名ほどですが、今年中に40人以上にする予定です。

 

大坂:Aryan Hungさんは、なぜioeXを立ち上げたのですか。

Aryan Hung:上海のガラケーを作る会社で働いた時に「ODMよりモバイルインターネットシステムを開発したほうが、できる仕事の幅が広がっておもしろそうだ」と気づいたからです。

上海に来る前も、中国・四川のソフトウェア企業で働いてからオペレーションシステムを開発している会社へ転職するなど、さまざまな仕事を経験しました。

ただODMの仕事が軸だったので、ゼロから自社システムを作った経験はありませんでした。

上海で初めてシステムを完全に自社開発し、どう活用するかまで設計した時、ODMの仕事とは違った魅力を感じ、モバイルインターネットシステムの構築に興味を持ったんです。

ブロックチェーンは最高のわき役。新技術を一般消費者の生活に浸透させるには

大坂:ガラケーを作ったりソフトウェアを開発したりと、豊富な経験を積んでからブロックチェーンの会社を立ち上げたのですね。ioeXの立ち上げはどのように行いましたか?

Aryan Hung:ECとコミュニティを担当するシステムとIoTを担当するシステムがあり、台湾や四川にいるスタッフがそれぞれ分担しながら創業しました。

四川がECとコミュニティを、台湾がIoTを担当し、他からサポートを受けながら開発を進めていったのですが、当時は台湾のIoT市場があまり活発ではありませんでした。

当然、創業したばかりの会社のサービスを取り入れようと考える企業は少なくて、これは困ったなと思ったのですが、以前働いていた会社から何とか仕事を請け負うことができました。

 

大坂:それは幸運でしたね。

Aryan Hung:かつて台湾のガラケーを作っていた会社で、ぜひプロダクトを作ってほしいと言われまして。でも、私たちが作りたいのはプラットフォームですから、現在はそちらにフォーカスしています。

 

大坂:どうやってビジネスを軌道に乗せたのでしょうか?

Aryan Hung:いったん投資で回そうとしたのですが、誰かに投資されるよりも自分たちでベースとなるビジネスを作ったほうが強い会社になるだろうと考え、2017年後期からECシステムを作りました。

目標はIoTのコミュニケーションネットワークを作ることでしたが、いきなり作っても利益を生み出しにくく、経営が立ち行かなくなってしまうのでECシステムから着手したわけです。

ブロックチェーンは最高のわき役。新技術を一般消費者の生活に浸透させるには

大坂:ECシステムの反響はいかがでしたか。

Aryan Hung:スマホや薄型テレビの生産を受託している台湾の大企業・鴻海でももともとECシステムを作っていましたから、ノウハウはありました。

ぽつぽつと受注するようになり、会社の経営も軌道に乗りましたね。何とか黒字になったタイミングで、ioeXの開発をスタートしました。

 

ブロックチェーン技術は最高のわき役

大坂:日本でもブロックチェーン業界はまだ新しく、発展途上にあります。これからブロックチェーン業界で働く魅力について教えてください。

Aryan Hung:実は、私もかつてはブロックチェーンの価値を認めていませんでした。

さまざまな知識を学んだ今は、ブロックチェーンには未来があると信じています。ネットワーク上で情報をやり取りする際は、人同士やモノ同士の認証を行って安全性を保つことが重要です。

スマートブロックチェーンを導入することで、ネットワークに安全性をもたらすことができるでしょう。

 

大坂:インターネットが進化しそうですね。

Aryan Hung:はい。ブロックチェーン技術は最高のわき役だと思っています。

まだ発展途上で主役にはなれないけど、最高のわき役として活躍するポテンシャルがある。

メインシステム自体にはブロックチェーン技術を使っていませんが、リワードやウォレットはブロックチェーンなしでは実現できません。

 

大坂:ピンポイントで活用するのには向いているけど、主役になるのはまだ早いと。

Aryan Hung:技術開発がもっと進むまでは、ブロックチェーンを主役にしないほうが良いですね。

ただ、プロジェクトでは投資家の目を引くために「ブロックチェーンがメインです」と誇張して訴求しているケースも見受けられ、こうした現状には課題を感じます。

実際は今のブロックチェーン技術だと分散型のストレージにおける処理スピードが遅く、実装が難しいケースもある。

すべてのネット銀行がブロックチェーンを使ったとしたら、取引に10分前後かかってしまうでしょう。認証や確認にだけ活用するのが適しています。

ブロックチェーンは最高のわき役。新技術を一般消費者の生活に浸透させるには

大坂:確かに、ブロックチェーンが適している部分にだけ導入するべきであって、とにかく導入すればいいという話ではないですよね。

Aryan Hung:目指すべき目標は、ブロックチェーンが人々の生活の中に自然と入り込み、みんなが無意識に使っている環境を作ること。

私たちもioeXのIoTシステムによってデバイス同士をつなげていますが、ブロックチェーン技術のことは強調していません。

ユーザーはブロックチェーン技術を使っていることを知らないまま、サービスを利用します。これが私たちの目指している姿なんです。

 

(後編へ続く)

 

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ライター/萩原かおり 編集/YOSCA 撮影/倉持涼

 

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