台湾の大手仮想通貨取引所「COBINHOOD(コビンフッド)」は、世界で初めて“取引手数料0”を実現し、世界30位内の取引量を誇るまでに成長した。
COBINHOOD子会社の「DEXON(デクソン)」も世界最速のパブリックチェーン、独自コインを開発・運営し、マーケティングやブランディングを組織的に展開して大きな成功をおさめている。
AIre VOICE編集長の大坂氏が、COBINHOOD社CEO & DEXON社 社執行理事のJill Shih氏、COBINHOOD社 & DEXONCTO社のCo-founder & CTO、Wei Ning Huang氏と対談し、成功するマーケティング戦略やブランディング方法について伺った。
世界最速のパブリックチェーンで収益化に成功
大坂:本日はお時間をいただきありがとうございます。まず、おふたりの仕事内容について教えてください。
Jill Shih:仮想通貨取引所COBINHOODのCEOと、その子会社で高速チェーンを開発するグループDEXON Foundationで執行理事を務めています。
それまでは北京や台北、日本などで18年ほどソフトウェアの開発経験を積みました。
サイバーセキュリティ企業のトレンドマイクロでヒューマンインターフェース技術部門マネージャーとして働いたこともあります。
Wei Ning Huang:私はCOBINHOODとDEXON Foundationの共同創設者で、CTOです。
以前はGoogleでシニアデベロッパーを担当し、専門分野はオープンソースの開発でした。
10年以上経験を積んでから「自分の会社を作りたい」と考えてGoogleを離れ、COBINHOODを設立しました。
大坂:DEXONはCOBINHOODの子会社なんですね。設立の背景は何でしょうか。
Jill Shih:DEXONは、COBINHOODの収益化のために別軸で作った会社です。
台湾で初めて自主開発した底層パブリックチェーン技術で、1秒あたりの処理件数(TPS)は1万2000回以上と現時点で世界最速のパブリックチェーンになりました。
イーサリアムの約100~200倍のパフォーマンスを発揮するというデータも出ています。各業種の基礎インフラを担うポテンシャルがあり、これからブロックチェーンを普及させる存在になるでしょう。
大坂:非中央集権型の社会づくりに役立ちますね。なぜブロックチェーン事業を始めたのですか?
Wei Ning Huang:私は新しい技術を試すのが好きで「ブロックチェーン技術は色々な産業に応用できる」と感じたので事業を立ち上げました。
そう思ったきっかけは、ビットコインのイーサリアムです。ブロックチェーン上に契約内容を記録し、期日になると自動で契約内容を実行できる仕組みに感銘を受けました。
Jill Shih:去年、北京から台湾に戻ってCOBINHOODに出会い、国際的な視野を持った優秀な台湾人が集まって働く様子を見て「一緒に世界を変えたい」と思って入社しました。
ブロックチェーンは人類の社会に変化をもたらす技術ですよね。かつてのインターネット革命のような変化が起きるのではないでしょうか。
UX強化が有効なマーケティング戦略に
大坂:仮想通貨取引所「COBINHOOD」を設立した経緯は何ですか?
Wei Ning Huang:もともとトレーダーなので、高い手数料に不条理を感じていました。
株式や債券だったらほぼ手数料はないのに、リターンの約20%が手数料として取られてしまうのは、ちょっとおかしいのではないかと。
そこで「取引手数料0の取引所が作れるんじゃないか」と思って開発したのがCOBINHOODです。
大坂:手数料無料というのはこれまでの常識を覆しますね。DEXONはなぜ開発したのですか?
Wei Ning Huang:ブロックチェーン自体は分散化されているのに、中央集権化した取引がされているのがおかしいと思ったんです。
取引所も分散化できるのではないかと思って高速チェーンのDEXONを開発しました。
大坂:COBINHOODからDEXONが生まれたことを知らない人もたくさんいます。あまりオープンにしていないのでしょうか?
Wei Ning Huang:だれでも参加できるプラットフォームとしてDEXONを打ち出したかったので、あえてCOBINHOODの名前は出しませんでした。
COBINHOODとDEXONで切り分けてブランディングしたんです。DEXONはUXを重視していて、一般ユーザーが使いにくいブロックチェーンを使いやすい形で提供し「知らないうちにブロックチェーン技術を使っている」状態に持っていくことを目指しています。
これもマーケティングの一環で、投資としてのブロックチェーンではなく、日常生活で活用できるブロックチェーンを開発したいです。
Jill Shih:ブロックチェーンなら、頭打ちになっているインターネットを次のレベルに進化させられるのではないかと思います。
インターネット革命から20年ほど経ち、インターネットは成熟するにしたがって新しいメリットがどんどん減ってきています。
信用を高められる仕組みを持つブロックチェーンで、新しい展開を迎えたいですね。
大坂:信用というと、取引所はセキュリティ面でシビアな問題を抱えていますよね。
Wei Ning Huang:取引所の開発期間はたった3か月でしたから、オープン直後はバグが起きて取引ができなくなり、寝ないで修正したこともあります。
ブロックチェーンはまだまだ初期段階。1~2年前のブロックチェーンバブル後も生き残っている健全な会社が努力すれば現在の問題も解決でき、ブロックチェーン業界は大きく発展するはずです。
多様なブロックチェーン業界で2020年代も活躍できる人材に
大坂:ブロックチェーン業界は男性が多い印象ですが、COBINHOODは女性も多いのですか?
Jill Shih:多様性を重視しているので、男女比はなるべく均等になるようにして、男女それぞれの視点で多角的にビジネスを捉えられるように意識しています。
性別に限らず経歴もさまざまですね。開発や研究など幅広い分野の人材を採用し、設立1年で100名規模になりました。
コミュニティ経営に詳しいマーケターや暗号学の専門家、各国の法律の違いに対応できる法律アドバイザーなど、一般的なベンチャー企業より豊富な人材を揃えています。
大坂:組織力が高いですね。ブロックチェーンの仕事をすると、ビジネスパーソンとしてどんな成長が期待できるでしょうか?
Jill Shih:ブロックチェーンは新しい産業なので、たくさんの知識を吸収しなければいけません。
特に海外の新しいトレンドを知ることが大切です。好奇心を持ってフレキシブルに動けるようになるでしょう。
Wei Ning Huang:ブロックチェーンの本質を知ると「なぜブロックチェーンが発明され、どう活かされるのか」がわかり、未来の社会でお金がどう動くのかが予想できるようになります。
これからは政府がコントロールするお金が減り、社会が平等になっていくでしょう。そんな未来をうまく乗り切るスキルが習得できると思います。
大坂:2020年代も活躍するビジネスパーソンになれそうです。今回は、貴重なお話をありがとうございました。
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ライター/萩原かおり 編集/YOSCA 撮影/倉持涼